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変態と狂人②

~昨日~

~サキュリフィー邸~

ヴィーロは、王将らのもとで話を聞いた後、

シェンターの鞭撻・激励に答えるよう

直ぐにベネーから話を聞いた。

「・・そのような施設が・・」

「世界冒険者協会認定調査員からの情報です間違いないかと・・」

「そうか、教授が確定的と断言したのも頷ける・・・ベネー、一時間後今後の打ち合わせをしたい、信頼できる者数人と俺の執務室に来てくれるか?」

「えぇ、今からでも構いませんよ?」

「・・いや、調べておきたい事がある」


~一時間後~

~クヨトウ公営ギルドS型事業局・執務室~


ヴィーロとベネー、リヴリラとレイミーナの

4人と他3名の男性が一堂に会し、

南の樹海遠征の件を協議していた。

「っという事で、本来の目的はその施設の裏取りにある、実際に高レベル魔獣の報告があるのも間違いないが、体よくそれを隠れ蓑にした形だ・・」

一同「・・・」

困惑する表情を浮かべる皆に

ヴィーロは続ける。

「現在のリベロット本拠地の可能性もある、この地下施設の話はここに居るメンバーのみが知っている・・せっかくだ、初対面の者も居るだろうし自己紹介を、エンゾから頼む」

「はい、ヴィーロパーティー魔法士エンゾ・シルバールだ」

ヴィーロから指名されたエンゾが答えると

隣の男が続ける。

「同じくヴィーロパーティー狩人のアリドゥ・アンディノと言う、斥候も担っている」

「俺はタイラー・リカイオス、魔導剣士として超攻撃型ヴィーロパーティーのアタッカーを務めています!」

ヴィーロ側に座っていた男が挨拶を終えると

ベネー側に座るリヴリラが続く。

「私はベネーパーティー魔法士、リヴリラ・フォーブスです、宜しくお願い致します」

「あ・・えっと、私はベネーパーティー治癒士のレイミーナです!」

最後にレイミーナが挨拶すると、

タイラーが調子よく語り掛ける。

「いやぁ~いいなぁ~綺麗なお花がいっぱい♪お花畑みたいです!・・それに比べこっちは・・ごつい筋肉集団・・しかもオッサンだらけ・・」

「うるさいぞタイラー」

ゴツン!

「イテ・・」

タイラーの頭をアリドゥが殴ると

ヴィーロが疑問を投げかける。

「今ベネーパーティーは3人なのか?増員などは?」

それにベネーは答える。

「いえ、そう言うわけでは、4人目の彼はまだ若く、重大な任務と知らない方が能力を発揮できると思いこの場に呼んでこなかったのです」

それを聞いたタイラーが騒ぎ立てる。

「彼だって!このパーティーに男が一人!!?何て羨ましい奴なんだ!!」

「騒がしいって言ってるだろタイラー!!」

ドシン!

「グホッ!!」

タイラーはエンゾの蹴りで

壁まで転がった。

「・・た、体育会系のノリ・・最高っす、先輩方・・」

タイラーにドン引きするベネー達に

何事も無かった様にヴィーロは続ける。

「取りあえず、施設の話はここ以外では厳禁だ、その者も含め遠征に参加する他の23名は知らない事、他言しないように」

エンゾが呟くように質問を飛ばす。

「・・それほどの施設が地下に・・建造できるものなのでしょうか・・」

「・・確か地下建造技術はコパローナが発祥・・そこから世界に広まりはしたが、そこまで大掛かりな物は見たことも聞いたこともない・・」

アリドゥが続くと、

ベネーが答える様に語りだす。

「しかしそれは間違いなく有ります、魔獣の巣窟と化したRKWコロニー跡地に・・」

「実はその魔獣が一番のネックだ・・アリドゥ」

ヴィーロがベネーに続くと、

アリドゥに何かの合図を送る。

「はい」

アリドゥが1枚の紙を出すと

ヴィーロは続ける。

「魔獣が多すぎる場合、施設の入り口を見つけるのも簡単じゃないだろう、その場合一旦近場に野営の為の基地を作る・・そして魔獣殲滅作戦へ切り替える事になる、広く近隣の冒険者も公募するのが自然・・・」

