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成り行き④

Rと呼ばれた男は、アキト達に近付きつつ言う。

「めんどくせぇ事に・・俺は今回お前の教育係になっている・・・」

OとUが立ち上がり、

アキトも立ち上がらせると

Oが言う。

「・・Rの旦那、こいつは結構骨が折れると思うぜ・・・」

ピキ!ドサ、ドサ。

その時モルトフの手を拘束していた

土属性の効力が切れたのか、

ヒビが入り壊れると、モルトフの腕が地面に落ちた。

それを見たアキトは、先ほどまでの光景を

フラッシュバックさせ、顔を青ざめ、

情けない表情を浮かべた。

「・・ハァー・・・まぁ、やらかしたヘマ具合と、この面ぁ見れば何となくわかる・・」

Rはヤレヤレと言わんばかりに

黒い手袋をした手で頭を掻きながら

Oの言葉に答える様に言うと続ける。

「T、お前の武器を地面に置け・・・宿のマスターを殺した剣だ・・」

「え!?・・ぶ・・剣を?・・・」

アキトは意図がわからずRに聞き返すと、

頭を掻いていた手がピタッと止まった瞬間、

アキトの顔目掛けて拳が飛んだ。

ドカ!

「がっ!」

ドサ!

殴られて倒れたアキトが怒りの表情で顔を上げ

Rに言う。

「何し・・」

「いい顔出来んじゃねぇか」

その瞬間Rはしゃがみ込んでおり、

アキトの顔の目の前にRの顔があり、

アキトの言葉にかぶせる様に言った。

OとUがアキトを立たせつつ言う。

「T、言われたように武器をおくでさぁ・・」

「自分で理解する前に動けるようにならねぇと、身が持ちませんぜぇ」

アキトは怒りの表情のまま

自身の武器を乱雑に地面へ叩き落した。

「これで良いのか!」

Rは薄笑みを浮かべつつ言う。

「お前がクヨトウの南街でやらかした事件は、既に“リベロット”の事件として捜査が始まっている、仮面をつけ旧式の魔道具を使ったから当たり前ではあるが、この状況をZは良く思っていない、だから・・・」

Rは兵士たちが片づけているモルトフの遺体に

視線を移し続ける。

「それを主導したアレはあーなった・・・」

Rはおもむろに足をあげると、

勢いよくアキトの剣を踏みつけた。

バギンッ。

「な、何をする!」

自身の剣が折られ、

Rに掴みかかりそうになるアキトを

OとUが両脇から抑えると、

Rは言う。

「お前にとっては幸運だったな、“リベロット”が隠れ蓑になり捜査の手がお前に届いていない・・・が、あそこにはエクード・プランプが居る、念には念をだ、証拠となりえる凶器はここで処分・・・文句は言わせない」

「・・・」

アキトの身体の力が抜けるのを感じ

OとUが手を離すと、

Rは続ける。

「代わりに新しい武器をやる、“空間魔法・展開”!」

Rが魔法を発動させると3mほどの魔獣の死体が

背後に現れ横たわる。

「今から言う事を良く頭にたたき込め、それが真実だと思い込むぐらいにな」

「?」

アキトが頭に?を浮かべていると

Rは続ける。

「13日午後、OとUに声をかけられたお前は、3人でタービへ転移した後、オファククの北街へ移動、翌日14日、そこの公営ギルドA型事業局でこの俺と合流し臨時のパーティーを組みRKWコロニー跡遺跡へ潜っていた・・・」

