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五感③

~リベロット本拠地~


しばしの休息をとる魔石加工士達。

軽食を取っていたナトゥラが

驚愕の声を上げる。

「何!?ハレルの弟子だと!!」

「えぇ・・まぁ・・師匠がどう思っているかは微妙ですが・・」

自信なさげにテレサが答えると

それを聞いていた魔石加工士達が

次々に声を上げる。

女性魔石加工士「ハレルってあのハレル・ローリード!?」

男性魔石加工士A「た、確か・・ナトゥラさんの・・」

男性魔石加工士B「・・お、お弟子さんですよね!?」

「あっ!やっぱり!!そうだと思った!」

テレサが嬉しそうにそういうと

ナトゥラが不思議そうに質問する。

「やっぱり?」

「ナトゥラさんが魔石加工してる時の姿・・師匠に似てたので・・もしかしたらって思っていました」

「(・・ハレルに似ている・・か・・)・・フッ・・そうか、あのわからず屋にも弟子が・・・」

どことなく嬉しそうなナトゥラの言葉を聞き

テレサは慌てて続ける。

「あっ・・でも本当に・・師匠は私の事を弟子として認めていなかったかもしれません・・私が一方的に師匠と思っていただけなのかも・・・」

悲しそうなテレサに

ナトゥラは優しく語り掛ける。

「・・そんなことは無いさ・・」

「え?・・」

「フ・・ハレルは気難しく頑固でわからず屋・・変な奴だ・・」

「へ、変・・ですか・・」

「・・そして・・天才だ・・」

「天才・・」

「テレサは魔石加工をする俺のフォームからハレルの姿を見たのだろ?・・ハレルは自分の技術をおいそれとさらけ出すような人物ではない、しかし君にはそれを見せている・・まっ、そう言うことだ」

「・・・」

「それともう一つ、誤解しているかもしれないからはっきり言っておく・・」

「え?・・な、なんですか?・・」

「俺の本職は魔道具士だ・・魔石加工技術に関しては弟子のハレルが上だ・・俺の加工フォームが似ているのは他でもない弟子の技術を盗み、俺の方が真似ているからに過ぎない・・」

「弟子の技術を・・師が・・・」

「はっはっは♪驚いたか?・・しかしそれが真実、先ほど弟子のハレルに似ていると言われ、俺は嬉しく思ってしまった・・それほどの天才だ・・」

「師匠・・・」

「あぁぁーもう・・やっぱり失敗した!!」

ナトゥラとテレサが話し込む中、

作業に戻っていた魔石加工士の男性が

頭を抱え大声を出した。

それに気づきナトゥラとテレサが視線を向けると

魔道具の錬成に失敗した男性がうなだれて居た。

事情を察したナトゥラはその男性に近づき

声をかける。

「・・治癒の魔道具は錬成成功率は低い・・もう一度カラーリングから考え直してみよう・・」

「しかしナトゥラさん、この灰色のカラーリングを崩さずにアベンチュレッセンスを加えたパターンが一番いいのは経験則上間違いないんです・・」

テレサも遅れて近づくと

目の前に転がる魔石を覗き込んだ。

「・・治癒系統なら銀です」

「?」

「普通の石ってあります?」


~クヨトウ西街、HLL工房~


ミノアとハレルは工房内に来ていた。

例によって、瞬間移動で手早くここまで来た

事実にハレルは動揺を隠せずにいた。

「・・や・・やはり、天才というものは想像をはるかに超える・・」

少し狼狽えつつハレルが呟くと

ミノアが苦笑いで答える。

「ははは・・別に天才ってわけじゃ・・」

「謙遜するな・・まっ、どの天才も自分の能力の凄さを自分自身で気付いていない・・ミノア君の魔法陣なしで発動する転移技能は、他に類も見ない天才的な技能・・」

やれやれと言わんばかりにハレルが言い切ると

ミノアは疑問を投げかける。

「どの天才もって、他に天才的な人が身近にいるんですか?」

ミノアの問いを聞いたハレルは

工房内の自分のデスクに腰を掛け、

歪んでヒビの入った魔石を手に取る。

「・・魔石に触れると、淡い光を感じると・・・その時、目指す属性系統を思い浮かべると、完成色と・・その手順が見えると・・その天才は言った・・・」

「属性系統?」

「火属性や雷属性・・治癒系統などだ」

「なるほど・・完成色っていうのはカラーリングの事ですよね?」

「あぁ、火属性系統の魔道具を錬成するためには赤色にカラーリングされた魔石を使うと成功しやすく、魔道具としての性能もはるかに高くなる傾向がある・・当然、錬成する魔道具士の技術や能力にも、成功率や性能は影響されるが・・」

