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×5 祝祭の表裏  作者: 有栖川優悟
7/8

*参拾漆

瀬田せた

駿河するがー、何か仕掛けるって言ってたけどさ、何を仕掛けるの?」

「…内緒!」

 振り返って答えたのが、我らが生徒会長・駿河東香(とうか)である。

「A組に抜かれちゃうよ?」

 彼女はA組の学級委員のひとり、岸波きしなみおうぎを心のどこかで恐れているようだ。

「あー…でも大丈夫でしょ?準備はちゃんとしてるし、岸波なんて、そんな…あいつ無能力者ブランカーでしょ?怖くないしっ」

 岸波の名を出した駿河の声は震えている。それは岸波の真の恐ろしさを知っているからだと私は推測する。事実、私もそれを感じ始めている。


 ――真の恐ろしさとは、自分の理解が及ばないことだ。


 人というものは、自分が理解できない存在や事象に恐怖を示す。それを利用した良い例がお化け屋敷やホラー映画だ。それと同じような理屈で、能力を持たない者――つまり、能力を持つ私達からしたら理解できない者――に対する潜在的な恐怖を誤魔化そうと、私達異形はそのような者に『無能力者』というレッテルを貼るのだろう。

 何かの能力を持っていないからこそ、対処の仕方がわからない。それだけなら良いのだが、岸波の場合は成績や運動神経もトップクラスだし、大体のことはそつなくこなせるから、何をやろうとしても、あるいはそれが成功してもおかしくない。能力を持たないことを除けば、彼女は間違いなく完璧超人と呼べるだろう。もし能力を持っていたら、それこそ鬼に金棒だ。

 この世界で一番恐ろしいのは人間だというのは、ある意味本当かもしれない。


「けど、警戒するのは必要かもね。“ベルセルク”って知ってる?」

「“ベルセルク”…?聞いたことはあるけど」

「能力で暴動を起こした異形を秘密裏に始末してるって噂の殺人鬼なんだけど、その正体を私の友達が探っててね?」

「その正体、って…」

「うん…それ、岸波かもしれない」

 これはあくまでも私の推測だ。しかし、関係者という事は間違いないだろう。

 どこか雰囲気が似ているんだ。時折岸波から感じることがある、あの突き刺すような冷たさが――

「岸波は誰かに復讐するために編入してきたって言っているのを、どこかで聞いた。もし岸波が復讐のために来たというのが本当で、そのターゲットが私達なら――どうなるかわからない」

「その復讐の方法が何なのかにもよるけどね…能力関連なら安心なんだけどね。彼女、無能力者だし」

「そうだね、じゃあ行こう!」


 しかし、岸波の目的を私はまだ完全には知らなかった。

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