「・・・確かに、高レベル魔獣捜索遠征でたまたま魔獣の巣窟を発見・・そこで殲滅の為に冒険者らを公募するのは自然な流れ・・それをしない方が不自然に感じます・・」

「そうだ・・そうすると、この地下施設に関わっている人間は気付く、遅かれ早かれその存在が明るみになると・・だから先手を打たせてもらう・・」

ヴィーロはアリドゥの出した紙に

視線を移し続ける。

「こいつだけは絶対に逃がさん・・」

「・・(ガイン・トラフォール・・・アキト・・・)」

ベネーもその書面にある名前に気付く。

「トラフォール家の人間・・その名前?・・」

レイミーナがそう言うと

アリドゥが補足する。

「逃走や妨害、証拠隠滅などの恐れがある人物として名の上がった、トラフォール家当主とその子供3名・・現在の対応と報告です」

「アリドゥ、読み上げてくれ」

「はい」

ヴィーロに促され

アリドゥが続ける。

「オファクク地区ギルド局局長ガイン・トラフォールは、現在もオファクク中央に居り、世界冒険者協会協力の元既に監視下にあります、怪しい動きがあれば適当な罪状で取りあえず拘束等してここへ連行する手はずになっています、これは長男カナタ・トラフォールも同様の様です、オファククの東街で既に監視下にあるようです」

「うむ・・要職に就くその二人は監視下に置きやすいと思っていた、派手に動く事も出来んだろうしな・・問題は他の二人だな・・」

ヴィーロの言葉に

アリドゥは頷き続ける。

「おっしゃる通りです・・まずはユート・トラフォールですが、本日朝からランクアップ任務を遂行する為“デンスティア”へ入ったようです、最後に目撃されたのは中継拠点、そこにパーティーメンバーの二人を残し、まだ戻っていないと」

「監視下に無いという事だな・・」

アリドゥが続ける。

「最後にアキト・トラフォールですが、今日の昼過ぎにクヨトウ南本店に解体買取で訪れたようです、しかしその後の足取りが全くつかめていないと、近隣の宿泊施設は軒並み営業していない事も有り現在どこに居るのかわからない様です、引き続き黒岩なども含め探している状態です・・」