Rはそう言うと、剣の鞘をアキトへ投げた。

反射的に鞘を受け取ったアキトが言う。

「・・これは?・・・」

Rは背後の魔獣を指さし答える。

「そいつの側頭部に剣が刺さっているだろ、この魔獣ごとお前にやる、遺跡の戦利品アリバイの証拠として解体買取に出せ・・・念のためにな」

OとUが補足するようにアキトへ語り掛ける。

「Tの旦那、わかりやしたか?謎の組織リベロットの事件になってはいるものの、時を同じくして俺たちゃ姿をくらましてんだ」

「ベネー辺りはそう言うのに感が聞くでさぁ、俺達が居なかった理由とRの旦那が同行して戻ってくる理由もこれで成り立つ」

アキトは徐々に理解していた。

少なくともR達は自分の敵ではない、

自分を擁護し仲間として迎え入れている。

かの有名な犯罪組織“リベトッロ”のメンバーとして。

デカい顔をしていたモルトフは今や生ごみ。

コードネームすら貰っていなかったが、

自分はティーを授かった。

そう思うと、アキトは、

知らず知らずに歪な笑みを浮かべていた。

「(・・Zの言った通りか・・・こいつは鍛えがいがある・・・)」

Rは心の中でそう思うと、

3人に促すように話を切り出した。

「・・ついてこい、ここ本拠地を案内してやる、大事な注意事項も兼ねてな・・・モルトフみたいにはなりたくないだろ?」

Rが歩き出すと、

3人は後ろをついて歩いて行く。


~異世界メジューワ、リデニア国首都クヨウトウ南街~

~S&S社~


「・・・・・」

ミノアは困惑していた。

かれこれ約一時間、

誰も何処へも行こうとせず、

それどころか不可解な光景が広がっていた。

ミノアが食堂のソファーに視線を送ると、

そこにはうつ伏せにダラケ、

力なく横たわるミュウが居た。


~回想~


ミノアがナトス達と別れ、

3階へ上ってくると、

突然大きな声が響く。

「えぇぇぇ!!そんなに!?」

「・・えぇそうよ・・・」

驚愕のあまり立ち上がり、

声をあげたミュウに、

落ち着いたソロルがそう言うと

フラフラと歩きだし

ソファーへ倒れ込むように横になった。

「(え?何?)」

ミノアがそう思っていると、

ミュウが呟く。

「・・・しゅ、就労意欲が失せたのです・・・」


~回想終~


「(・・ミュウはそれっきりあのまま動かない・・・)」

ミノアが屋上の真ん中あたりに視線を送ると、

何処から持ち込んだのか、

ビーチパラソルに屋外用テーブル、

そして2つのビーチチェアーに座る

ユナとピューネが見える。

ジューーーッ。

「これが大人の女・・・カッコイイ・・・」

ジュースをストローで飲む

サングラスをかけたピューネが

ユナへ言う。

「だろ、どんな男もイチコロ、密に群がる蜂のごとく寄ってくんだから♪(って本に書いてあった)」

それを眺めるミノアは思う。

「(・・・アレが一番意味わかんないや・・・)」


~回想~


「・・・しゅ、就労意欲が失せたのです・・・」

「(い、一体何が?・・・)」

ドドドドド。

「ピューネちゃん!買って来たぜ♪」

階段を駆け上がり、

ユナが食堂へ入って来た。

「あっユナさん!さっき見つけたもの全部並べといたよ♪」

「ナイスゥー!一式揃ってる、姉御の趣味か?まぁ良いや、準備してレクチャー開始だ♪」

「はい!・・でも良いの?私の分まで・・・」

「いーのいーの♪ヤバイ臨時収入あるし、問題ないって」

ピューネは満面の笑みを浮かべ思う。

「わぁ♪(これで男を誘う女の階段を登る・・・)」

ピューネは食堂に来ているミノアに視線を向ける。

それに気づいたミノアはピューネと目が合うと

軽く手を振って見せた。

「(・・な、何が起こってるんだろ・・・)」

「(ミノアを刺激し、さ、誘う・・・)」

ピューネは意気込み、

ユナに向かって頭を下げる。

「ユナ師匠!よろしくお願いします!!」


~回想終~


ビーチチェアーに座る

ピューネとユナは思う。

「(早くミノアが寄ってこないかなぁ・・・)」

「(優雅だ・・ナトスにも開放された、優雅な休暇・・・)」

それを眺めるミノアは思う。

「(ち、近寄らない方が良さそう・・・)」

ミノアはアンプレスに視線を向ける。

入念に武器である槍斧を手入れするアンプレスに

ミノアは質問を投げかける。

「ねぇアン、みんな長い事この場に居るけど、何処かに出かけたりとかしないのかな?ミュウ何て死んでるように動かないよ」

アンプレスはその質問に笑顔で答える。

「はははは、冒険者の習性みたいなもんだよ、昨日みたいに遺跡に潜ると2、3日何もしない冒険者は多い、特にソロルパーティーみたいに実入りが良いとなおさらだ」

「実入り?」

「収入さ、何でも300万レアリーを超えていたみたいだぞ・・・それに比べ俺は死ぬ思いして20万レアリーだ・・・ま、売れそうな素材しか持ち帰らなかったからしょうがないが、空間魔法持ちが二人も居るとこんなに稼ぎが良くなるとはな」

