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友達100人できるかな

 この学校に通う生徒はプライドの高い人が多い。非能力者を差別するような会話も普通に行われている。


 たしかに、この学校は能力の質のみが評価されて入学できる学校なのだから当たり前かもしれないが、友人に非能力者が多い僕からすると、気持ちのいいものではなかった。


 今日もだ。前から耳障りの悪い会話をする、クラスメイト2人が歩いてくる。すれ違う。


「研究員が非能力者だったのは信じられないよ」


 この学校は、通常授業として、普通の高校生が学ぶこと(例えば数学とか、英語とか)と、自分の能力を高めるための授業があり、その他に定期的に能力を測定したり、能力研究を行う研究の時間があった。


 その研究の時間には1クラスに1人、担当の研究員が当てられている。

 珍しいことに、Eクラスは非能力者の研究員の女性が担当になっていた。


「学食まで場所が遠いとか、寮の部屋が狭いとか、そういうのは許せるけど、Eクラスだからってあれはまじでない」


「しかも女。なんかとろいし。まじで変えてほしいわぁ」


 もし僕がこの2人と、友達になっていたのなら何も言わなかったかもしれない。僕はヒーローじゃないし、本当は事なかれ主義の脇役気質だからだ。


 しかし、僕はこのクラスメイトと友達じゃないし、加えて名前すら知らない。

 なぜって、僕は入学してからこの3日間誰とも(正しくは先生と、さっき悪口を言われていた研究員のユキさん以外)話していないからだ。ちなみに全寮制なのでほんとに一日中だ。



 僕はクラスメイトから距離を置かれている。てかぶっちゃけハブられている……



 だから何も捨てるものはなかった。「ねえ」


「非能力者だからって研究員さんをそんな風に言うのはおかしいんじゃないかな。

彼女はたしかにのほほんとしてる人だけど、測定とか研究の時はとても的確にアドバイスをしてくれたよ」


 自分的にはこう言うつもりだったが、なにせ人の注意なんてしたことのない僕は声は上ずっていたし、噛んでいたし、どもってしまった。


 入学式の自己紹介以来、一言も話さなかった僕が、突然話しかけてきたので、2人は一瞬驚いた顔をした。しかし、すぐに僕と会話を始めた。


「たしかに僕の発言はよくないけど。君に言われたって何の説得力もないんだよなぁ」


「上杉君は妹さんの研究のためについでで入れたんでしょ。本当だったらお勉強をして普通の高校に通わなきゃいけないくらいのレベルなのに。そんな人に非能力者を庇われても、ね……」


 それじゃ、と言って結局名前のわからなかった2人は向こうへ行ってしまった。


 遠くなる声の中で、「あいつ絶対留年だろ」「話すと思わなかったー」というような内容が聞こえてきたが、僕は気にしない。


 今回は、3日ぶりに声を発することができたこと、彼らの会話から大体のハブられている理由がわかったこと、これが成果だ。


 ちょっぴり視界が霞んだけど、立ち尽くしていると、前から歩いてきた知らない先生が「おう、若者。頑張るんじゃぞ」と声をかけながらすれ違ってくれたので、今日は元気を持ち直すことができた。

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