そこまで話を聞いたヴィーロは

椅子に深く座りなおすと呟く。

「・・・やはりその二人か(・・特に実力者として名高いユート)・・」

それにベネーも続く。

「明後日の作戦決行時までに二人も監視下に置いておいた方が良いでしょうね・・」

「そうだな・・多少強引な方法だが仕方あるまい・・エンゾ、安全保障部に働きかけ、宿泊施設の営業再開を促してくれ、アキトが拠点として利用するかもしれん」

「わかりました、すぐにでも」

「アリドゥ、ユートが戻り次第ここへ連行して欲しいと協会の協力基に伝えてくれ」

「れ、連行!?ざ、罪状はどんな?・・・」

「そんなもんあれだ、その場の雰囲気で何でもいいが・・」

「ちょ、ちょっと待ってください、多少って言うかかなり強引な感じが・・」

「まぁまぁ、それとあれだ、俺が直接尋問するぐらいの罪状が望ましいとだけ付け加えてくれ」

「えーーー!!!」


~現在~

~クヨトウ公営ギルドS型事業局・尋問室~


姿勢を正し、真っすぐ前を見据えて

座るユートの前にヴィーロは腰を掛ける。

ヴィーロはユートへ語り掛ける。

「・・さて・・コハキの北街、民間ギルドB型事業局、オーバー・ザ・リミットのメインパーティーリーダー、Aランク冒険者ユート・トラフォールだな?」

「・・・そうです」

不満そうに答えるユートに

ヴィーロは机の下で何かをコツコツ

叩きながら続ける。

「・・俺はヴィーロ・トレヴィーノ、クヨトウ地区ギルド局局長で」

「ここS型事業局のギルドマスター・・存じています」

「・・・そうか」

コトン。

ヴィーロは上皿天秤の様な魔道具を

机の上に置くと続ける。

「これは“嘘の重責”と呼ばれる魔導具だ・・見ての通り青い上皿が上にあり均等が取れていない、赤い上皿が重いという事だが、この魔道具を前にして嘘をつくと、青い上皿が重くなり、赤い上皿が上部のガラス球と反応し赤く光る・・・」

「・・・」

黙って話を聞くユートに

ヴィーロは続ける。

「俺の質問に正確に真実を答えろ、もし虚偽が判明した場合、牢獄へ戻し安全保障部へ引き渡す・・良いな?」

「問題ない、むしろこれで私の話が真実であると証明される、私は只々真実を話せばそれでいい・・」

「・・・そうだな」

ヴィーロは報告書の束を取り出すと

尋問を始める。

「まず最初に女性について聞かせてもらうか・・」

「・・・」

「・・着衣も乱れ、泣きながら怯えた彼女に何をした?」

その言い方にムッとしたユートは

少し感情的に反論する。

「何もしていない!!あなた方が疑っているような、私が無理やり女性をなん・・」

ファーン・・

魔導具が反応し赤い上皿が上部のガラス球を

赤く光らせていた。

「な、なぜ・・私は嘘など言って・・」

「・・落ち着けユート・・」

コンコン・・

ヴィーロが魔導具をノックすると、

天秤が動き元の状態に戻る。

困惑するユートへヴィーロが語り掛ける。

「俺は質問に正確に答えろと言ったろ?・・“彼女に何をした?”と聞いたんだ、“無理やり猥褻な行為に及んだのか?”など聞いていない、もう一度聞く彼女に何をしたんだ?“何もしていない”なんてことは無いんだろ?」

ユートは落ち着いて思い出しながら答える。

「・・私は・・彼女を保護しただけです・・“デンスティア”の中継地点、それよりも更に奥地に一人でいた彼女を助け、連れ帰りました・・」

・・・。

反応を示さない魔道具に

ユートが心を撫で下ろすと、

ヴィーロも視線を魔導具に向け続ける。

「・・うむ、今の言葉は真実の様だな・・だが、それだけではお前に掛けられている嫌疑は晴れていない、安心するのはまだ早い」

「嫌疑?・・・」

「確かに彼女は一人でいたのだろう、それは“誰か”の指示で、人目を避けそうしていたのかもしれない・・確かに彼女は魔獣に遭遇し危機に面したのだろう、しかしそれは想定外、合流地点でそれを見た“誰か”が彼女を助け、連れ帰る事で保護する形になった・・」

「・・なるほど・・」

ヴィーロの話を聞いていたユートは

納得した表情で続ける。

「女性に対する強制猥褻・暴行の罪状にしてはあまりにも物々しいと感じていました・・わざわざギルド局長が尋問する為ここまで連行するのか?と・・しかし、その嫌疑をかけられているのなら納得です、私が、単独遂行が条件のランクアップ任務に協力者を準備し、不正に受注したと、そう思われているのですね?」

「・・違うと言うのなら、改めて聞こう・・・ユート・トラフォール、お前は任務において不正を働いたことはあるか?」

ユートは質問の意味を理解し

姿勢を正しながらヴィーロを見据え

自信を持って答える。

「一度もない!今回の任務においても、当然今まで受けた任務においても、私が不正を働き自身のランクを上げたことなど無い!」

・・・。

反応しない魔道具を見て

ヴィーロは一瞬笑みを浮かべた。

「・・(フ・・まぁ当然か・・取って付けた強引な罪状・・・思った通り、彼は他のトラフォール家関係者と違う、実力に伴うランク・・ガインやカナタの様に権力に媚びされた不正も無い・・しかし確認は必須・・リベロットとの繋がり・・・)」