ハレルは同じく机の上に置いてある

カッティングされたただの石を手に取り

それをミノアへ渡し続ける。

「・・目指す色の手順が見えるというのは、正直、魔石加工技術を飛躍的に推し進め、今後の世の中を大きく変えうる才能・・・それが魔導錬金も使えない、17歳と若い人間がやってのけるんだ・・天才と言わざるを得ないだろ」

「・・・」

ミノアはハレルの言う天才が

弟子テレサの事だと理解し

さっそく仕事に取り掛かる。

ミノアは工房内を見渡す。

「テレサさんが良くいた場所、もしくは最近触れたものとかわかりますか?」

「後ろの椅子がテレサの席だ、そして今渡したその石・・それは最後にテレサがカッティングした物・・」

ミノアは石をまじまじと見つめた後

テレサの椅子に腰かける。

「・・僕が天才かどうかは別として、テレサさんは僕と同系統の感覚を持っているかもしれません・・ハレルさんの話を聞いてそう思いました」

「同系統の感覚?・・」

「・・・早速、触れてみます・・・」

ミノアは静かに目を閉じると、

脳全体を活性化させるため、

脳波をコントロールしていく、

視覚以外の感覚を研ぎ澄ます様に。

「・・!」

何かを感じ取ったミノアは

静かに目を開ける。


~S&S社一階ロビー~


「共感覚??」

一つのテーブルをソロルたちが囲み

ナトスの話を聞いている。

ロレーヌの疑問の声に

ナトスは続ける。

「・・そうだ、共感覚・・聞いたことは無いか?」

「ないのです・・」

「私も・・」

ミュウとソロルが答えると

ナトスは続ける。

「そうか・・厄介だ・・何から説明したらいいものか・・・そうだな、俺とミノアが持つ超能力について、それは意志・思念の力だと説明したが・・・見えるか?」

ナトスは目の前のコーヒーを宙に浮かせる。

それを見たロレーヌ達は首を横に振る。

ナトスはコーヒーを下ろすと続ける。

「・・見えないが、俺の思念は間違いなく存在しその力は働いている・・・話は変わるが、少し前にユナから面白い質問を飛ばされた・・それは“幽霊って何?”・・だ」

一同「え?」

「ロレーヌも怯えていたようだが、俗にいう“幽霊”は存在する、俺たちの居た世界では既に解明されている・・」

「えぇ!じゃぁ幽霊ってやっぱりいるんじゃん!!」

「ばかばかしいのです幽霊なんって存在するわけないのです」

「あんまりそれを口にしないでよ・・ここによって来るでしょ!」

三人の反応はスルーしナトスは続ける。

「脳の作り出す強い思念・・意志が力として残る・・それが君らが見たの聞いたの言ってる幽霊の正体・・」

「脳が作り出す?・・」

「そうだ・・強い思想や感情を生み出せるほど発達した脳は、思念や意志を力に変える・・・命あるもの全てが俗にいう幽霊として存在できると思うか?」

「それなのです!そもそも草や木、鳥や昆虫、魔獣の幽霊何て話しすら聞いたことないのです!それが幽霊何ていない証拠なのです!怖い心が生んだ幻覚なのです」

得意げにミュウが答えると

何かに気付いたロレーヌが呟く。

「脳が・・発達した・・・」

それを聞いたナトスが続ける。

「ミュウが言ったように命があると言っても草や木には脳そのものがない、魔獣の脳も強い思想や感情を生み出すほど発達していないだろう・・わかりやすく言おう、そんな発達した脳を持つものは人間か一部の動物ぐらいなもんだ・・」

