エピローグ
「加納君って、私のこと好きじゃないよね」
一年の終わりを感じる師走の中盤、僕は彼女に振られた。この女は一体何を言ってるんだ、皆目検討もつきやしない。
今日だって、下品なほど輝く電飾達で飾り付けられた木々を見たいと言ったのは君じゃないか。
反論をする間もなく彼女は足早に僕の元を離れてしまった。なんて言えば良かったのだろう、なんて言って欲しかったのだろう。
電飾で彩られた街並みをスタスタと歩き去る彼女を見て、僕は考える。もっと愛を伝えていれば、或いはもっと高価な飾り物でも貢いでおけば‥いくら考えても答えは出せない、出せるはずがない。
街路で呆然と立ち尽くす僕。それを見た電飾達は小馬鹿にするように点滅を繰り返していた。
時刻は21時を過ぎ、気温はより低下し始めた。凍てついた空気を左手で感じる。数分前まで温もりを感じていた手、それがすっかり冷え込み無様な程に赤くなっている。しかし、そんなことはどうでもいいのだ。
今は一刻も早く、こうなった原因を探らねばならない。躍起になる僕、馬鹿なくせに一生懸命結論を導こうとしている。でも、もう遅い。もう、後の祭り
気づいた頃には彼女の後ろ姿は街路に吸い込まれて 跡形も無くなっていた。