クラスE
受験勉強を頑張っている最中に
「あんた高校決まったからもう勉強しなくていいわよ」
と言われ、この学校に入学が決まった日が昨日のように感じられる。
今日は入学式で、今はクラスに分かれて顔合わせのHRだ。
「入学式で説明があった通り、この学校は、
Special Ability Research の頭文字をとってSAR高等学院。その名の通り国家機関である特殊能力研究省の監督下にある。高い能力を持つ若者を集め、研究し、さらに能力を高め、世界で活躍する人間をつくることを目的としている。クラスは能力のランクで分けられており、A〜Eまである。この学院を卒業できたということだけでもかなりのステータスになるが、特に最終的にAクラスで卒業できたものはエリート中のエリートとして将来を約束される。その卒業のためには厳しい進級基準をクリアしなければならない。相対評価ではないが、毎年の傾向として5人〜多い年は15人ほど留年する。留年した場合はその分の学費は自分で払わなければならない。年間100万以上なので払えない人は退学になる。しかし学費さえ払えれば何年でも在籍することはできる。成績の良いものは次年度からクラスの昇格、悪いものは降格になる」
担任と思しき男性教諭が機械的に説明する。
ほとんどの生徒は、その面倒で、文に直したら絶対読まないような説明をまともに聞いておらず、雑談をしたり、自己紹介をしたり、窓の外を見たりしている。
「と、まぁ、いろいろあるが、ここはEクラス。つまり……」
教師が意味ありげな顔で凄むと、騒がしかった教室が一変、静かになった。なぜか言葉を発してはいけないような、さっきまで話していたのが後ろめたいような、そんな気持ちになった。
「落ちこぼれ、留年ギリギリ、宙ぶらりんクラスってこと。このクラスから留年は毎年5人は出てる。お前ら40人のワースト5は落ちるってことだから、わかりやすくていいな」
ニコニコとして説明されるそれは、その表情とは裏腹に絶望的なことだった。
「んじゃ〜学校らしく、自己紹介でも始めようかな。俺の名前は畑中 はじめ だ。このクラスの担任。ずっと1-Eにいるから、何年も付き合うやつの名前は覚えるかもな」
先生とは思えないような、適当で、乱雑で、それでいてこないだまで中学生だった僕たちを突き放すような、大人の残酷さをもった自己紹介から、1Eクラスの自己紹介が始まった。