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死神様のご機嫌いかが?  作者: 椎名皇
『ツイていなかった』二つの出会い
3/5

ケース3.死神様降臨

死神様登場

【そう、あたしは死神。あんたが気に入って、ここに居座ることにしたのさ。】


 突然家に現れた死神と名乗る女性。

 まったくなにが何なのか侑斗にはさっぱりわからない。

 

「死神・・・って言われても・・。なんで俺なんかのところに・・・。そもそも死神って何だよ?」

【死神は死神さ。人間じゃない、でもまぁ姿かたちは人間になることはできるぞ。】

「いやいや、そういうことじゃなくて・・・。わけがわからない・・・。」

【ふむ、おかしな奴だねぇ。ま、別にあたしはあんたのところに住み着くだけだから、気にすんなよ。」


 えーと、状況を整理しよう。

 家に帰る→ドア開ける→玄関に赤髪の女性→死神と名乗る→混乱中

                           ↑今ココ

 さっぱり意味がわからない。

 死神と名乗る女性は、今もだるそうに侑斗を眺めている。


「そうですか・・住み着く・・・・って!!ちょ、まっ、冗談だろ?!」

【めんどくさい人間だね。あたしが住み着くって言ってんだから住み着くんだよ。】

「おまっ、住み着くって言ったって第一、見ず知らずのお前なんか住ませるかよ。」

【まぁ拒否されたところであたしは勝手に住み着くからいいけどな。それよりいいのか?家族が待ってるぞ、さっさと居間に行って顔見せてやりなよ。」

「んなこと言ったって、知らない奴がいるんだぞ。いけるわけがないだろ。」

【ああ、うるさいな。わかったよ、これでいいんだろ?」


 すると、死神と名乗る女性の姿が跡形も無く消えてしまった。

 侑斗は自分の目を疑った。

 一瞬で人が消えるなど、信じられない光景だった。


「き、消えた?マジックか何かか?!」

【だから言っただろ、あたしは死神だって。姿かたちはお前以外には見えないし、声だってお前以外に誰にも届くことは無いんだよ。」

「・・・・何か悪い夢でも見てるんだな。ありえないし・・・トッポ食べたら寝よう。」


 侑斗は青白い顔をして、居間のドアを開けていった。

 誰も居なくなった玄関に、声が響く。


【なかなか面白い奴だな。さてと、部屋に戻りますか。】


 


 時刻は8時半を過ぎたあたり。

 家族は帰りが遅くなったにも関わらず、普通に侑斗を出迎えた。

 かなり遅めの夕食を食べながら、侑斗はそれに違和感を感じていた。


 赤髪の女性についてたずねても、「アニメの見すぎじゃない?」だの「何その髪の色、痛すぎ。」だの参考にもならない言葉ばかりが返ってくる。

 つまり、家族はあの死神とか言う女を見ていない、ということになる。

 これ以上聞いても何も得られないと悟った侑斗は、部屋に戻ることにした。



 ガチャ!

【よー、おかえりー。遅かったじゃん。お前って飯食うの遅いタイプか?】

「・・・・・嘘だろ。」


 部屋に戻ると、ベッドの上には広げられたポテトチップスの袋。

 それをおいしそうに食べながら、漫画を読む先ほどの変な女。

 しかも侑斗のベットの上で。


「なんでまたここにいるんだよ・・・。警察呼んでいいか?」

 そうだ、さっきは思考停止してたけど、こういうときは警察呼べばいいじゃん。

 なんでそれに気づかなかったんだろう。


 さっそく侑斗は携帯を取り出し、110番に通報しようとしたが・・・。


【お好きにどーぞ。あたしは誰にも見えないってさっき言わなかったっけか?」

「お前まだそんなこと言ってんのか?そんなのありえるわけないだろ。」

【ったく、親切に言ってやってんのに・・・わかった、どうすればいいんだ?】

「いますぐここから出て行け。」

【そうじゃないだろ。あたしが他の人間から見えないことを照明するんだろ?出て行くわけないだろ、あたしが住み着くって言ってんだから。】


 どうやらどれだけ言ってもこの変な女は出て行く気はないらしい。

 侑斗はため息をつくと、諦めたように声を出した。


「まぁいきなり俺の前から消えたという事実もある。何かのマジックだろうけど、いちおう誰にも見えないのか試しては見よう。その代わり、もしも見えたら即警察呼ぶからな。」

