邪悪
漆黒に覆われた天蓋、邪悪な瘴気の漂う夜の教会。
窓から差し込む月明りだけが彼らの陰を浮かび上がらせる。
此処に居るのは三人。それぞれ赤黒、黄灰、青白のローブを纏っている。
「……!」
黄灰の男が何かを感じ取る。
「どうした?」
「これは……力……強大な……光湛えし……勇者……」
「……」
赤黒の男は舌打ちし、黄灰の男の足を蹴る。
「いった!」
「要領が悪い。お前にはそういう所がある。纏まってから話せ」
「わ、わるい」
黄灰の男は咳払いし、改めて話し始めた。
「新たな属聖が生まれたようだ。それも、とてつもなく強大な力を持った」
「名前は?」
「《芦花シュウ》、あるいは《属聖テヰル》」
「どれくらい強い?」
「……炎水風土、全てのエレメンターを使役できるようだ」
「……へぇ。思ってたよりはすげーじゃん」
ニヤリと笑う赤黒。
「どうする?」
「決まってんじゃん。いじめに行くぞ」
「やっぱりな」
「急がば急げだ、行くぞ」
「今から?」
「そう」
「無理があるでしょ。お前もそう思うよな?」
黄灰は青白の男にそう言いかける。
「……月が哭いている」
「だめだこりゃ」
「行かないの?」
「待って」
「待たないぞ」
赤黒の男はそう言うや否や飛び出してしまう。
「ああもう!どこにいるかも知らないくせに!」
黄灰の男はそれを追い飛び出したが、一旦戻って青白にこう言った。
「パインフィールドだ!そこに奴はいる、後から来いよ!」
そしてすぐにいなくなった。
青白の男は月を見ていた。
【本編へ続く】
ほんとうなら前回の終わりに挟む予定の話でしたが、うっかり忘れてしまいました!
なので短めです。