*参拾伍
▼扇
御崎も取り戻し、いよいよ学園祭――体育祭と文化祭まで一週間を残すのみとなった。ここ銀庭学園の文化祭は一般の客も入るとのことだが、果たしてファンタジー喫茶の集客はどれ程のものだろうか。
「はいはい!私宣伝用イラスト描いてきたー!」
衛宮が持ってきたポスターには『神もいれば鬼もいる、世にも珍しいファンタジー喫茶!幽霊も出るよ☆』と書かれていた。事実しか書かれていないというところがまた恐ろしい。
「神って…え、私のこと…?」
「この『鬼』は私なのかどうか疑問に思う」
「幽霊は八人ミサキかな?」
「穂香も氷雨も陽菜も全部せーかい!」
ちなみに私は無能力者ということで裏方に回っている。出すものはホットサンド、カレー、ミネストローネなどなど。飲み物はカフェオレ、紅茶、オレンジジュース…ココアソーダクエン酸とかいう謎の飲み物があったがこれはスルーしよう。九十九堂に交渉したところ、材料などで協力すると言ってくれたので助かった。
***
カンテラが風に揺れ、教室がぼろぼろの館を思わせる形になってきた。
「うわぁ、なにこれ本格的!」
そう驚く陽菜には「君達が用意してるやつでしょ?」とツッコミを入れたくなるのだが。
「お揃いの服とかある?」
「うん、あるよ!私と陽菜ちゃんと、岸波さんと時坂さんと間宮さん!はい、岸波さんはこれ!」
渡されたのは白と青紫のブラウスに、青紫のミニスカート、白い手袋、黒いニーハイソックス、青紫のリボン。
「岸波さんってツインテールにしても似合いそうじゃない?」
「…え?」
「赤い二つセットのリボンもあるからさー?」
ちょっと待て。私が“ベルセルク”だと露見してしまうではないか。まあ文化祭だし、コスプレということにしておけば問題ないか――
「あっそう…よし、着るよ!」
…きっとこの文化祭は荒れるな。




