出会い
目をつむって、これから来るであろう攻撃を待つ。そんな絶望的な時間はきっと長く、長く感じられることだろう。
走馬灯とかもきっとそんな原理だよね。時間的には同じなんだけど、感覚的に長く感じるみたいな。
……でも流石に長すぎない……?
と思って僕は恐る恐る目を開けた。
「え?」
「フー。間に合ったみたいだね……」
そこでは栗色の髪をした上級生が、金髪を羽交い締めにしていた。
「……離せ。もう何もしない……」
金髪はその上級生の下で、意外と本当におとなしくしていた。
ちなみに、上級生というのはネクタイの学年カラーでわかる。彼のネクタイは青で、3年生だろう。
「そうはいかないよ、1-A 竜崎 空牙くん。こないだと一緒で、生徒会に申請のない決闘は処分対象、と言いたいところなんだけど……」
栗色の髪の先輩はこちらを向いた。
「えーと、もう1人の君はE組の1年生だよね?」
「は、はい」
先輩は竜崎と呼ばれた生徒に向き直って言った。
「クラスの違いすぎる戦闘はただのリンチ。しかも、聞くところによると、同意も得られず不意打ちだったようだし。今回は反省文だけとはいかないね……」
先輩は呆れた顔をしている。
きっと、この竜崎という1年生は前にも同じようなことをしたようだった。
「とりあえず、竜崎君はこの後生徒会室に来ること。そこで事情を聞いて、後で処分は言い渡します」
後からやってきた2年の先輩に竜崎くんを連れて行かせると、栗色の髪の先輩は僕に向き直った。
「そっちのE組の子も、話を聞きたいから、名前教えて欲しいんだけど」
「は、はい。僕は上杉 陸と言います」
答えると、先輩は驚いた顔をした。
「そうか。君が、ね。なるほど……」
「え、えっと……」
「はは、ごめんね。僕の名前は石田 聖也。一応生徒会の副会長をやってるよ。これから色々大変かもしれないから、困ったらなんでも言ってね。生徒会室にいるから」
「? は、はい」
僕は全く状況がつかめなかった。なんでこんなことになったのかもわからないし、これから色々大変な意味もわからない。ただでさえ、過酷な研究課題に大変な思いをしているのにこれ以上大変になるのだろうか……
しかし、この副会長さんと話をしたら少し落ち着くことができた。
ていうか、落ち着いてみると、この人すごくイケメンだ……
鼻はすっと高くて、目は優しそうな垂れ目。薄い唇から発せられる声は、人を落ち着かせるような響きだ。何より一番特徴的な栗色の柔らかそうな髪。これらが相まって、いわゆる塩顏イケメンといった感じだ。
こんな人が強くて、しかも副会長だなんて……
「えっと、大丈夫? もしかして頭とか打ったりした?」
「ぇ! いえ! いえ! 大丈夫です!! ちょっと見とれてただけで……」
「ふふ。意外と元気そうで安心したよ。それじゃ陸くん、後で生徒会室まで呼び出すと思うから。またね」
そう言うと、副会長は優雅に歩いて行ってしまった。
僕はこんなことがあって、全然わからないことだらけだったけど、やっぱりお腹はすくんだなぁと、自分の胃袋に関心しながら食堂に向かった。