*参拾肆
▼ダチュラ
と、いうわけでウチらは早速芸能事務所『奈浪プロダクション』に殴り込みに行くことになった。
「こんばんは、八人ミサキのプロデューサーをしています、仁坂瞳です。宜しくお願い致します」
割と普通の人間のようだった。彼女が死霊術師…戦闘力はどれ程のものだろうか。
「はい。この度は貴方の風評を聞いてこちらに来ました。――この先に御崎志歩さんがいるって本当ですか?」
扇が勢い良く啖呵を切れば、ピリ、と空気が変わる。
「いますけど…何か関係でも?」
「関係ならあります。彼女は私の――大事なクラスメートです。だから彼女を返してください」
「いいでしょう。…彼女達を通しなさい」
なるほど、向こうに扇の仲間がいるのか。
廊下
「って、ここ屍人ばっかか…!」
目の前には社員であろう、屍人がずらりと並んでいた。
「ここは二人の“ベルセルク”が先に行くんだな、こいつらはウチら三人が処理しとく!」
「“ルシファー”、それフラグ。…行くよ、後輩!」
後輩。
“ベルセルク”では被るし、かといって本名で呼ぶ訳にもいかないからこうなったのだろう。
「はい!」
「じゃあ二人はこっちなー?」
確か、赤みがかった茶髪の妖狐の少女が“エクスカリバー”で、金髪の雪女の少女が“エンジェル”だっけか。
「いつも“ベルセルク”が先陣切ってる感じ?」
「そうですねー…」
「なるほどな。まあ今日はウチが先陣切るから、サポートしてくれな?」
再び屍人共の方を向き、指をさして言い放った。
「おい、そこの屍人共!あん時ゃ大事な義母さんを殺しやがって…」
まだ縛られていることが愚かと言うなら、勝手に言え。先程まで掛けていたサングラスを空中に投げて、唱える言葉はただ一つ。
「お前ら全員叩っ斬る…“エストック”!」
***
スラスト状の契器・“エストック”を振りかざせば屍人から血が流れてくる。
「…やっぱ不味いな、これじゃあウチ結局飲めないじゃんかよ…!」
…そこは屍人故か、腐ってはいたが。
それでもウチは気にも留めず“エストック”を振るい続ける。もう決してあの日のような過ちは侵さないと念じながら。闇を以って闇を制せ、それでいて決して闇に呑まれるな。
それでこそ裏社会の掃除屋たる、アヴァロンなのだから――
追って来る屍人を一通り倒し終えた上で、扇のところに向かう。
6F 本部
「は…扇!倒し終えた、のか?」
確認した先には、かつて仁坂瞳であった死体が血塗れで横たわっていた。
「ご覧の通りです。――任務完了」
「無事に任務完了、だな!」
久し振りに戻ってみても良いかもしれない、という考えがウチの頭を過ぎった。




