変態と狂人①
ミノア「そ、それって・・・」
そこへ女性捜査官とブロードが
到着した。
「大丈夫ですか!?」
「一体何が!?」
「リアス・・ブロード・・」
ベネーは二人を見て続ける。
「詳細は何とも・・何者かが押し入り逃走しました・・」
周囲を見渡したブロードが
リアス捜査官へ指示を出す。
「取り急ぎ治癒士と救搬の為に転移士・・(エクードさんがいない・・)あと・・鑑識士を」
「了解です!」
リアスが動こうとしたとき
ベネーが引き留める。
「大丈夫です、ここの負傷者はすでに治癒中です」
ブロード/リアス「え!?」
ブロード達が疑問の声を上げると
更にハレルが付け加える。
「鑑識も不要だ・・・すでに私が終えている・・」
ブロード/リアス「??」
困惑する二人をよそにハレルは続ける。
「その隅に魔道具が使用された形跡があった、おそらく転移用の魔道具、製造元は“アンディア”、アンディア製なら販売はフューエル社だ、世界中に卸先があり流通量も多い・・そこから辿るのは難しいだろう・・」
リアス「か、“鑑識眼”が使える?・・・」
ブロード「(・・だとしても一般流通品の製造元がわかるだと!?・・・)」
ハレルは回復し起き上がる冒険者と
外から連れてこられた警備員を指し続ける。
「ここで倒れていた彼らと、表で倒れていた警備員の傷は、同じ武器による刺し傷で一致しています、しかし武器等の知識と情報が乏しい私にはそれ以上はわかりません・・・まぁわかったとて・・かもしれません、おそらくそれも一般的に大量製造流通している品の一つでしょう・・」
リアス「・・これだけの事をしておいて手がかりが少ない・・・」
ブロード「これだけの事をするからこそだ・・完全に計画的犯行・・・犯人特定につながる証拠は残していないだろう・・・」
ここまで話を聞いていたベネーが
ハレルへ疑問を投げかける。
「ハレルさんの言った通り、犯人の男はあの場所で転移の魔道具を使用しました・・一つ聞きたいのですが、ここで発動した魔道具は一体何だったんでしょう?それも“アンディア”製の魔道具ですか?」
床に走る蜘蛛の巣状の大きなヒビを
指さすベネーにハレルは答える。
「・・それは魔道具ではないようです、魔道具を使用した際に残る痕跡を感じません・・」
「魔道具じゃない!?あれだけの効果を発揮しといて!?」
驚愕するレイミーナに
ハレルは静かに頷いた。
「そこに残留する魔導痕はあまりにも微細だ・・魔導錬成が関わる魔道具のそれではない」
「おそらくハレルさんの言っていることは正しいだろう・・」
「兄さん?」
そこへナトスをはじめロレーヌとソロル、
ミュウが到着していた。
「音から考えても、おそらく使用されたのは“爆弾”の類・・」
「あっそれ、僕も話聞いてそう思ったんだよね」
ロレーヌ「は?」
ベネー「ば・・爆・・?」
リアス「・・バクダン??上の階にも物凄い音はしましたが・・」
ブロード「(ロレーヌさん?・・もしかしてこの人たちが・・)」
ナトスはみんなの反応からこの世界にその類の
兵器がないと理解し想像しやすいものを
例に挙げ続ける。
「・・聞いた話によると煙幕玉と呼ばれる道具はその炸裂時の衝撃で気を失うこともあると・・・“爆弾”とはその衝撃で人を殺傷することができる強化版・・」
それを聞いたソロルは頭を抱える。
「はぁ~・・あんたねぇ、そんな物作れるわけ・・」
「なるほど、一理ある・・」
ハレルがソロルの苦言を遮ると
続ける。
「煙幕玉は魔石加工時に出る魔石の削りカスを使用する、焼失時煙を発する植物の葉を乾燥させ一緒にすり潰しそれを固く丸めたもの・・外から魔力による反応を加えると中で魔石の粒子が反応し一瞬で焼失する・・ここに残留する魔導痕はそれに似ている・・」
「言われてみれば、尋常じゃない量の黒煙を残しました・・・」
レイミーナがそう言うと
いまだ目覚めないリヴリラを見て
ベネーが続ける。
「きっかけは小さな火球でした・・それを見たリヴリラは火属性関係の魔道具と考え火属性耐性を最大限向上させていました、私とレイミーナは火属性を持っていないこともあり土属性による壁で対処を・・結果はリヴリラの方が重傷を・・・煙幕玉のような物理的な衝撃が効果の大半であったなら納得です・・」
ベネーの話にミノアが続ける。
