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入らなかった魂
“
言いたいことは分かったか?
“
雲の上の王の一人が語りかけるー
地の域ではー
*
彼は決める。
もう天は待たない。
今度は、自分の物語だー
物語を書くために、
まず外に出る。
コンビニの前の掃除を手伝う。
知らない人に挨拶する。
地域の古びた公園の掲示板を直す。
どれも物語になりそうにない。
バズらない。
映画化もされない。
だが――
夕暮れの色が違った。
空気が重くない。
初めて“体温のある景色”を知る。
記録ー
彼はそれを書く。
上手くない。
整っていない。
名言もない。
ただ、
「今日は寒かった」
「公園のベンチが冷たかった」
「子どもが一人笑った」
そんな記録。
かつての完璧な構成はない。
でも、読み返したとき、
胸が少し震える。
それは“評価”ではなく、
“実感”だった。
少しづつ積み上がるー
どこかの記憶ー
派手じゃない。
ニュースにもならない。
雪が降るー
誰も彼を知らない。
だがその瞬間、
彼は理解する。
天から降ってきた物語は、
完璧だった。
でもこれは違う。
不格好で、
泥だらけで、
遠回りで、
それでも――
これは自分の物語だ。
彼はノートを開く。
初めて、
“魂”が、
静かに入る。
“
俺は分かるぜ
“
誰かは呟くだろう
AKIRA!!!




