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!!! 〜異世界マント〜
千曲川の風が、グラウンドの白線を少しだけ消していく。
東信タイガースの面々は、いつもより静かだった。
今日は一回戦。相手は――ポポ。
ふざけた名前だ、と誰かが笑ったが、誰も本気では笑っていなかった。
どこかで聞いたことがあるような、不気味な響き。
主人公はスパイクの紐を結び直す。
指先に、かつての感触がよみがえる。あの頃と同じ、試合前の沈黙。
ベンチの端で、新入りが小さく呟く。
「勝てますかね」
誰も答えない。
ただ、風だけが吹く。
やがて、対戦相手の姿が見える。
ゆっくりと、しかし確実に近づいてくる影。
その中心に――ポポがいた。
審判の声が、乾いた空に響く。
「プレイボールまで、あと五分」
主人公はマウンドを見つめる。
遊びのはずだった。
それなのに、胸の奥が熱くなる。
――これは、ただの一回戦じゃない。
そう、どこかで分かっていた。




