表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
×5 祝祭の表裏  作者: 有栖川優悟
2/8

*参拾弐

おびただしい人々が芸術家に憧れるのは、私の考えでは、好きなことができるということのほかに、まさに社会を軽蔑しながらその社会から尊敬されるという生き方を選べるからなんだ。社会に対する特権的な復讐が許されているということだね。

――中島義道『働くことがイヤな人のための本』

おうぎ

「八人ミサキを知っているか?」

 八人ミサキ。今大人気のジュニアアイドルグループ、らしい。

「確かアイドルグループでしたよね?私のクラスにそこのメンバーがいますけど、それが何か…?」

「違う、そうじゃない。八人ミサキとは、高知こうち県を初めとする四国地方や中国地方に伝わる集団死霊(しりょう)だ。災害や事故、特に海で溺死した人間が多い。その名の通り基本的には八人組で、主に海や川などの水辺に現れる。異形ランクはA」

 顔が引きる。

「…え、死んだのに学校に通って、アイドルとしての活動もしているんですか…?」

「そういうことになるな」

「でもあのグループって、確かメンバー卒業しても、入れ替わるように他の子が入ってきてますよね?」

 口を挟んできたのはしきみ。

「そうだな。“ある条件”で八人ミサキに出くわした人間は、高熱に見舞われて死ぬ。一人を取り殺すと八人ミサキの内の一人が成仏し、替わって取り殺された者が八人ミサキの内の一人となる。そのために八人ミサキの人数は常に八人組で、増減することはない」

「え、ちょっとそれファン死にませんか?」

 菊里くくりがある意味当たり前のことを訊く。

「大丈夫だ。“プライベートで行動している時”の“あいつら全員”に、“同時に”遭わなければ安心と思っていいだろう。本気になれば人を死なせることもできるようだが、それはプライベートを覗くような不届き者を相手にした時とかだ」

「じゃあどうすれば…あの子、客引きするって言ってて…」

「文化祭か。人気のあるアイドルだから、人はたくさん集まるだろうな。――とにかく当たり障りのないように心掛けろ。普通にクラスメートの一人として接するのであれば問題ないからな」



 ***



「『八人ミサキ』…と」

 ピンク色のスマートフォンで動画検索サイトを起動して、検索をかける。

「…あった」

 赤い見出しの下に、白い背景に色々な動画が浮かび上がってきた。

「これ聞こうかな…」

 書かれていたのは『八人ミサキ ライブ 朝葉原ともはばら路上』。そこへのリンクをクリックする。


『はーい!私達、ずっとファンの皆さんと添い遂げるアイドル!八人ミサキでーす!』

 出てきた八人の少女の中に、私のクラスメートもいた。

『ここでメンバーの一人、しぃちゃんからお知らせです!どうぞ!』

『しぃちゃんこと御崎みさき志步しほです!えっと、皆さんは朝葉原の銀庭ぎんてい学園、知ってますかー?』

 すぐに大衆から黄色い歓声が上がる。普通は自分が通っている学園などを公表するものだろうか?いや、万が一ストーカーされてもその場で殺せるから言えるのか。

『私その文化祭にいますので、ファンの皆さんは九月二十五日の予定は開けとくこと!いいかなー?』

『おっけー!』

 やはり現役アイドルは影響力が強いのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