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危機

~これまでのあらすじ~

属聖青年芦花シュウは名家ティソトールの当代当主レギサにその功績を称えられ、その支援を受けられることとなった。


『でももちろんタダで支援受けさせてもらえるなどと思うてないよな?』

『え?そうなんですか』

『かような上手い話などこの世に存在せん!』

『騙されたわね……』

『という訳で!貴公らにはとある任務を行ってもらう。属聖でなければ難しい任務をな』

『はぁ。内容は?』

『簡潔に言うのなら……《吸血鬼退治》である!』

『……は?』


という訳でシュウ一行は《サウザンドオルドの森》へ向かっていた。

《パインフィールドの町》から《パインフィールドの草原》を抜け、《パームヒルの丘》を越えた先に《サウザンドオルドの森》は存在する。

今は草原と丘の間。視界良好、だが面白味のある物は観測できない。

強いて言えば山。あれは《レイヴン山》というらしい。それが見えるのみ。

「そろそろ疲れてきましたな」

「そうね、そろそろ休憩してもいいかしらね」

「ん、休憩かい?」

立ち止まったシュウとユアを振り返る三体のエレメンター。

「皆さんは疲れないんですか」

「そうですね~腐ってもエレメンターですので~」

「ははぁ、すごいですな」

見た目こそ可憐な少女な彼女たちであるが、こういった細かいところで人間とエレメンターとの差異を感じさせる。


近くにあった岩に腰掛け、休息を取る。

「ふう」

乾いた喉を水が潤す。

「美味しいですか~わたくしのお水は~」

「え、これウォルさんが出した水なんですか?」

「そうですよ~水のエレメンターですからね~」

「おお……そうなんですな……それって、どこから、出しているんですか……?」

シュウの脳内でいわれのない良からぬ不純な妄想が広がる。おバベルの塔のダムが結界寸前。

「普通に虚空からですよ~?」

「ああ……そうですか……」

おバベルの塔チン圧成功。


「それにしても、吸血鬼ですか……」

「存在するんですかね~?吸血鬼~?」

「さあ。でも実際に被害者が出てるらしいしいるんじゃないか?」

シュウが前傾姿勢から戻っている間、三人のエレメンターは話に花を咲かせる。

「…………」

シュウはそれを黙って見つめる。

(それにしても……みんなかわいいいですな!)

無意識に鼻の下が伸びる。

(こんなかわいい娘たちと囲まれて旅できるとはしあわせですわ~)

