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×5 祝祭の表裏  作者: 有栖川優悟
6/8

*参拾陸

しのぶ

 やたらと加速する心臓を抑えようにも、どうにもできない。そうだ、今日は文化祭だ。


 体育祭は無事私達A組が中等部三年の優勝をかっさらい、いよいよ文化祭を控えるのみとなっていた。

「お忙しのところ、我が銀庭ぎんてい学園にご来校いただいて誠にありがとう御座います。これより二一〇六年度銀庭学園文化祭を開会致します」

 生徒会長の駿河するがさんが、開会の言葉を述べる。



 ***



 どの教室もがやがやと賑わっているが、A組の教室は志歩しほちゃんが呼び込みをしているからか特に集客数が多い。

 髪を二つ結びにして仕込みにかかる扇ちゃんからは、どことなく“ベルセルク”の面影を感じ取ってしまう。結び目が赤い紐リボンであることも一因だろうか。

おうぎちゃんやっぱり綺麗だよね…」

「忍も同じの着てるでしょ?」

 それはそうなのだが。

 ツートンカラーのブラウスに、それぞれの好きな色のミニスカート、白い手袋、それぞれで色が違うニーハイソックス。今日は私も扇ちゃんみたいな赤いリボンを結んでいる。


「いらっしゃいいらっしゃい!神もいれば鬼もいる、世にも珍しいファンタジー喫茶ですよー!」

 志歩ちゃんの宣伝する声が聞こえる。

「あれ、八人ミサキのしーちゃんじゃない?」

「この間失踪したとか言ってたけど…」

「大丈夫でーす!友達が助けてくれましたー!」

「誰だか知らないけどその友達凄いな!」

「でしょ?私も驚いたんですよねー!」

 その人影はどうやら花子はなこさんのようだ。それに続いて九十九堂つくもどうの店員達も続々とやってくる。

「つうかさ、ファンタジー喫茶って九十九堂と丸被りじゃね?」

「まあそうですけど、色々な異形がいるじゃないですか。それを見せつける絶好の機会だと思いまして!」

「貴方もいい性格しているのね…」


「はい!ココアソーダクエン酸一丁!」

 現地では謎の飲み物・ココアソーダクエン酸がなぜか人気だった。ココアをソーダで割ったものにクエン酸粉末を溶かす、という方法で作られるそれは絶対売れないだろうと思っていたが。

「なんでこれ凄い売れてるんだろうね?」

「興味を惹かれて挑戦したがる人が多いからじゃない?」

「あー…ありそう…」

 文化祭はもう一日ある。この勢いが続けば良いのだが――

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