あいへいとゆー 3
「ガキをよこせ!」
発砲音。
威嚇的なものだったのか外したのか分からないが、僕の後ろに当たる音がした。
特殊な生まれだけで、普通の人間と構造は一緒。
銃が当たれば当然痛い。
悲鳴を上げる子供。
僕に引っ付いて震えていた。
振り向いて目を凝らすと、中肉中背の男が銃を構えている。銃口は震えている。
……あの人だ。
「す、少しでも動いたら撃つぞ!」
動揺しているのが見て取れる。
銃など本当は握ったことが無いのだろう。
「落ち着いてください。
僕は貴方と同じクローンです。
貴方の安全は約束します。
話を聞かせてください」
僕は手を広げた。
子供を守るためではなく、銃を持つ彼を守るために。
男は一瞬驚いて顔を強ばらせたが、僕が手を広げたまま動かないので、そうっと近寄ってきた。
一歩、三歩…彼との距離が縮まる。
銃口は僕の額に当てられた。
男は安心したように呼吸を落ち着かせていく。
「…クローンの証明、できんのか」
充血した男の目が、僕を見下ろす。
刺激しないように、シャツのボタンを外して背中の痕を見せる……クローンが胎児まで成長するために付けられる、栄養補給のチューブ痕。
「あぁ……」
それを見るやいなや、へたりと座り込む男。
銃をやっと下ろす。
「俺ぁ……間違ったんだ」
男は頭を抱えてうずくまった。
僕の後ろに隠れていた子供が、恐る恐る顔をのぞかせる。
「勝手に生み出して……代わりに散々使っておいてよ。
金に困ったからって売りに出したんだ。
そんなお粗末な事があっていいのかよ」
僕はそのまま彼を眺めるように見る。
彼はたぶん…話を、したかったんだ。
男は子供を攫って、身の代金請求をしようと思っていたらしい。
未遂だからこそ良かったが、もしそんなことをして捕まったなら殺されていただろう。
クローンは人間より命を軽く見られているから。
いくら法律で正しても、優越感は取りのぞけない。
「アンタ、さっき行ってたよな。
俺みたいなクローンを保護するって……それってどういうことなんだ?」
やっとマニュアルに戻ってきた。
僕は慣れた口上を紡ぎ、男を外で待つユガミに託した。
その間、ずっと僕についてくる子供。
不安なのか、服の裾をひっぱりながらついてくる。
「身元不明の子供かぁ……さて、なぁ」
ユガミも頭を抱えた。
男は子供を財閥の家近くの公園で攫ったらしい。
だが子供は迷子になっていて…というか家を飛び出していて、そこにいたらしい。
家に返してあげると言う男の言葉に反対し、倉庫を逃げ回っていた所を僕に見つかった…というわけ。
「なまえはシミル。
…どこのいえとかゆーと、いえにつれかえされるからぜったいいわないもん」
シミル、というのも本名かどうか分からない。
クローンなのか人間なのか。
分からないが、シミルはいたく僕に懐いてしまった。
そういうわけで……
「しばらく匿ってやれ、ヒビキ」
シミル、見た目十一、二歳。
ボーイッシュな女の子。
彼女との共同生活がしばらく続く事になった。
「……な、なんで?」