アンプレスは槍斧を壁に立てかけると、

ミノアの迎えに座り続ける。

「リーダーのソロルがそれを綺麗に山分けするって言ったら、ミュウはあぁなった」

「はははは・・・それで意欲低下ね・・・」

ミノアが苦笑いを浮かべ言うと、

アンプレスは屋上の二人に視線を向け

続ける。

「・・あの二人は・・俺も良くわからん、妹がユナに変な影響を受けなければと思うが・・・近づかない方が身のためだろ・・・」

「ははははは・・・」

「・・もう、どこ行ったんだろおじいちゃん・・・」

ミノアとアンプレスの元へ

下の階から上がって来たソロルが

ぶつくさ言いながら近づいてきた。

「ん?どうかしたの、お姉」

「ん~おじいちゃんが屋敷にも職場にも居なかったんだよね、ピューネちゃんの件を相談しようと思ったんだけど」

「妹の件を?・・(ソロルの祖父だと!あ、挨拶に行かねば・・・)」

その問いにソロルが答える。

「そっ、私たちは冒険者でしょ、何処かで必ず任務を受けたり、遺跡で稼がなきゃいけない、その時にピューネちゃんを連れて行けないでしょ?その時その時の成り行きじゃ記憶の件もあるし不安なんだよね・・こういう時はこうするって決めておきたいのよ・・・」

それを聞いたアンプレスは、

自身にも思うところがあるのか

しばし考え言う。

「・・・実は、俺は今回の“武闘大会”に挑戦者側で出場しようと思っている、どうせこのままでも招集がかかるだろうし、ならなおさらSランクを目指したいと思っていた、AからAプラスワンへ昇格するための任務や大会期間中、妹の件をどうすべきかと悩んでいた・・・」

それを聞いたソロルが追従する。

「まぁそう言う事よ、当然私だってピューネちゃんの事は面倒みるつもりだよ、記憶や啓示の件とは別にしてものね、でも冒険者家業って危険と隣り合わせ、何か対策をって思ってたの」

そこまで話を聞いていたミノアは言う。

「・・・それなら僕と兄さんを頼ったら?それに、あの兄さんの事だからすでにその辺も考えがあるかも」

「・・そうも思ったんだけどね、あなた達だって仕事があるでしょ?現にナトスは仕事に出かけてる・・・あなた達の負担にもなりたくないの」

そう言うとソロルはミュウとユナを見て続ける。

「まっ、ソロルパーティーはすぐすぐ活動しなさそうだし、おじいちゃんと連絡取れるの待つわ」

それを聞いたアンプレスは言う。

「祖父に会う時は俺も同行させて欲しい、妹の件だしな!(ソロルの家族に挨拶せねば・・・)」

「・・なんか別の意図を感じるし、一つ大きな懸念もあるけど・・・まぁ確かにそうね」

ソロルが微妙な表情で返答すると、

アンプレスは小さくガッツポーズをした。

「あっ、そうだ」

ソロルが何かを思い出したように声をあげると

懐をゴソゴソと探り、お金を取り出した。

「はい、ミノアの分、そして・・これがナトスの分」

「あれ?またお小遣いくれるの?・・・」

ミノアが困惑したように言うと

ソロルは焦りつつ照れたように言う。

「べ、別に気にしなくて良いのよ!昨日の買取の内訳にナトスが倒したワイドライトも含まれてるし、ミノアのヒントのおかげでシャリがバジャードッグを倒せたとも思えるし・・・あれよ、お小遣いって言うより取り分よ取り分!あなた達だって給料もらうまでお金ないでしょ、可哀そうだなぁってね・・だからホント・・これナトスにミノアから渡しといて、あいつは性格悪いし色々言ってきそうだし、めんどくさいし、ギャフンと言わせなきゃだしさ・・・ほんと気にしなくて良いから」

ミノアはソロルの勢いに苦笑いを浮かべつつ、

素直に答えた。

「わ、わかったよ・・ありがとう、お姉」


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