「・・ヴィ、ヴィーロ局長・・」

何も言わないヴィーロに

痺れを切らしたユートは続ける。

「こ、これで私に対する嫌疑は払拭されはず・・ほかに何か気になる点でも?・・」

その問いにヴィーロは

おもむろに答える

「・・実は、お前が保護した女生から先に、尋問聴取を行った・・はっきり言って彼女の証言は虚偽隠蔽にまみれ、現段階で殆ど把握できていない・・」

「虚偽隠蔽!?なぜ彼女が?・・いったい何者なんですか?」

ヴィーロとユートの言う女性は、

コパローナの有力者、

バルサトレ家女執事ジュニ。

ラーコスの能力で消された執事だった。

「名前はジュニ、職業は執事・・出身はラジーリャのようだ・・」

「ラジーリャの執事・・服装から執事だとは思っていましたが・・」

「正直それぐらいしかわかっていない」

「・・執事なら、それなりの権力を有する上流階級に仕えているはず、ラジーリャ国内で行方が分からない者が居ないか直ぐに調べがつくのでは?・・」

「昨晩より明朝に掛けて調べ尽くされている・・対象者は居ない・・」

「・・・彼女は一体・・・」

困惑し呟くユートを見て

ヴィーロは質問を飛ばす。

「・・(本当に彼女に関して何も知らないようだな・・)彼女に関して質問だが、救出する道中でもいい、何か話しを聞かなかったか?」

「・・いえ、何も・・ただ怯え、錯乱しているだけの様に見えました・・」

・・・。

反応しない魔道具を見て、

ヴィーロは続ける。

「そうか・・・一度お前目線の話を聞きたい、彼女を保護するに至った経緯、その前後の話を聞かせてもらえるか?」

「・・わかりました、正直お役に立つかどうかわかりませんが・・・」


~回想~

“昨日朝一に、Aプラスワン任務遂行の為に

私のパーティーメンバー2名と共に拠点を出立しました。“

「本当に私は行かなくて大丈夫ですか?」

エルガ・モンテイロの問いに

ユートは笑顔で答える。

「問題ない、基本的には単独隠密任務になる、戦闘にならぬように動くから治癒士の必要性も低い、それに中継地点まではパーティー支援を受けられる、馬も居ることだしメンバーが少ない方がシェイラの転移も効果が増す」

「・・・そうですか・・・どうかご無事で・・・」

“デンスティアに入ってから中継地点まで、

危うい場面もあったが、

斥候のクロイと転移士のシェイラのおかげで、

私は息も切らさずほぼ無傷で到達出来ました。”

「2人ともありがとう、おかげで万全の態勢で任務に臨める」

「はぁーはぁー・・ど、どうです・・はぁー・・ぼくだって・・やればこれぐらい・・」

息絶え絶えのクロイがそう言うと

眩暈をおこし、呂律の回らない

シェイラが続く。

「ゆ~とさんにぃ~なにかあったらぁ~えるがさんにぃ~おこらるるぅぅ~」

「はは♪二人とも帰ったら好きな物ご馳走してやる!それとクロイ・・来月の武闘大会は二人そろって挑戦者だ!」

「え・・そ、それってつまり・・Aランク挑戦・・認めてくれるって・・ことですか?・・」

「そうだ、俺も任務を遂行しAプラスワンになってくる、二人そろって出場だ!」

「や・・やったぁー!!・・・」

“そのまま気を失うように寝てしまったクロイと

シェイラを置いて、中間拠点詰所へ向かいました。”

「ユート・トラフォールだ、予定通りランクアップ任務へ出発したい」

「えーと、えーと・・あっ、これです・・リテータ班長が出してる任務ですね、今一度任務の確認をここでお願いできますか?」

ユートは係員の指示に従い、

依頼書に目を落とす。


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