プロローグ
私はゲームが好きだ。
だから、今度発売された新しい型のゲーム〈Sword and Skill〉というVRMMORPGも即座に購入を決断した。
幸い、発売日に購入できたし、運が良かったと言わざるをえない。
購入不可となった者が多かったどころではなく、大多数はそちらだったのだから。
しかし、問題もあった。
最小にして最大。
ズバリ、最強最悪。
根本的な問題。
それは、ゲームを起動しようとする彼女に迫っていた。
そして、暇潰しにやっていたゲームを手に言った。
「ヤバイ。死んでる。」
現在14歳中2の女。
彼女はゲームが下手であった。
好きこそ物の上手なれ。
この言葉をご存知だろうか?
事実、好きなことの方が上達するのが早い。
だが、下手の横好きという言葉も存在するのだ。
そして、彼女は明らかに後者の人間であった。
だから、ゲームを起動し、ステータスを振る段階で行われた行動はある意味では当たり前の事であった。
「んー。ステータスを振るの?面倒だな。よし、攻撃と素早さに全振りしよう。」
ステータスは全部で5種類あった。
攻撃 :0
防御 :0
魔法 :0
魔法防御:0
素早さ :0
残り……200pt
丁度こんな画面だったわけだが、考えるのが面倒だと言って攻撃と素早さに100づつ振ったのだ。
せめて上から2項目とかにすればいいものだが、単純過ぎてつまらないらしい。
変な拘りだ。
きっと、万人がこの妙な拘りを理解する日は訪れないだろう。
何はともあれ、初期設定の作業は次のキャラクターメイキングに移っていった。
「身長は170㎝でいいよね。髪に関しては憧れの黒髪ロングポニテ。異論は認めない。」
まぁ、文句を言う者などいないのだが。
リアルでやるのは無理だね。
洗うの面倒だし。
「黒髪だったら紅い目でしょ。」
別にそんなことは無いのだが、その組み合わせが好きなのだ。
仕方あるまい。
そんなノリで次々と決まっていくアバターはどこか魔王を連想させるようなものだったが、当の本人は至って気にしていないので、まぁ、問題ないのだろう。
そして、
「うん。いーじゃん。」
アバターは完成した。
正式サービス開始の10分程前の事だった。