油断した隙に再びおバベルの塔がスタートアップ。

どこまでも(何とは言わんが)欲に忠実な男である。



ふと、ソイリが何かに感づいた様子。

「……ん」

「どうかしましたかな?」

マジメ雰囲気におバベルの塔がタイムアウト。

「西!」

反射的に西方を向く。みんなもそっちを向く。

「あれは……」

「ラケツ……!」

下級魔物ラケツだ。確かにパインフィールドの草原には野生の魔物が生息している。

――だが。

「……え?」

「魔物の量が多すぎるぞ……!?」

そう。異様なのはその量。

以前の城に出現したときとは、比べ物にならない。

比喩ではなく、地を埋め尽くしている。

「どどど、どうします!?」

「どうって、戦うしかないでしょ!?」

「無理です!無理に決まってるでしょ!?」

「でも!やらなきゃでしょ!」

「ぼく一人じゃ無理ですぅ!」

「一人じゃない、だろ?」

シュウを追い越しソイリが立つ。その手には鎚が握られていた。

「ソイリさん……それは?」

「決まってるだろ。私も戦うんだよ」

「単体で戦えるんですか?」

「ったりめえよ!私たち四人で戦えばなんとかなるなるナ●ガク●ガ!(モ●ハン(?))」

ウォルとクロンも前に出る。やはりその手にはそれぞれの武器が握られている。

「さあ~共に戦いましょう~」

「嗚呼……はじめての共同作業、ですよ……!」

「おお、すごい」

「ね。これなら大丈夫でしょ?」

「そうですな!よ~し、がんばりますぞ!」

腕輪に白石をはめる。もう慣れた手つきだ。

「変身!」

そう言うとテヰルの鎧がシュウに装着される。戦闘態勢バッチリだ。

「行きますぞ!」


「……『変身』って?」

「いやぁ、それっぽいかなって」

「それだとなんか……なんか分からないけどなんか良くない」

「ええー」

「『変態』にしない?」

「それのほうが嫌ですよ!?」

「ええーじゃあどうしましょう?」

二人が訳の分からない話し合いをしていると、遠くの方から声が聞こえる。

「おーい!何してんだ!?早く来てくれー!」

ソイリの助けを求める声だ。

「あっ、はーい!今行きます!」

白い戦士テヰルはラケツの群れに向かって駆けだした。



「やっぱり多い!やっぱり多い!」

素手で何体かを斃したが、やはり多勢に無勢。

エレメンターの力もない今、シュウ一人では限度があるか。

「ぬぅん!?」

横からの打撃。ラケツの突進だ。

「痛い!」

泣き言を言っている暇はなく、取り囲まれる。

「うわあああああ!」


「シュウさま!?」

いち早く気づいたのはクロン。

「離れなさい……下賤なる者!」

怒りの矢がシュウすぐ側に命中。

するとそれを中心に突風が巻き起こり、シュウを取り囲んでいたラケツたちが吹き飛ばされる。

肝心のシュウは?無事だ。まさに台風の目、突風の中心は無風。

「た、助かりましたわぁ!」

「シュウさまがご無事でなによりですわ……きゃ!?」

不意討ちだ。隙を見せたクロンの背後を狙い、ラケツが奇襲を仕掛けた。

「離し……なさい……!」

「クロン!大丈夫か!?」

駆け付けるソイリ。鎚を暴力的に振り回し、クロンを助けに向かう。

が、次から次へと現れるラケツに阻まれたどり着けない。

「くっそ……!」

焦りが見える。焦りは隙を生む。そして敵はその隙を狙い雪崩れ込む。

「ううわっ!」

ラケツの群れに埋もれていく姿がシュウの目に映る。

「みなさん!」

珍しく焦った素振りのウォル。だが彼女も周囲のラケツを処理しきれていない。

「ああっ!」

シュウはどうすることもできない。やはり彼も自身の身を守るので精いっぱいだ。

「このままではまずいですな……!」

明らかにピンチ。大ピンチ。しかしシュウにはどうすることもできない。

「き、きつい!」

ここで全滅か。半ばあきらめ、目を閉じた。

そのとき。

「……んん?」

まぶた越しでも感じる強い赤い光。

「こ、これは?」

目を開けてみる。光を放っていたのは赤の属性石。

「お、お?」

困惑していると声が聞こえる。

〈…………オマエに力を貸すのは嫌だが、ここで全滅するのはもっと嫌だッ!〉

(おお、典型的なツンですな)

〈聞いてんのか!!!〉

「ああ、はい!」

〈手を出せ、テヰル!〉

「はい」

赤い属性石はひとりでに腕輪に収まる。

〈オイ!言っとくがアタシは相当なじゃじゃ馬だッ!振り落とされるなよッ!〉

「はっはい!」

属性石から赤色の煙が噴き出る。

煙がテヰルの鎧に定着し、その色を赤に染める。

シュウの眼前には半透明の赤色のファイが浮かび上がる。

その姿は段々と姿を変え、剣になった。シュウの両手に収まる。

〈行くぞッ!〉

「はい!」

力が漲る。全身を炎に包まれているかのような力だ。

「ハイッ!」

回転切りで周囲のラケツを一掃。小さな擦り傷で澄んだラケツも傷痕に火が灯り炙り焼き地獄にする。

「上手に焼けましたな!(モン●ン(?)(二回目))」

〈あいつら助けるぞッ!地に刺せッ!〉

「わかりました!ハイ!」

言われるがままに剣を地面に突き立てる。

〈ハァ!〉

剣から強い炎が放たれる。地を這う炎は三体のエレメンターを囲むラケツ『だけ』を器用に燃やし尽くす。

「おお、すごいですな!」

〈ウルセェ!オマエに褒められると吐き気がするッ!〉

(ツンの癖が強い……)

とまあ、凸凹な両者であったが、その力はどの属性よりも強大。もっとも相性の良い組み合わせかも知れない。

〈ウオオオオオッ!〉

「ふぁい!やー!」

炎のテヰルはあっという間に大量のラケツを蹴散らした。

「あ、嗚呼……」

「す、すげえ」

「すごいです~」

〈フンッ。アタシが本気出せばこんなもんだッ〉

「ははは……」

シュウ、静かに苦笑い。


と、気を緩めかけたその瞬間、背後から声が聞こえる。

「へぇへぇへぇ、あの量を全滅させちまうかぁ」

「やはり俺が見込んだ通りだな」

「…………よい」

バッと振り返る。シュウが目にしたのは、同じデザインをしたローブを着た三人組。

一人は赤黒。一人は黄灰。そしてもう一人は青白。

「あ、あなたたちは?」

「芦花ァ!」

「な、なぜぼくの名前を……?」

「お前を!いじめる!」

「……え?」

「おい!最初にいじめるのは俺だって、さっきじゃんけんで決めただろ!」

今にも飛び出していきそうな勢いの赤黒を制する黄灰。

「……しょうがねえな」

赤黒と青白は一歩下がる。

「え、えっと?」

いまだ混乱状態のシュウ一行。

黄灰の男はローブを派手に脱ぎ捨てる。

「よう!久しぶりだな」

その素顔にシュウは見覚えがある。

「あ……ソエトさん!?」

「せいかーい!」

「何してるんです!?」

「言っただろ?お前をいじめる!」

「……分からない……」

彼の言っていることがシュウには理解できない。分かることは、敵であることくらい。

「まあお前の知能じゃ分からないだろうな!でも容赦はしない」

ソエトは光る属性石を取り出す。

「あれは……!?」

驚愕の声を漏らすユア。エレメンターたちも合同の表情。

「スタートアワミッション……」

「オッケ~♪」

ソエトが属性石を左の腕輪にはめ込むと同時に、少女の陽気な声が聞こえる。ソエトの使役するエレメンターだろうか。

融光(ゆうこう)!」

そう叫ぶと、ソエトの周囲に金色の鎧が浮かび上がり、装着される。テヰルの物とは異なったデザインだ。

「あ……」

その輝きにシュウは思わず声を失った。

「《属聖(エレメンターマスター)メッヒ》、ここに光輪(降臨)

ソエト改め属聖メッヒは、悠々堂々と敵を見下ろした。

その鎧は邪悪な輝きをたたえていた。


【続く】

ちょっとパロネタ攻めすぎたかも……?w

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