「・・・」

言葉を失う女性陣を他所に

ナトスは続ける。

「話が逸れてしまったな、ミノアがこの依頼に適任な理由、その説明を続ける・・今言った脳が生み出す思念は死んでいなくても残るものなんだ、微弱で直ぐに消えてなくなるが間違いなく何かしらの痕跡を残している・・・」


~クヨトウ西街、HLL工房~


目を開けたミノアの視界に

今にも消え入りそうな光の影が映る。

ミノアの座る椅子にその光が

座ろうとすると、

ミノアは席を譲るように下がる。

その光は席に座ると何かをしているように

手を動かす。

「(思念が消えかかってる・・・)」

何かを作っているようなその光を見て

ミノアは直感的にカッティングされた石だと感じ、

その光の前に石を置いた。

そして再度目を閉じ、

他の感覚を研ぎ澄ましていく。

『・・やっぱり・・銀・・だ・・』

ミノアがどこからともなく響く

女性の声を感じると

ゆっくり目を開ける。

そこにはショートカットの女性だと

認識できるぐらいの

光の影が座っていた。

「・・やっぱり・・銀・・だ・・」

「!!?・・」

女性の声を復唱したミノアの言葉に

ハレルは絶句する。

『・・手順・・見え・・』

「手順・・見え・・」

「テレサ!?・・」

ミノアはその光の影の肩に手を置く

すると他の人物、長髪の男であろう

光の影も現れる。

『・・ありえない・・この・・順が・・解だ』

『・・師・・おねが・・・私・・・手順で・・』

「・・(・・駄目だ時間がたちすぎて殆ど聞こえない・・)」

二つの光の影は、

場面が変わったように

別の所に移動する。

男の光の影が呟く。

『テレサ・・・・お・・・正しかった・・・』

男の光の影は机に何か置くと消え去る。

女性の光の影が机の何かに気が付くと

それを手に抱える。

『師匠・・・・・・治癒・・・・』

『・・・おじいちゃん・・・・・証明します』

そして光の影は消え去った。

「・・・ふぅ・・」

ミノアは一息つくと

ハレルに視線を移す。

目の合ったハレルは

驚愕の表情のままミノアに質問する。

「い、いったい何をしたんだ・・テレサが発した言葉を呟いたように聞こえたが・・な、何かわかったのか?」

ミノアは頷き答える。

「・・痕跡がかなり弱く消えかかってるから、断片的な言葉しかわからなかったけど・・ハレルさんとテレサさんのここでのやり取りが少しだけ・・・一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?何でも聞いてくれ!」

「ハレルさんがこの机に置いたものは何ですか?テレサさんはそれをある人に渡そうと考えていた様です」

「・・それは魔道具だが・・そんなことまで・・」

狼狽えるハレルにミノアは続ける。

「おそらくおじいさんです、テレサさんのご家族、おじいさんの家は解りますか?」

「両親はいないと聞いている・・祖父母が近くに住んでるのは聞いたが場所までは・・」

「・・急いだ方が良いかも・・徒歩で行ってくれていれば辿れるかもしれません、痕跡が消える前に出ましょう」


~リベロット本拠地~


シュゥゥ・・シュキン!

テレサが石をカッティングすると

シュゥゥ・・シュキン!

それを真似てナトゥラが呪の魔石を

カッティングする。

「(凄い・・師匠と同じように見ただけで正確にカッティングできてる・・)」

シュゥゥ・・シュキン!

「(何なんだこの手順・・本当にこれで銀色に?・・・)」

シュゥゥ・・シュキン!

ナトゥラは疑心暗鬼で、

テレサに言われた通り、

彼女のカッティングを正確に模倣し続ける。

シュゥゥ・・シュキン!

「よし!これで完成♪」

シュゥゥ・・シュキン!

