カンペ『6人の中から1人に告白しなさい』
メタ発言だらけです。
初めてのオリジナルの短編なので、どうか生ぬるい目で見て下さい。
私三島由紀。このお話の主人公らしいねぇ。別になんてことない英語が死ぬほど苦手な普通の高校生だよ!魔法少女とかだったら格好良いけど…。ごめんね、なのはちゃんもまどかちゃんもいないよ!ちなみにこのネタは分かる人しか分からないよ!
ちなみにこのお話は恋愛ものらしいよ。うわぁ、告白しましょうってカンペに書いてある。急展開だよね。苦情なら作者にね★
さて、誰に告白しようかなぁ。とりあえず周りに居る男の子を6人紹介するね!てゆうかこの6人の中から誰かを選んで告白しなきゃいけないらしいよ。そういうシナリオなんだって。まるで攻略キャラが決まった乙女ゲームのようだね!さてさっそくいくよ。
伊藤空は私の幼なじみ。昔っから一緒で、奇跡的にクラスもずっと同じなんだよ。毎日私の事馬鹿にしてくるんだよ、まったく。でも真面目な時はすごく真面目だから頼りになる奴だな。
原田健哉くんは隣の席の人で、もう私の国語力じゃ表せないほどイケメンだよ!勉強も運動もできるし優しいし、この学校じゃ有名な王子様。ファンもたくさんいるんだよ。
明智未来先輩は私の所属してる、風紀委員会の委員長。いつも明るくて、…トラブルメーカーっていうのかな。いつも堂々と委員会遅れてくるし、大事な書類無くしちゃうけど憎めない人かな。
佐藤樹先輩は同じく委員会の先輩。とにかくボーっとしててね。この前なんかパジャマで学校来たんだから!明智先輩にかなり盛大にツッコミいれられて痛そうだったなぁ(笑)
工藤悠介先生は現国の先生だよ。まだ若いのにいっつも眉間にしわ寄せて無口で。そのせいで怖がられてるけど話してみると良い先生なんだよなぁ。またお薦めの本とかあるか聞いてみよう。
立川亮くんは家庭科部の後輩。大人しくて笑顔が可愛いくて、部活に男の子一人しか居ないから大人気だよ。料理上手だし手器用だしお嫁さんに最適かも、なんちゃって。
………。
うん、この6人だね。
さて、呼んで告白しなきゃなぁ…。うわ恥ずかしい!告白なんて初めてだからどうしたらいいか分かんないよ。「好きです」?「気になってました」?「お付き合い願いますか」?笑顔で言った方がいいのかな、それとも真面目に言った方が真剣味が出るかな?
…え?告白する人は決まってるのかって?
もちろん!私が好きなのは最初からあの人だけだよ。じゃあ余計な男子紹介すんなよってね。うははは。誰に告白するんだろう、と読者さんに予想してもらう為だよ!決して字数を稼ぐ為じゃないよ!
さてさて、それじゃあ告白しようかな。恥ずかしいなぁ。噛まないといいけど。あ、結局何て言おう。「好きだよ!」で良いかな。出来れば笑顔で言いたいし明るく言おう。一回きりなんだし後悔のないようにしたいしね。
よぅし…落ち着いて、落ち着いて…。
よし!
「…ということで大好きだよ、山下くん!」
「……嬉しいけど、三島さん」
「ん?」
「今頃読者さんは『は?山下?それどいつだっけ?』ってなってるよきっと」
「ありゃりゃ、6人は多すぎたかなぁ。あ、さっきも言ったけど苦情は作者だよ!」
「てゆうか俺その6人の誰でもないしね。さっそくシナリオ無視なんて三島さんすごいね」
あはははーと軽く笑う私たち。あ、描写入れるとなんだか小説っぽくなったね。
「山下くんは委員会も部活も違うから話すの久しぶりだね」
「うん。だって俺、空の数多くいる友達の1人って位置付けだもん。主人公の三島さんと話すのなんて超久しぶり。元気だった?」
「あはは、私はいつも元気だよー。あ、でも前小テストかなりヤバくてちょっと泣いたー」
またあははーと軽く笑う私たち。そして話題が途切れて沈黙がうまれてしまった。
どうしようかな、と思ってると山下くんが口を開いた。
「あー…どうして俺なの?」
「…山下くんは何も聞かずに隣に居てくれるから」
「それ単に台詞ないだけだよ俺。脇役だもん」
「そう…だけど」
また沈黙。
でも今度は前より早く山下くんが口を開いた。
「俺サブキャラだよ、サブキャラ」
「いいよ」
「名字しか決まってないし」
「いいよ」
「キャラ確立してないし」
「いいよ」
「台詞ないし」
「いいよ」
「これ乙女ゲームならバットエンドで終わっちゃうよ?」
「いいよ」
「もしかしたら三島さんサブキャラに下がっちゃうかもしれないよ」
「いいよ」
「…ホントに俺で、いいの?」
「いいよ!」
勝手に始まった物語だった。幼なじみが居て先輩が居て後輩が居て。
物語はシナリオ通りに進んで行く。私の好きになった人とは話せない、選択肢にない、小さくしか存在しない。
それでも。
初めて話した時の柔らかい笑顔が、どうしても欲しくて。
「私、主人公なんかじゃなくていい…。もっと可愛い子がやればいいよ…。山下くんと話せないの、悲しいよ…」
「だってそんなシナリオないんだもん、仕方ないよ」
私が下を向いて泣くのを堪えていると、また軽く笑う声が聞こえた。
山下くんには、軽い事なのかな。仕方ないって思える事なのかな。
…仕方ないよね。山下くんルートなんて用意されてないんだから。いきなり告白なんてされても困るよね。主人公が1、2度しか話した事ないクラスメートに告白しちゃ物語めちゃくちゃだもんね。
謝ろう。そんで、シナリオ通り誰かを好きにならなきゃ。山下くんの事なんてただのクラスメートだと思わなきゃ。
ぐ、と目に力を入れてなんとか涙を抑えると、私は頭を上げた。
「やま、山下くんごめんな」
「じゃあ三島さん」
「へ?」
「三島さんはサブキャラに格下げという事だね」
「………え?」
山下くんは嬉しそうに笑ってる。私の好きな、柔らかい笑顔。
「仕方ないよね、シナリオ通りに進められないんだから。次の主人公は…三島さんの友達でいいかな。あはは、流石に勝手かな」
「…え、えっと…?」
「ふふ」
山下くんは私の頬に両手を添えた。
「俺もサブキャラのくせにずっと好きだったよ、三島さん。こんな奇跡起こるなんて聞いてないし。俺すげえ嬉しい。泣きそう。てゆうか泣いていい?」
「………じゃあ山下くん好きになっていいの?だ、抱きついても?ちゅーとかしても?」
「…うん、おいで?」
「……~~っ!」
涙目の山下くんに私は容赦なく抱きついた。そのまま声を出して泣いた。山下くんは優しく抱きしめ返してくれる。
私は、物語に小さくしか存在しなくても、出番がなくても台詞がなくても名前がなくても。
脇役の彼が、山下くんが好きなのだ。
…結局言いたかった事はですね。
脇役だって恋したい。
自由に恋愛しようよ。
そんな感じです。
ハイ、苦情は私が受け付けています。
皆様にはありませんか、メインキャラよりサブキャラを好きになっちゃう事。
私はしょっちゅうです。
「もっと出して下さい」なんて言えるはずなく黙って出番を待ちます。