「もう一つ・・多分爆発時、床に倒れていた人より、立っていたエクードさんの部下さんやベネーさん達の方が大きな被害を受けたんじゃない?“爆弾”ってそう言うもんだよ、上の方へ衝撃が向くんだ」
静かに話を聞いていたブロードは
周囲を見渡し話し出す。
「・・状況から考えて、その手の道具が使用されたとみて捜査した方が良さそうですね・・」
「待ってください課長!そんな有りえない物を前提に捜査なんてっ・・」
「あり得る事が前提だった場合、それほど特殊な物なら足が辿れるだろ・・そもそも魔導具も武器も捜査しようがないんだ、だとしたら現状その“バクダン”を軸に捜査だ、そこに否定が入れば前提を変え一からまた捜査だ・・」
「それは・・そうですが・・」
納得しないリアスに
ブロードは続ける。
「因みにだが、世界冒険者協会認定調査員の発言だと言うのが大きな理由だ」
「えぇぇ!?認定調査員!!」
驚愕するリアスを他所に
ブロードはロレーヌに歩み寄る。
「ですよね?ロレーヌ所長」
「・・そうね、確かに・・彼とそこの彼、2人は世界冒険者協会認定調査員・・二人とも“バクダン”と発言はしてるわね・・」
「も、もしかして、先日シェンターさんに合わせて欲しいってお願いしたS&Sの!?・・こ、こんな所で会えるなんて!!」
騒ぐリアスを他所に
ブロードは笑みを浮かべ
ナトスに視線を向け握手を求める。
「ここの捜査課課長ブロードと申します、いやぁ~お会いしたいと思っていたんですよ♪・・因みに冒険者失踪事件を解決に導いたのは、彼ですか?・・それとも」
「私です♪」
ナトスは即答しつつ笑顔で答えると
握手を交わす。
「街の人々の為、日々のお勤めご苦労様です♪」
「いやぁ~そちらこそ、事件解決に感謝しています♪」
リアス捜査官はミノアへ駆け寄ると
服装を正し気を付けをする。
「世界冒険者協会クヨトウ南本店安全保障部捜査課のリアス・スパッティと申します!この度は捜査発展の為ご発言頂き感謝いたします!あと・・えーっと・・あの・・よろしくおねがいします!!」
ズバッと差し出された手を
ミノアは苦笑いを浮かべ握り返した。
「はは・・こ、こちらこそ・・・」
ミノアへナトスから念話が届く。
『ミノア、話しを合わせて欲しい』
『話?』
『この場を離れたい』
『そうなの?』
『捜査課に俺達の力を少しも知られたくないんだ』
『わかった・・』
ナトスは笑顔のまま
手を離すと話を切り出す。
「さて、我々はまだ依頼が残っています、この場は捜査課に任せ社へ戻らせて頂きます」
「・・そうですか、それは残念です・・もっと捜査のヒントをと思っていたのですが、多忙な所をこれ以上お引止めも難しいですね・・」
「(捜査のヒント・・)」
ブロードの言葉を聞いたハレルは
ここへ来た経緯を思い出す。
「・・・」
それはミノア自身もわかっている事。
ハレルの視線に気づいたミノアが
ナトスに追従する。
「そうだね、僕はまだ依頼の途中、社に戻る前にここへ寄っただけだし、この場も落ち着いたようだから業務に戻ろう」
それを聞いたハレルはミノアに話を合わせる。
「・・そうか、では引き続きよろしく頼む」
「(・・ミノアさん達はこの犯人の手がかりを持っているはず・・・)」
ベネーはそう感じつつもミノア達の考えを
汲み取るように話を合わせる。
「お忙しいとこ助かりました、お二人には重ねてお礼を言わせてもらいます」
それを聞いたレイミーナが慌てる。
「ちょっと待ってください!今この魔道具を持っていかれるのは困ります!」
ハレルがこの場からいなくなると、
魔導具を回収してしまうと思った
レイミーナにハレルは答える。
「・・この魔道具は失敗作だった、売り物にもならないだろう・・あなたに差し上げます」
「え!?えぇぇぇ??い、頂けないですよこんな高価な物!」
「それは私も申し訳なく感じてしまいます、奇跡のような効果をもたらす魔導具です、なぜ失敗作だと?・・」
驚愕するレイミーナに
狼狽えるベネーが追従すると
ハレルは答える。
「・・確かに一定の効果は設計通りだった、しかし本来の想定範囲を満たしていない、この倍は想定していた、その時点でまたゴミを作ってしまったとがっかりしたが、もっと想定外だったのは、彼女の魔力に呼応する為変異してしまった事・・」
「レイミーナに呼応する?・・」
「変異?」