一同「!!?」

ナトゥラの手元に残った呪の魔石を見て

その場に居る魔石加工士達は息をのんだ。

「こ・・こんなことが・・・」

驚愕の表情で固まるナトゥラの

手元には銀に輝く魔石が転がっていた。

女性魔石加工士「テレサちゃんの言ったとおり・・」

男性魔石加工士A「・・ぎ、銀があるなんて・・今まで発見事例すらない・・」

男性魔石加工士B「偶発的に辿れる手順じゃない・・・そうなると知ってなきゃ無理・・」

口々に驚きの声を上げる皆を他所に

テレサはナトゥラに詰め寄る。

「凄いですよ師匠の師匠!!私なんか師匠のカッティングを何で見ても正確に真似するなんて出来ないのに!!師匠の師匠も師匠と同じで、一度見ただけでこんなに簡単に!!」

「・・・」

ナトゥラは、自分の技術を大いに褒める

目の前の天才に複雑な心境を抱いていた。

その感情は2年前、

弟子ハレルに抱いた感情と同じだと

直ぐに気付いた。

「フ・・(嫉妬心か・・)」

ナトゥラは笑みを浮かべると

興奮するテレサに語り掛ける。

「テレサ・・もう一度お前の才能を確認したい・・」

「さ・・才能?・・」。

「魔石に触れるだけで、完成色とそれまでの手順が見えると言ったな?先ほどやってのけた銀の魔石・・それもその才能で見た手順だったと」

「・・そうです・・毎回見えるわけではないですが・・あっ、でも過去に見たことがある手順は全て完璧に覚えています!」

「・・そうか・・」

ナトゥラは懐から新しい石を取り出し続ける。

「過去に、純白を見たことはあるか?」

その問いにテレサは笑顔で答える。

「あります!私が最初に見た完成色と手順、それがまさに純白でした!その時も信じてくれない師匠を何とか説得して、さっきみたいに魔石加工をお願いしたんです!その時の師匠も凄かったです!私のカッティングの位置・角度・幅を寸分たがわない精度で模倣してましたから!」

再度興奮気味に語るテレサに

ナトゥラは笑みを浮かべ質問する。

「そうかそうか、さぞハレルの技術はテレサ目線素晴らしいものだっただろう?」

「えぇそうでしたよ!興奮冷め止まぬってこういうことだって思いました♪」

素直なテレサの反応を見て

ナトゥラは思う。

「(・・ハレルも俺と同じ様に、天才を弟子にしてしまった苦悩を・・・)」


~S&S社一階ロビー~


ロレーヌ「・・味や匂いに・・色や形を感じる?・・」

ソロル「・・見たものや触った感触に・・音を感じる?・・」

ミュウ「刺激を受けた感覚を・・別の感覚で・・・」

「・・視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚・・この異なる五つの感覚が、本来感じ得ない知覚を生み出す・・その種類やパターンは多種多様だが、脳と言う器官の全貌を解明している俺達の居た世界では第六感と総じて呼び、その第六感を持つ人間はごく一部で限られた者だったが、広く一般的に認知されていた・・そして、ミノアはそれを持っている」

「・・・」

頭をチョンチョンと指さすナトスに

言葉が出ない三人。

ナトスはコーヒーを飲みつつ

続ける。

「・・ミノアは視覚以外の感覚で残された思念を察知し、それを視認情報として知覚できる・・さらに、その思念を残した人物の動きや聞いた音、言葉、匂いや味までも知覚できる・・ミノアならテレサさんが失踪した直前の情報や足取りを辿れる・・・適任だろ?」

ナトスの話しを聞き一通り納得した

ロレーヌだったが愚痴をこぼす。

「・・確かにね、適任だとは思うけど・・それを先に話してくれれば良かったんじゃない?所長の私を差し置いて話しを進めて・・報酬の話も詰めてないわよ・・」

「フ・・ミノアも言っていたが時間との勝負と言っても過言じゃない、テレサさんがいつ失踪したか知らないが、どちらにしろ急ぐに越したことは無い」

「だからそれは何でよ、納得いく説明してくれる?」

「・・・」

ナトスはコーヒーを飲みつつ

答える。

「足取りを辿るとなると、その時点では生きていることが前提・・さっきも言ったが、生きている人間が残す思念は微弱で直ぐに消えてなくなる・・死んだ人間の残した思念ならまだしもな」


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