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成り行き②

~異世界メジューワ、リデニア国首都クヨウトウ南街~

~クヨトウ公営ギルドA型事業局南支部~


「は、話には聞いてたけど・・・」

ギルドの迎えの建物の屋根の上へ

瞬間移動してきたロレーヌは、

困惑した表情でそう言うと、

ナトスに疑問を投げかける様に

続けた。

「これが無尽蔵に使えるって話ね?・・・他にも色々隠してそうね?」

「・・・隠しているわけではない、説明がうっとうしいのと、俺自身“人間の進化の過程”としか知らないだけだ、ここではない世界線“地球の人間”の話だがな」

「進化?」

ナトスはそれ以上話さず、下を覗き込みながら言う。

「自分で降りれるか?」

「降りれないって言ったら、抱いて下ろしてくれるのかしら?」

「昨夜ユナに聞いただろ、ショルダーバックになるだけだ」

それを聞いたロレーヌは昨夜のユナとの話を

聞かれていたと知り嫌味っぽく言う。

「あら、盗み聞き何て趣味が悪いわね」

「フン、盗み聞きね・・残念ながらそうではない」

ナトスはそう言うと屋根から飛び降りた。

ロレーヌもヤレヤレと後を追うように

飛び降りた。

地上にロレーヌが無地に降りてくると

ナトスは言う。

「今日の依頼である能力が大いに役立つだろう・・・所長にお見せしますよ、盗み聞きではない説明も兼ねてね」


~カウンター前~


「マスターを呼んで欲しいのだが」

カウンターに居るトコーナに

ナトスが声をかけると

困惑したトコーナが答えた。

「あっ、おはようございます・・ナ、ナトスさん・・でしたよね、ベネーさんなら部屋に居ますが・・・」

「S&S社所長のロレーヌが依頼の内容確認に来たと伝えてもらえる?」

「え!?・・あれ?・・ロレーヌさんは上位冒険者さんだったはずじゃ・・」

事情を知らないトコーナがさらに困惑してそう言うと

ロレーヌは答える。

「冒険者家業は引退したの、彼はうちの社員、説明すると長くなりそうだし、ベネーさん呼んでもらえない?」

「あっ、は、はい・・少々お待ちを・・」

トコーナが慌てて奥へ引っ込むと、

ナトスが軽食販売カウンターを指さし言う。

「ロレーヌ所長、部下である俺はそこのコーヒーが飲みたいと思っているのだが」

「え?あぁ良いわよ、驕ってあげる、私の分もお願いね」

ロレーヌはナトスにお金を渡すと、

空いてる席に視線を移し続けた。

「私はその辺でベネーさんを待わ」

「承知した」


程なくして、

コーヒーを飲む二人の前に

ベネーが現れた。

二人の前に座ったベネーが言う。

「一体全体、何がどうなればこうなるのでしょうか・・・」

「・・・」

ナトスは何も言わずコーヒーを飲んでいたが、

ロレーヌが苦笑いを浮かべ言う。

「まぁ・・成り行きで」

ロレーヌの言葉を聞き

ベネーは言う。

「・・確かに、あなたは成り行きに身を任せるところもありましたし、冒険者を続けていたことに・・・いえ、何でもありません・・」

ベネーには一瞬、悲しげな表情のロレーヌが見えた。

ベネーは何かを言おうとしたのを止め

口をつむぐように話を切り替える。

「・・依頼の確認・・でしたね」

「・・はい、お願いします」

ロレーヌは笑顔で答えたが、

ナトスの目には作られたものの様に見えた。

「・・・」

一拍置いて、ベネーが依頼の詳細を話しだす。

「・・8日前の11月7日、西支部を拠点としていたDランク冒険者パーティー3名が、南の樹海へ行ったきり消息不明となりました、その日中に戻る事を西支部のギルド職員が聞いていたことから、戻っていない事を心配し、翌日の8日の朝に、立寄る可能性の高い黒岩野営地と、比較的近いここ南支部への連絡がありました」

そこまで聞いたロレーヌが疑問を投げかける。

「・・樹海へ入ったのは間違いない情報なの?」

ベネーは頷き答える。

「・・黒岩野営地を利用していた冒険者の中に、7日昼過ぎに樹海内で彼らを目撃したパーティーがいました・・・そのパーティーリーダーは、自分たちの視認が最後の情報だと知ると、また樹海へ入るつもりであった事もあり・・善意で・・目撃した場所を重点的に回ってくることを、周囲や野営地の管理人に伝えていたそうです・・・Cランク冒険者4名で構成され、樹海にも慣れていた彼らは、Dランク冒険者3名など、すぐに探せると思ったのでしょう・・・」

