ピノキオ婆さんと天からの原稿
マイナーディズニーランドの外れに、
ひときわ背の高い塔があった。
その最上階に住むのが、
ピノキオ婆さん。
彼女は作家だった。
ある日から、不思議なことが起きる。
夜になると、
天井の小窓から
一枚の原稿が、ひらりと落ちてくる。
そこには、
ちょうど人々が求めている物語が書いてあった。
可愛くて、少し残酷で、
現実を掠めるけれど踏み込みすぎない話。
婆さんはそれを
ほとんど手を加えずに清書し、
世に出した。
たちまち大バズり。
「天才!」
「時代を掴んでる!」
「このリアリティがすごい!」
金も名声も集まった。
婆さんは思う。
(なるほど、わたしは選ばれたのだ)
鼻が、すこし伸びる。
原稿は毎晩落ちてきた。
婆さんは豊かになり、
塔はさらに高くなる。
やがて彼女は決断する。
「これだ!映画だ!
世界を揺らす大作にする!」
莫大な金を投じ、
巨大なスクリーンを建てる。
その夜。
いつもの時間になっても、
原稿は落ちてこなかった。
次の夜も。
その次の夜も。
天井は、静かだった。
婆さんは初めて、
自分で原稿を書こうとする。
しかし――
何を書けばいいのかわからない。
彼女は焦る。
「これは深い話だ」
「これは伏線だ」
「これは革命的だ」
そう言い聞かせながら、
必死に嘘を編む。
鼻が、ぐん、と伸びる。
完成した映画は公開された。
観客は集まったが、
途中で帰る者も多かった。
「なんか違う」
「前はもっと自然だった」
「狙いすぎ」
誰も怒らない。
誰も炎上させない。
ただ、静かに離れていく。
総スカン。
塔は維持できなくなり、
婆さんは元の小屋へ戻る。
伸びきった鼻は、
重みで折れ、
ぽとりと地面に落ちた。
小さな、短い鼻に戻る。
その夜。
ひらり。
久しぶりに、一枚の原稿が落ちてくる。
婆さんは震える手で拾う。
そこには一行だけ書いてあった。
「自分で書きなさい。」
婆さんは長いこと、その紙を見つめていた。
Is
it
One
Heart ?