「発動時から鑑識眼で確認していたが、私の名付けた名前“ファルモトリゴ”の表記が“銀の聖域”へ変化した、これは魔導具として何かしらの変化があった事を意味しているのと同時に不安定な代物だった事の証明・・解りやすく結果だけを言おう、この魔導具“銀の聖域”は君の治癒魔法を受け取り、名づけられたことで、君のみが使用できる魔導具へ変異している、いや、完成したと言うべきか・・」
レイミーナ「ぎ、銀の・・(た、たしかにそう思ったけど・・)」
「他の治癒士ではもう発動しない、売り物になるわけもない、そもそもゴミとして処分しようと思ったほどだ、要らないなら治癒完了後捨ててくれ」
絶句するレイミーナとベネーを他所に
ハレルはミノアへ声をかける。
「では行こう、一度御社で今後の話もしておきたい」
「了解」
ナトスは去り際に
ブロードへ視線を向ける。
「ではまた今度、時間がある時にでも」
笑顔のナトスへブロードも笑顔を返す。
「えぇ、近いうちに」
ハレルとミノアを先頭に
ナトス達一同はその場を後にしていく。
~クヨトウ中央区~
~クヨトウ公営ギルドS型事業局・地下牢獄~
カチャカチャカチャ・・ギィィ。
牢獄の重い扉を守衛が開ける。
「おら、大人しくここに入れ!」
「チ・・だから何でこんなことまでされんだよ!」
「騒ぐな!罪が重くなるぞ!」
牢の中へ、2人がかりで押し込まれたのは
アンプレスだった。
「だから!全部合意の上だって言ってんだろが!」
ガチャン!
牢にいれられたアンプレスが
悪態を付くと、守衛が答える。
守衛A「嘘をつくな!ギルド職員の女性は泣いていたぞ!」
守衛B「おまえは局長自らが尋問するそうだ!大人しく待ってろ!」
去っていく守衛の後姿を見ながら
アンプレスは呟く。
「・・そもそもあの女が誘ってきたんだろうが・・はぁ・・・」
アンプレスが諦めの表情を浮かべると
突然目の前の牢から声が響いた。
「・・騒がしい声でまさかとは思ったが・・お前かアンプレス・・」
「ん?」
名前を呼ばれその人物を確認した
アンプレスは目を見開く。
「お、お前は!・・ユート・・何でこんな所に・・」
そこには同じように牢に閉じ込められ
静かに座るユート・トラフォールの姿があった。
「それはこっちのセリフだ、一体何をしでかしたんだ」
「ハン!なにもしてねーよ!そういうお前だって一緒だろ!牢に閉じ込められてんじゃねぇか」
「フン!私は自分自身が潔白である自信がある、故にお前の様に騒がず静かにしてるだろ、誤解が解け釈放されると思っているからな、お前と一緒じゃない」
「俺だって直ぐに誤解が解ける・・はずだ!や、やりすぎたって事もない・・はずだし・・うん・・それに間違いなく合意の上だった・・うん・・」
自信なさげなアンプレスに
ユートは頭を抱える。
「はぁ・・まさかお前がそんな男だったとは・・・」
「な、なにがだ!」
「さっきの守衛の言葉・・お前の発言からも想像つく・・」
「だ・・だから何がだよ・・」
「お前・・泣きながら怯える女性に対し、無理やり淫らな行為を働いたんだろ・・」
「・・・は?」
「合意があったのなんだのと・・男の風上にも置けん奴だ!」
「んなわけねぇーだろまったく・・何の話してんだよ・・俺は無実だ、お前と一緒にすんな!」
「なっ・・わ、私はそんなことしない!私こそ無実だ!」
「ハン!どうせお前の事だ、手あたり次第喧嘩吹っ掛けて暴れでもしたんだろ!」
「フン、それこそ何の話をしてるんだ・・あぁ・・なるほどなるほどお前か・・自分自身の話をしてるんだな?」
「なっ・・お、俺じゃねぇよ!向こうから喧嘩売って・・」
「騒々しいぞ!お前ら!!」
アンプレス/ユート「!!」
言い争うアンプレスとユートを
制する怒号が響いた。
「お前ら二人・・顔見知りか・・」
そこに現れたのはクヨトウギルド局局長
ヴィーロ・トレヴィーノだった。
起こった表情のままヴィーロはが
牢獄の前に歩み寄ると、
守衛の一人がユートの扉を開ける。
その間、ヴィーロは怒りの表情を
アンプレスに向けていた。
「な・・なんだよ・・」
慄くアンプレスに
ヴィーロは呟く。
「お前は後だ・・覚悟して待って居ろ・・」
「(・・こ、怖・・・)」
牢から出たユートに
ヴィーロが言い放つ。
「ユート・トラフォールだな、今から尋問を開始する、ついてこい」
「ふぅ・・やっとか・・」
「・・・」
ヴィーロは険しい表情のまま
無言でその場を後にする。