【あいよ。方法はまかせるよ。どうせ無駄だろうから・・・・クックック。】

「・・・・ついて来い。」


 侑斗は死神と名乗る女性を連れ、居間へと戻った。

 気になるのは、この女の妙な余裕。

 どうせ見つかるのに、もしも見つかってしまったら警察を呼ばれるのに・・・・

 なんでこんなに笑っていられるんだろう。


「母さん、こいつ知ってる奴?」

「・・・はぁ?あんた何言ってるの?友達いないから透明人間と友達になったのかしら?」

【ほら見ろ。あたしは見えないって言ってるだろ?ここで脱いでやってもいいぞ?】

「やめろ!!そこまでする必要はない!」

【冗談だよ、脱ぐわけ無いだろ。】

「・・・侑斗、いきなりどうしたの?気でも触れたの?病院行く?」

「・・・なんでもないよ。そう、俺は友達いないから透明人間と友達になったんだよ。」

「そう、でも見えないからその人は知らないわ。優華にも紹介してやりなさい。」

「わかった、サンキュー母さん。」


「おい、優華。俺の友達を紹介しよう。赤い髪の田中さんだ。」


 ソファーに寝そべってテレビを見ている女の子に声を掛ける。

 背が低く、まるで小動物のような愛くるしさをもつ少女。

 侑斗の3つ下の妹で、名前は優華という。

 黙っていれば、かなり可愛くて抱きしめたくなるような妹だが・・・


「は?・・・頭大丈夫?いや、前から思ってたけど一度精神科行く事お勧めするよ。」

「い、いや・・・冗談。冗談だから・・・もうやめてくれ。」

「冗談でそんなくっだらないこと言うんだ。ギャグセンスの欠片もないね。まじでつまんねーわ。」

「いや、ほんとすまん。謝るから・・・。」

「大体赤髪の田中さんとか、アニメの見すぎだろキモオタ。寒いんだよ。」

「すいません!すいません!」

【フルボッコだな、お前。妹に頭が上がらないのは兄の宿命なのかねぇ。」

「うるせぇ!ほっとけ!」

「あぁ、痛い痛い。透明人間さんとお友達ですか、いい友達もったねぇ~。」

「う・・・これも冗談だから!・・・じゃあな!」


 顔から火が出るような気分で侑斗は自室へと逃げた。

 母さんや妹にこれほどまで叩きのめされるとは・・・。



 このやり取りから得たもの。

 この女は普通の奴ではないという確信。

 声も聞こえず、姿も見ることはできないというのはおそらく事実。

 現にあの2人にはものすごく馬鹿にされたし。


 得たものもあれば失ったものもある。

 家族の俺へ対する評価だ。

 今回の件でたぶんがた落ちした。


「こんなこと試さなきゃよかった・・・・。」

【だから言っただろ。無駄だって。あたしが死神って信じてくれたか?】

「死神っていうけど、お前は普通の人間じゃないことはわかった。質問がある。お前が俺のところへ来た本当の理由について聞かせてもらいたい。」

【気に入ったんだよ、ただそれだけ。】

「気に入って、俺のところへ来て、何のメリットがあるんだ?」

【さぁね。おもしろそうなことがたくさん起きそうだから・・・かな?」

「・・・・わかった、どうせこれ以上聞いても無駄だな。・・・よし。」


 いきなり立ち上がった侑斗は、ベッドの上にいる死神の元へ歩いていく。

 

【ん?何か用か?って・・・なんだお前!倒れてくるな!」

「うーん・・・・zzz・・・。」


 死神のほうへいきなり倒れた侑斗は、そのままベッドに倒れこんだ。

 死神が実体を消したのだ。消さなければ色々とまずかったのだろう。


【びっくりした・・・。案外、器がでかい奴なのかもな。普通見ず知らずの奴がいたら寝れないだろ。】

「・・・・・zzz。」

【まぁ、いいか。こいつは明日から日常を失うんだ。今日くらいゆっくり休めってな。】

「・・・・・zzz。」

【これも死神の役割なんでね。恨まないでくれよ。それじゃ・・・。】


 別れ際、ぐっすりと眠っている侑斗の頬に軽くキスをし、死神は飛び去っていった。

 ゆれたカーテンの隙間から月明かりが部屋に差し込んでいた。


【せいぜい・・・頑張りな、侑斗。】

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