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第三話:このクラスは非凡しかないんですか・・・??






「じゅぅんちゃん♪」


はわわわ・・・やばいっ桜井、目がイってます!!生暖かい息が首筋にモロに当たって無性にくすぐったい―――じゃなくって!!!


「だ、誰か助けてください―――ッ!!!」

「純ちゃん、うるさいでぇ・・・あ、わかった。俺の愛が大きすぎて受け止められへんのや「違いますッッ!!」えーそこ即答するかー??」


耳元で怒鳴ってやったけど桜井には効かないみたいで・・・。相変わらず“純ちゃーん”と囁きながら唇を寄せてくる。


ってか、本当になんで誰も助けてくれないんですか!?


「あ!!!コラ馬鹿桜井、止めなさい!!」

「じゅッんぐぅあッ」


服のボタンが全部外されて中のインナーがめくられかけた瞬間、どこからか帰ってきた芽の強烈な瞬間ヘッドロックが昌吾を標的にした。ヘッドロックをモロに喰らって彼が崩れ去る前に彼女はそのまま・・・


「ッぐぅっはぁ」

「ロ・・・ローリングバックブロー!!?」


謎の悲鳴(奇声)を上げた彼が地面に伏せた瞬間・・・僕は芽の後ろに鬼を見た気がした。




パチパチパチパチ――――


今まで薄情にずっと見ていた周りから拍手が湧き上がった。いつも通り過ぎる展開に思いため息を付きながら、“ったく・・・貴方達は・・・”と零した。


「いやぁぁ・・・・・君たちは本当に面白いねぇぇ」


足を組んで座りながら此方に微笑みをむける彼。その後ろで無表情で彼に引っ付く女の子がコクンと頷いた。


「見てたんなら助けてくださいよ・・・ジャックハート


全開にされたシャツのボタンを締めながら半ば呆れたように呟くと、芽も僕に便乗して同じように言葉を放った。


「本っ当に・・・頭いいくせにこういうことには頭回らないのかしら」

「何を言ってるんだよ、君達は。助けたらこんなに面白いショーを拝めなくなるじゃないかぁぁ」


芽の嫌味にも彼はワンテンポ遅れて“君に言われるなんて光栄なことだねぇぇ”と笑い飛ばした。



―――――彼は竹中 俊(たけなか しゅん)

このVIPクラスのジャックシートに在籍する超頭脳派格闘男子。

一度だけ彼の喧嘩を見たことがあるけど、最小限の動きで手刀を打ち放ち、相手は刹那に地に臥せったのだった。そのときの感動をそのまま彼に言うと“止めてくれ、照れるだろぉぉ”と言って嬉しそうに頬を朱に染めていた。


でも本当のことだと僕は思う。

彼の成績は学年6位で、なおかつ芽よりも格闘に優れている。語尾を延ばすクセがあり、少しおっとりしている。普段は優しくて、転入したての僕に誰よりも早く声をかけて安心させてくれた人だ。

そして何故か、肉体的な戦闘を好み、桜井のようにキレると鋭利な刃物を持ち出す奴は嫌いらしい。俊曰く“戦いは力と知力のみでぶつかり合うものなのだぁぁ。刃物など持ち出すものではない”・・・らしいのです。

・・・なんていうか、本当に桜井とは逆の人なんです。ってか、そもそも戦闘とかについて美学持ってること自体が変なんですけどね。





「まぁ・・・純と桜井のラブシーンはいつ見てても楽しいねぇ♪」

「ラブシーンって言わないで下さいッ」

「ハハハ!!気にするなよぉぉ」

「本当に貴方は酷いですね!!」


言ってしまってから“しまった”と後悔した。口を押さえて俊の後ろを見たが既にそこには誰もいなかった。

彼女は何処だ、と刹那の間目線で探していると背後に生暖かいオーラを感じた。瞬時にしゃがむと頭上で以上に細い白い腕が空回っているのが見えた。


「・・・・純・・・・・・・俊の悪口・・・・・・・ダメ」

「えっと・・・あの・・・ご、ゴメンナサイ!!えーアレは・・・ちょっと、売り言葉に買い言葉って言うか・・・なんていうか・・・。あの、本気で思ってるわけじゃないんですよ??なんか・・・あの・・・と、とにかくゴメンね??」


いつの間にか後ろに回りこんでいた少女に平謝り・・・いえ、土下座する。怒涛の勢いで謝りまくる訳は彼女の豊富な胸にある。


ぷぅぅっと頬を膨らませて“もう・・・・・・・言っちゃ・・・・・ダメ”と呟いて彼女は元の位置に戻った。思わずほおっと安堵の息を吐き出してしまった。




彼女・・・・・・・木凪 橘(きなぎ たちばな)は同じクラスのハートシート。

ドイツ人とのハーフらしく、キャラメルブロンドのゆるゆるパーマの髪と薄い色素の瞳、白くてきめ細かい肌。さらに細くて小さな身体には見合わない大きい胸。人形のような姿の彼女には最強の武器が有った。


人に抱きつくと自然に彼女の豊富な胸が相手に当たる。その胸の感触を感じながら彼女の美しい声を聞いてしまうと老若男女問わず卒倒してしまうという物だ。

嘘だと思うが、僕自信も一度それを体験してしまっている。それから失言をするたびにこうして謝りまくっているのだ。




「危ない所だったわね・・・純」


先に橘の攻撃を回避していた芽がそっと呟いた言葉に同調する僕。


「え、ええ・・・。彼女には逆らえないです」

「俺には反抗するくせに・・・か??」


低くて甘い声に即座に振り返ると、脅威の回復能力で復活した昌吾が優雅に紅茶を飲んでいた。




神様・・・。このクラスには非凡しか存在しないのですね。


あんまり信じていない神に言葉を送ってずるずるとソファに腰掛けた。




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