3・1-A組の教室
3・1ーA組の教室
香音と香織が通う高校は、東京都内でも上の中に入る学校である。
この学校の最大の特徴は、自由度がとても高いという事である。例としては、学校の指定の制服のブレザーが存在しているが、ブレザーの着用は個人の自由であり、余程の物でなければ、それ以外の着衣でも可能である。更に昼食を行うときは教室に限定されず、各個人の一部を除いた好きな所で食べても可能であった。
あまりに自由度の高いおかげか、学校の生徒数は多く、遠く離れた所からの入学者も、他校とは桁違いの多さだった。
走ったおかげか、朝の会の十分前には、二人は教室に辿り着く事が出来た。香音と香織のクラスには机と椅子が其々四十台、つまり四十名のクラスなのだ。席は八人で一列で合計五列であり、双子という為か同じ苗字の為か、香織の席は窓際の中心で、香音の席はその列の真ん中より前、つまり香織の前の席である。そして今現在香織の席には、香織、香音、直也の他に、中肉中背の顔立ちの良い男子生徒の計四人が集まっていた。
年上の直也が、このクラスに居るのは、直也が小学六年の時、事故で大怪我をして、それによる入院生活とリハビリが理由で、六年をもう一度やり直す事になり、一学年下だった香音と香織と、同学年になったのだ。
「ギリギリだったな」
「家が近い和馬より時間が掛かるのは当然だよ!」
顔立ちの良い男子は、和馬という名前であり、香織の親友である。和馬は元々多摩区に住んでいたが、この学校に入学をする為に学校の近くのマンションで一人で暮らしているのだ。その和馬の言葉に香音が答える。
「まあ、香織が私に合わせてくれるお蔭で、私も間に合うんだけどね♪」
と、冷静な口調で香音は言う。先程までは香織の事は『香織クン』と呼んでいたが、何故か香音は、この呼び方は香織の前でしか言わないのだ。
「・・・・・」
そんな香音を香織は見つめた。
姉である香音は、成績優秀で性格も良く、クラスのクラス委員も務めている。何よりスタイル抜群の美人である為、多くの男子生徒からも告白されている事があるが、香音はそれらを全て断っている。そんな美人の姉だからか、香織は香音に恋心を抱いてしまったのだ。
「!」
とその時、香音の背後から、ワイシャツの上からセーターを腰に巻いた、肩まであるウェーブのある髪に、幼げな顔に眼鏡を掛けた女の子が近づいてきた。そして・・・
ガシッ!
「ふにゃあ!」
そのまま素早い動きで、女の子は香音の胸を背後から掴んだ。掴まれた事により、香音は奇妙な声を上げる。
「おっはよ香音♪ う~ん・・・Fカップの感触最高♪」
「んにゃ・・・ま、真由・・・ゃん・・・止め・・・・駄目・・・はぁん・・・」
真由という女の子は、香音の胸を揉みながら、ウットリとした顔で感想を述べる。一方揉まれている香音は、甘い声を出しながら、息を荒げる。
「真由! お姉ちゃんに何やってるんだ!」
その厭らしい行為を見ていた香織は、大慌てで真由に怒鳴る。
「あら? シスコン香織! 大好きなお姉ちゃんのFカップを揉まれて嫉妬?」
と、小馬鹿にした様に、真由は香織に言う。
「そんな事より、お姉ちゃんから離れて!」
そう言うと香織は、香音の手を取り、真由から引き離した。解放された香音は、息も荒れており、トロンとした眼つきになっていた。
「あっ! 返しなさいよ! Fカップはアンタだけの物じゃないのよ!」
と、まるで私物を盗られた様に、真由は言う。そんな真由に香織は反論する。
「胸はお姉ちゃんの物! いい加減にしないと、学校中に真由が女好きって事バラすよ!」
「やれるモンならやってみなよ! シスコンが!」
と叫びながら、真由は香織に飛び掛かる。香織は香音を直也と和馬に託し、戦闘態勢をとる。この二人以前から、香音を巡ってバトルを行っているのだ。と言っても本気ではなく、どちらも笑みを浮かべた状態で戦うのだ。
「おい見ろ! 香織と真由がバトルを開始したぞ!」
「机を退かせろ!」
バトルに気づいた他のクラスメートが、次々と香織達の近くから机を退かし始めた。どうやらこのバトルは、最早クラスの名物になっている様だ。
そしてバトルは開始し、真由は素早い動きで香織に攻撃をするが、香織は其れを鮮やかに回避していく。
「もらったぁ!」
「!?」
その時一瞬の隙を突いて、香織は真由の背後に回り込み、真由の腰に巻かれていたセーターで真由の腕を縛った。
「今回は僕の勝ちだね♪」
と言いながら、何時の間にか落ち着いていた香音と共に、席に着いた。
「あ、コラ! これ解け~!(怒)」
真由は怒りながら叫び、和馬が慌ててセーターを解いた。
キーンコーンカーンコーン
真由の腕の拘束が解かれた同時に、始業のチャイムが鳴り、乱れていた机は、クラスメートによって元に戻された。やがて担任が入ってきて、朝のHRが始まった。




