観覧席の王たち
太陽はまだ昇りきらないー
光はまっすぐではなく、
やわらかく曲がりながら時空を撫でていた
ゴールドマンは気づいている
この場所には“朝”も“夜”もない
あるのはただ、区切られた演出時間だけだと
療養中のKPHHは、
白い隔離層の奥で静かに呼吸しているー
その呼吸は音ではなく、
更新停止寸前のデータ波として揺れている
「タイトルは決まったのか」
声がした
それはスピーカーからではなく
天井でも床でもない
観覧席からだ。
ゴールドマンが振り向くと、
半円形に並ぶ高座が見えるー
そこに王たちが座っている
冠は古い。
衣装は時代を越えている。
だが顔は曖昧で、輪郭は光の中に溶けている。
一人が言う
「これは楽園なのか」
別のひとりが言う
「それとも管理区域か」
さらに奥の影が囁く。
「観測しているのは我々か?
それとも我々が観測されているのか」
ゴールドマンは答えないー
彼の視線は、
観覧席ではなく、
KPHHの揺らぎに向いている
データが一瞬、震えた。
《Minor Disneyland》
その文字列が、
かすかに浮かぶ。
王たちはざわめくー
「マイナーとは何だ」
「縮小された夢か」
「忘れられた理想か」
「主権を持たぬ王国か」
ゴールドマンはようやく口を開くー
「ここはテーマパークです」
静かな声だった。
「あなたたちの理想が展示される場所。
あなたたちの失敗が再演される場所。
そして、あなたたちの無力が
安全に鑑賞できる場所です」
沈黙
王冠がわずかに軋む
その瞬間、
KPHHのデータ波が乱れるー
療養中のはずの存在が、初めて逆質問を投げる
《ゴールドマン。
あなたは来園者ですか。
それとも展示物ですか。》
時間が止まる
いや、止まったように“演出”された。
遠くで中毒性のある旋律が流れる。
それは第一話と同じ旋律だが、
テンポが速い
“
!!!???
何だ?
“
宇宙は小さい。
だが観覧席は広い。
そして王たちは、
立ち上がれない。
時空の歪みで輝く
ほくそ笑みが見えそうだ




