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怒りのアーサー

「クソッ! なにが国の危機だ!」


 アインヘルムの王城の中、廊下を歩きながら俺は我慢できずに叫んでいた。


「ア、アーサー、落ち着けよ」

「そ、そうよ、アインヘルムが落とされたら、私たち帰る所なくなっちゃうのよ?」

「その国を守るのが王の仕事だろ! これだから権力だけの無能はイラつくんだ!」


 勇者として魔王討伐のため旅だったアインヘルムから、俺はいきなり戻ってこいとの命令を受けた。


 バラバラだった魔物たちが急に知性を持ったように集まり軍となり、攻めてくるから迎え撃てだとか抜かしていたが、集まったなら一気に潰す好機だというのを知らないのか。


 せっかくライアの奴を追放してスッキリしたと思っていたのに最近は腹が立つことばかりだ。


 たたでさえ、どうでもいい洞窟やら森やらに寄るのが面倒で苛立つというのに、騎士団が弱体化しただの、逃げてくる民衆を収容しきれないだの、俺からしたらどうでもいいことばかりが足を引っ張っている。


 苛立ちのあまり、玉座の間の扉も力づくでバンと開いた。


「国王! この俺を呼び戻したんなら、即刻やり返すんだよな!?」


 玉座に座る国王も、騎士も、俺を前に視線を泳がせていた。


「ま、まぁ、まずは無事に戻ってきてくれたことに礼を言わせてくれぬか」


 冷や汗を拭いながらほざく国王へ、なにが無事に戻っただと怒鳴り返してやる。


「この俺が魔物どもに背中を向けたからって傷でも負うと思うのか!?」


 俺の怒声に、国王は必至に首を振った。


「いや! いやいや思わん! だが、他の者は疲れているようだがのう……」


 後ろに控えているレオンとエレナ、それからシエルのことだろう。

 何頭も馬を潰し、雨が降ろうが走り続けてきたので、すっかり疲れ切っている。


 シエルはヒーラーということもあり、どうやら常に回復魔法をかけているようなのでシャキッとしていたが、レオンとエレナは目にクマができている。


 有能だと思っていたが、所詮はこの程度なのだ。

 シエルに回復魔法をかけるように命令したが、使った状態でこの有様だと抜かした。


 どいつもこいつも、勇者であるこの俺の足ばかり引っ張る無能だ。

 今では、すっかり俺を怒らせないように機嫌を取ろうとしている。


「申し訳ありません……私の回復魔法がもっと上達していれば……」

「チッ……シエル、お前はまだマシな方だ」


 旅のはじめこそ回復だけの役立たずだと思っていたが、ライアを追放した翌日からやけに根性を見せるようになった。


 一度レオンが深い傷を負った時、もう死ぬだろうと思っていたら、治してみせたのだ。


 闇の魔力の浄化といい、シエルは有能だ。

 それだけに、残り二人の無能っぷりが浮き彫りになった。


 これからの戦いで不要だ。

 そんな考えを浮かべつつ、国王へ睨むように視線をやる。


「で、どうやって迎え撃つ」

「う、うむ、騎士団にはいつでも戦えるように指示を出しておる。じゃが、魔王軍が各地に送ってくる魔物との戦いで、騎士の装備も体調も崩れてきておるからのう……」


 怒鳴り返そうとして、違和感を覚えた。

 騎士団の弱体化といい、騎士を派遣させるような場所へ魔物を送る事といい、なにか今までと違う。


 魔王や一部の魔物に知性があるのは知っていたが、こんな策を思いつくか? 

 思いついたとして、なぜもっと早くやらなかった。


 それこそ、俺が勇者に選ばれる前から魔王はいたのだ。

 騎士団が対応していたらしいが、その時から弱体化は出来なかったのか?


「ああクソ! 俺は勇者だぞ! なんでこんな面倒なこと考えないといけねぇんだ!! いいから自由に戦わせろ!!」


 叫ぶと、国王を指差した。


「俺が先陣を切る!! 騎士団には疲れてようが武器がなかろうが戦う準備をさせろ!! 明日には打って出るぞ!」


 急すぎると国王は声を荒げた。だが知ったことか。勇者の命令が聞けないのなら、敗北するだけだ。


「それからレオンとエレナ!! お前たちはもういらねぇ!! 精々騎士団と足踏み揃えてろ!!」


 そんな! と二人は見捨てないでくれと懇願する。

 所詮は他の雑魚より少し強いだけの奴らだ。聞く耳など持たない。


 だが、シエルだけは違う。ビクッとしているシエルへ、やることを伝える。


「俺にビビッて、横から突っこんでくる魔物がいる。闇の魔力の浄化もお前と、あと国でも何人かにしかにしかできない。回復魔法も含めて柔軟に動け」


 具体的には、と聞いてくるが「いいからやれ!」と怒鳴った。


 本当にイラつくことばかりだ。

 どんな奴が手を回しているか知らないが、見つけたら生きてるのを後悔させてやる。

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