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赤味噌派と白味噌派に、お澄まし派の私

作者: 白夜いくと
掲載日:2025/10/04

『秋の文芸展2025』参加作品です。

◎テーマ「友情」

「赤味噌に千切りキャベツと七味で決定だね」

「いやいや、コクのある甘さの白味噌に辛子からしやろ」

「そんなわけ無いだろ」

「何や喧嘩売っとんのか?」


 赤味噌派の鬼道きとう君。白味噌派の鶴尾つるお君。彼らの口喧嘩はいつも食べ物のことばかり。特に汁物についてが多い。


 あ。私はどちらかと言えばお澄まし派です……とも言えず。二人の喧嘩を黙って見て居た。二人は語る。


「正月の白味噌の中にある金時人参の美味しさはやばいで。餅も味噌絡んで甘くてとろとろで旨いんや」

「赤味噌は薄揚げと一緒に絹豆腐を入れてやると分かる。塩っぱい中に甘さも感じる。白味噌みたいにクドくない」

「なんやてー!?」


 二人はしばらく言い合っていて私に入る隙がなかった。喧嘩を一通りし終えたあと、二人はその場に棒立ちして愛想笑いしている私を見てうた。


『白と赤。どっちが良いと思う』


 この雰囲気で「お澄まし」と言える勇気はない。場違いな野球の応援会場に居る時のような気持ちになった。


(お澄ましの中に三つ葉と薄切りかまぼこが好きなのだけど……)


 京都のお婆ちゃんがよく作ってくれた味だ。偶に三つ葉から出てきてはいけないものが出てきて発狂したっけ。


 そんな話をやりたいものの、二人の会話のベクトルと私の話したいベクトルが微妙に違う。あまり自分語りをすると嫌われるかもしれない。


 だから、「拘りはないかなぁ」と曖昧な返答をしてみる。二人は「そうなの?」と少し眉を下げて言った。気に食わないことを言ってしまっただろうか?


なぎさんは白味噌が似合う感じがすんねんなぁ。甘い豚汁とかも好きそうや」

「いや。凪さんは好物大根煮たやつって言ってたよね。薄切り大根が美味しいよ、赤味噌は」


 えーと……、

 私はどう反応するのが正解なのかな。私の選択次第で二人の喧嘩を止められるのか。それともしこりを残してしまうのか。


(責任重大だ……)


 私はある方法を考えた。


「味噌汁エピソードを聞かせて! 魅力的な方に一票入れるわ!」


 鬼道と鶴尾は互いに腕を鳴らしつつ、味噌汁エピソードを語った。


「まず俺からや。コホン、やっぱり実家の味やからかな。鶴尾家には代々使われる白味噌があってそれがめちゃくちゃ美味い」


 うーん……普通かも。

 とは言わずに、次は鬼道の味噌汁エピソードを訊く。


「凪さんは憶えてないかも知れないけど……食券が壊れてて、君から笑顔で貰った赤味噌が美味しかったから……」

「鬼道の告白なんか聞きとーないわ、あーいややいやや」


 『告白』という言葉に顔を赤くしていると思う。でも、私の中では友達なので、やんわり断る。鬼道がしょげた。


「鬼がこうべ垂れてる!」


 心底嬉しそうな鶴尾。

 彼は言う。


「失恋したならお前も白味噌派になれば良い」

「……うう」


 鬼道は頭を抱えながら唸っている。私はフォローのつもりで言った。


「大丈夫! 私、お澄まし派だから!!」


 二人は目をパチクリさせて「お澄まし……」と繰り返し言った。

 

 私はお澄ましが「スッキリした飲み心地で、三つ葉とカマボコだけで十分美味しいんだよ」と力説する。二人は、競うように携帯でお澄ましについて検索していた。


(友達から彼氏ができることってあるのかな?)


 もし私が三つ葉を切ってて邪悪なる存在に襲われたら、洗い流してくれたり退治してくれたりすると頼りがいがあるんだけどな。


 ……でも、やっぱり二人とはまだ、友達で居たい。この距離感が楽しいんだもん。


「何や?」

「どうした?」


 二人の声が重なる。それが面白くて、つい笑ってしまった。


「ううん、何でもない!」







 おしまい

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― 新着の感想 ―
味噌汁をめぐる会話のやりとりがとても温かくて、読んでいて心が和みました。 何気ない日常の中に「友情」がしっかり描かれていて、テーマにぴったりだと思います。 登場人物たちの掛け合いも自然で、読後に優しい…
 微笑ましい三人組が読んでて楽しかったです(`・ω・´)ゞ 「三つ葉」が物語のいいアクセントになってますね。  ありがとうございました。
うちの三つ葉ゾーンは、この時期アゲハチョウの幼虫に食べられちゃいます。 ん~でも、そんなに大量発生するわけじゃないし、カワイイから許してます。 にしても。味の好みが合わない人は、難しそうかな…(^_^…
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