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研究

 先週はいろいろあった。


 知らない人に戦いを挑まれたり、不思議な力が働いて助かったり、生徒会に入ったり……

 正直言って疲れた。


「疲れたって顔してるね?」


「えっ、す、すいません」


「大丈夫だよ。さっき言ってた力は見受けられなかったし、今日はこれで終わりにしようか?」


 この優しい女性は白石 ゆきさん。1-Eを担当する研究員さんだ。30代だという噂が流れているが、その噂が本当なら結構若い見た目をしていると思う。


 彼女はこの学校で海を除くと唯一の女性だ。

 優しくて、研究の時はしっかりしているけど、それ以外のところはちょっと抜けてる、この学校の僕の癒しだった。

 なんでも相談に乗ってくれ、僕が進級できるように色々なアドバイスをしてくれる。


 竜崎に襲われた時に、僕を守った不思議な力。それについても、ゆきさんに説明した。


「はい。でも、もう一回だけ挑戦してみてもいいですか?」


「いいわよ。今日はこれで最後にしましょう」


 その言葉を聞くと、僕は先ほど負った傷に、精神を集中させた。



 僕たち能力者は、その人によって能力の向き不向きがある。


 そもそも能力者の定義は、ヨガで言う「チャクラ」、風水で言う「気」、のようなもの、つまり、今までの人類には見られなかった、生物学の概念にとらわれない全く新しいエネルギーを扱える人のことをいう。


 能力学ではこの新しいエネルギーのことを、人間の核(心臓ではない、魂的なにか)から生み出されるものとしてcoreと呼ぶ。


 まず、一つ目の僕らが受ける実験の種類は、このcore数値の測定である。


 測定はこのガラス張りの密室の中で、今パンツ一丁の僕の体にたくさん繋がれているチューブによって行われる。

 ガラス張りの中、1人チューブに繋がれて裸、しかも女の研究員にガラスの外から上から下までじっくり観察される。この異様さには最初はなかなか慣れなかったけど、成績がかかっているのでそんなことも言ってられない。


 このガラス張りの周りにある測定器によって、空気中の物質の濃度の変化、温度の変化、湿度の変化から、放射線量の変化まで、空気中のあらゆる環境変化が測定される。

 また、体についているチューブによって、被験者の体温変化、質量変化、血流、酸素量、など、これもあらゆる物理的変化が測定される。

 この、体外変化と体内変化2つの物理的要素によって、core数値は測定される。


 と、なんだか難しいことを言っているようだが、coreという、出所のわからない新しい概念を、今までの科学の範囲内である物理的な要素で測ろうというのだから、この数値の信憑性を疑う人はとても多い。

 現に、このcore数値は学校の成績に少ししか反映されない。


 しかし、今までたくさんの能力研究がされてきて、確立された数値なのだから、それだけで信憑性はあると僕は思う。


……だって、僕はこれしか得意なものがないのだ。

 core数値だけならBクラスに行けるくらいの数値を出しているのだが、それ以外は、非能力者と大差ないほど悪い。


 数学や英語ができたってここでは評価されないし、僕にはこれしかない……!

 これを僕が否定したら、僕は何を支えにこの学校で生きていけば良いのか……

 


 おっと、説明に戻ろう。


 その、僕が非能力者と大差ないと言った、もうひとつの測定項目は能力実用性である。簡単に言うと、その能力が、現実でどれくらい実用性があるのか、ということだ。


 能力は様々種類がある。例えば早く動けるとか、意識した皮膚を固くできるとか、僕のように、自らを治療できると言ったものだ。


 これらの能力は、coreをどのように使うかで違いが生まれる。


 本来ならば理論上、coreを扱える能力者ならば、すべての能力を扱うことはできるらしいが、やはり個人差があり、使える能力は人によって違う。



 僕が今のところできる能力は、治癒(ヒール)しかない。

この能力は他者に影響を与えず自己完結しているので、実用性が低いと評価されている。


 さらに、僕の場合1人で落ち着いている時に、少しだけ傷を癒すことしかできない。切り傷であれば、血が止まるとか、かさぶたができるとか、そのレベルである。

 僕はこの学校で異例のDランクの能力実用性なのだ。


「……やっぱり、測定はやめにしましょう」


「……はい。わかりました。結果が出なくてすみません……」


 結局僕は、今日作った指先の切り傷さえ塞ぐことができなかった。


「うーん。core数値は確実に高い水準なんだけど、そのcoreが一体何に使われているのか、なぜうまく治せないのかは謎のままね」


「は、はい……」


 僕が能力をうまく使えないこと、それは昔からなので仕方がないが、結局この間僕に働いた謎の力のことも分からずじまいだ。


「そ、そんなに気を落とさないで。うまいアドバイスができなくてごめんね。こんな私でよかったらなんでも相談してね」


ゆきさんが申し訳なさそうに顔を覗き込んでくれている。


「はい。ありがとうございます」


 いつも研究の時間にはがっかりしてばかりだったが、次も頑張れるのはこの優しい笑顔のおかげだ。

ありがとうゆきさん……僕のご飯の次の癒し……


次は長老の実験の番だったようだ。僕が終わるや否やゆきさんを口説きはじめた長老に、どこからかあらわれた美織がチョップをくらわせているのが見える。


ゆきさんも大変だな……

今回のお話は設定の説明が多くなっています。超能力大好き人間なのですが、いい加減はやく恋愛描写が書きたいな……

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