「・・そして彼らも戻ってこなかった・・・」

ロレーヌがそう言うと

ベネーは続ける。

「事態を重く見た西支部のギルドマスターが、世界冒険者協会安全保障部に通報・・・捜査課が少し動いたようでしたが、11日夕刻、ここ南支部へ正式に捜索依頼が来ました・・・そして・・」

ベネーはナトスに視線を移し

続ける。

「12日、ソロル達アキトパーティーがこれを受け・・・後はご存知の通りかと」

「その安全保障部や捜査課と言うのは?」

ナトスがそう聞くと

ベネーは答える。

「安全保障部は街の安全や治安を守るための組織です、事件性がある場合、捜査課が調べる事になりますが、今回は街の外・・魔獣による事故の可能性が高いと判断したのかもしれませんね、実際ソロル達は150Lvを超える魔獣と遭遇しています・・・」

「その魔獣が冒険者失踪に関係していると?」

ロレーヌが疑問を投げかけると

ベネーは少し考え答える。

「・・・関係あるのかないのか、それも含めて調査をお願いしたいのです」

ベネーはナトスに視線を向け続ける。

「ナトスさん、ソロルはもう一体、高レベル高知能の魔獣を持ち帰りましたね?その個体もほぼ同じ場所に居たのでしょう?」

「頭に魔石なるものを持っていた211Lvの大猿の事なら少し違う、かなり遠くから“音切り”と呼ばれる技でその場所へ飛んできたと言うのが正しい、元々一緒に居たという可能性は否定できないが・・」

「音切り!?(・・・高レベル高知能魔獣なら有りえますが・・・)」

ベネーが驚いたようにそう言うと

ロレーヌが恐る恐る聞き返した。

「ナ、ナトス・・あんた今“音切り”って言った?・・・」

ナトスは二人の反応を不思議に思いながらも

その問いに答える

「何か問題があるのか?因みに“音切り”と言ったのはソロちゃんだ、どっからともなく飛んできた魔獣の攻撃を俺が防いだ時、それを近くで見ていたからな」

「・・・は?」

更に困惑したように

疑問の声をあげるロレーヌに、

ベネーが言う。

「ロレーヌ・・私は先日、ナトスさん達の人知を超えた感知能力を見せつけられました・・・そして昨日、それがまさに証明されたのです、あなたの手によって・・・」

「・・・へ?」

ロレーヌが話について行けず

困惑を深める中ナトスが言う。

「(・・竹串の件か・・)ロレーヌ、ソロちゃんも同じように困惑していた、かなり腕の立つ冒険者でも防ぎようがないのにと・・しかし俺は、自身の能力でそれが容易だったに過ぎない・・話を戻すが、魔獣との関連連性も視野に入れ調査を進め、失踪した冒険者7名の捜索という事だな?」

それを聞いたベネーは頷きつつ

補足する。

「男性4名、女性3名の冒険者の捜索・・リデニアでは少ないですが、冒険者の失踪は年間を通してそれなりに存在します・・遺跡の奥深くや“デンスティア”へ行けば魔獣の手によって人知れず死んでしまう冒険者が居るのも当然なのかもしれません、しかし今回は、比較的安全だと認識されている南の樹海での事、事件なのか事故なのか、生きているのか死んでいるのか・・失踪扱いにはしたくありません・・・そして重要な事はあの高レベルの魔獣が何処から来たのか・・・今後の安全の為にも、その調査が必要です・・・」

ベネーの言葉を聞いたロレーヌは

ナトスに視線を送ると、

ナトスは頷いて見せた。

「・・・話は分かったわ、ベネーさん・・・早速調査に入らせてもらうわ」

その言葉を合図の様にナトスが席を立つと

ベネーが声をかける。

「ソロルの様子はどうですか?」

「・・・」

ナトスはこの質問に、微かな違和感を覚えた。

そして逆に質問を投げかける。

「・・さっき話を聞いた捜査課の話だが、昨日の事件は当然捜査課が動いているのか?」

ベネーは一瞬なぜそんなに捜査課の事を気にするのか

不思議に思ったが、異世界からの召喚者であるナトスが

この世界の常識を知らないのは仕方ないと素直に答える。

「えぇそうです、“リベロット”絡みとなればかなり本腰を入れて捜査しているのではないでしょうか、因みに組織犯罪となれば、冒険者ギルドが組織運営する、ギルド局も捜査協力する決まりになっています、それにしても・・そんなに捜査課が気になりますか?」

「御存知の通り俺は召喚者だ、元居た世界でも仕事をし生計を立てていたという事になるが、ここで言う安全保障部捜査課に似た仕事をしていた・・・故に気になったのかもしれない」

「それはそれは興味深いお話ですね、言われてみれば確かに、異世界の仕事ですか・・・あっ、因みにミノアさんはどういったお仕事を?」

「あいつはまだまだ学生でしたよ・・やりたい事はあったと思いますが」

ナトスは笑顔で答えたが、

ロレーヌには作られたものの様に見えた。


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