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 会長に冗談? を言われた海だけど、全然顔が笑ってないし、むしろすごい顔で会長を睨みつけてる。


「無駄話しかしないようでしたら、私は帰りますけど」


「ごめんね。今回二人を集めたのは、竜崎 空牙との決闘の件の事情聴取と、二人に対する提案のためなんだ」


 副会長が説明した。


 僕にはそれだけでは何も理解できなかったけど、海は大体察しがついたという顔をしていた。


 まぁ、僕以外が見たらずっと無表情かもしれないが、双子である僕からすれば、少しの顔の変化で感情が読み取ることができる。


「結論から言うと、昨日、海さんが竜崎くんと決闘をしたことによって、逆上した竜崎くんに、今日、陸くんは襲われた、ということ」


「海が、竜崎くんと決闘していた……?」


 僕は驚いた。しかし、海の方はむしろうんざりしているようだった。


「竜崎の件なら昨日何度も説明したはずですが。その後のことは私には関係ない。私はここにいなくてもいいでしょ?」


「そ、そんな言い方! 陸君は……」


 メモを取っていた様子の桧山先輩が、海に何か言おうとすると、副会長がなだめて、続けた。


「……そうだね。でも、昨日の件が今日の戦闘に関係しているから。陸くんが襲われたのは、海さんのせいでもある、とも言えるんじゃない? 海さんからもう一度昨日のことを説明してもらえる?」


「……わかりました」



 昨日私は、1日のカリキュラムを終えて寮に向かうところだった。


 そこへ、クラスメイトの竜崎が決闘を申し込んできた。


「お前は俺より強いのか?」


「……はぁ? 知らないけど。……私部屋に帰りたいから。どいて」


「……お前は、俺より強いのか」


「わかんないよ。……入学成績は上だけど。まぁ、あんたなんか頭おかしそうだし、私の方が強いでしょ。もういい?」


「……そうか。なら……倒す……!!」


 めちゃくちゃだと思ったが、断る理由もなかったので戦闘を行った。


 おそらく、学年2位の成績で入ってきた竜崎は、一位の私が気に食わなくて戦いを挑んできたんだろうと思った。


 なので、もちろん怪我なく、相手の怪我も防ぎつつ、しかし、相手のプライドをズタズタにするような勝ち方をしてやった。


 どんな方法かは言いたくない。


「そして、そこの会長さんが止めに来ました」


 会長は誇らしげにしている。


 あんなに強い竜崎くんと、昨日海が戦っていたなんて……


 今まで別々のクラスでほとんど会うことはなかったが、今までも海は危険な目にあってきたのかもしれない。


 能力者の学校に女子1人。しかもクラスはAで学年トップの成績なら、嫉妬の対象になったり、女性ということで危険な目にあってきたかもしれない。


「まぁ、止めなんて入らなくても自分でなんとかできましたし。……もういいですか」


「うん。ありがとう。この後のことは陸くんが説明してくれる? わかってることだけでいいから」


「は、はい」


 僕は、海が責任を感じないように注意しながら、覚えていることをできるだけ細かく説明した。


 そんなことをしなくても、海は何も感じないかもしれないけど。現に海は、どこかイライラしているように見えた。


「確かに、今思えば、竜崎くんは海を意識した発言をしてたかも……」


「うーん。そうか。僕らは竜崎は海さんに負けた腹いせとか、仕返しのためだと思ってたんだけど、話を聞く限り、陸くんも強いのではないかと思って襲ってきたようだね」


「はい。でも僕は……」


「強くない。はずなのに、なぜか攻撃は当たらず、今も元気でここに立っている……と」


 副会長が相変わらずの態度の会長の方へ向くと、会長はまた大きなモーションでドーーン!! と立ち上がり、話し始めた。


「まぁ、そんな不思議な話はさておき、お前らに提案の方だ」


 なぜ攻撃が僕に通じなかったのか? という大きな謎を、そんなに簡単に置いといてしまうのか。


「お前ら生徒会に入れ」


「えぇっ?!」「……」


 会長は、さも普通のことを言うように、それがあたりまえのことのように自然に、僕たちを生徒会に誘った。


 せ、生徒会に僕が……? しかも海と一緒とは……?

 生徒会は皆、Aクラスの中でもトップクラスの優秀な人物が選ばれてなるものだと聞いている。そんなの学年最下位の僕にはムリムリムリムリ。


 僕は心底驚いたのだが、隣の海は意外にも全然驚いておらず、無言で何か考え込んでいる。


「僕には無理です!! なんで僕なんか……」


 混乱して話す僕に副会長が説明し始めた。


「一年の生徒会は基本的に首席に頼むんだけど、決まりじゃないから今回はEクラスの人もいれて、いろんな立場の生徒を生徒会の意見に含もうと思ってね」


「まぁ、そんなことは表向きで、海をずっと生徒会に誘ってきたけど、絶対嫌だっつうからさ、兄の方を人質にしようと思って」


「ええ?!」


 そんなゲスな発言をした会長は案の定蒔田先輩に殴られていた。だけど、きっとそれが本音なのだろう。


 それなら、ワースト一位の僕が生徒会に誘われる納得がいった。でも、


「……僕は人質にもならないと思いますけど……」


「それはどうかな……」


 会長はニヤリと笑い、海はまだ何か考え込んでいる。


「……陸と一緒なら……」


 海の重い口が開いたかと思えば、信じられない言葉が聞こえた。

 僕と一緒なら海は生徒会に入りたい、そう言っているのだろうか。


「陸が私のパシリになるなら、生徒会に籍を置いてもいいでしょう」




やっぱり……そういう意味だよね……


 期待してしまった少し前の僕を殴りたい気持ちだった。しかし、生徒会なんて僕にはできないことに変わりはない。


 が、僕に拒否権なんかもちろんなくて、生徒会はすでに新しい2人のメンバーの歓迎会の準備に取り掛かっていた。

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