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魔導技術とお守り②

~リデニア国クヨトウ中央街~

~インベル社~


~所長室~


ガチャ・・

「所長、お見えになりました・・」

少し緊張気味のパルスが

カイファスの居る所長室へ男を連れてきた。

デスクに座るカイファスは、

パルス同様緊張した顔をあげる。

「・・いやいやまったく・・まいるんだが・・」

パルスが連れてきた男はそう言うと、

所長室に入りつつソファーへ腰かけた。

「この俺をこんなお天道様の下に呼び出すなんて・・」

飄々とする男をカイファス所長は見据える。

「まぁ、そう言うなバーゲル・・」

「・・・」

バーゲルと呼ばれた男は、何も言わず

目の前にある葉巻に手をのばす。

カイファスはパルスへ視線を送り、

それを受けたパルスは懐から封筒を取り出した。

「・・・」

バーゲルはその封筒を受け取ると、

葉巻をふかしながら中身を確認した。

「・・(これはこれは・・)」

中身の札束を見たバーゲルは、

それを自分の懐にしまいながら呟く。

「人目に付く恐れがあるこんな所に呼び出すからには、かなり切羽詰まってるとは思ったが・・・」

「それは交通費の様な物だ、皆に美味いものでも食わしてやれ」

カイファスがそう言うと、

バーゲルはカイファスに視線を向ける。

「・・よほど追い込まれてるのかぁ・・っで、死人の俺達に何をさせようと?」

「・・・」

カイファスは自分のデスクから立ち上がると

バーゲルからの質問に答える様に語りだす。

「・・南街にS&S社と言う調査会社がある、一昨日出来たばかりの会社だ」

「・・・」

カイファスはバーゲルの座るソファーへ

歩み寄りながら続ける。

「・・元々はギルド設営の為数年前に建てられた建物・・社員は調査員2名と所長の三名・・」

「・・・」

黙って聞き入るバーゲルの前にカイファスは座り

呟くように続けた。

「・・仕事は・・その三名の口封じだ・・」

「・・・ひゅ~~♪・・・殺しか」

「・・・」

カイファスはバーゲルの発言を肯定する様に

黙ってバーゲルを見据えた。

「・・期間は?」

バーゲルが質問すると、

答える様にカイファス語る。

「・・早ければ早い方が望ましい・・遅くとも明日の朝日を拝ませたくない・・」

「・・・はぁ・・」

バーゲルはソファーに深く座りなおし

ため息を付いた。

そしておもむろに語りだす。

「・・“ピスキー”のメンバーは俺にとっては家族・・軟な鍛え方をしてないとはいえ、準備期間が短いほどこちら側の危険性が増す、それがわかってて言ってんのか?・・カイファス・・」

「・・・(し、死人の分際で・・)」

バーゲルが睨みをきかせると

カイファスに緊張が走る。

カイファスは狼狽えつつも、対等な取引、立場であると

言わんばかりにバーゲルを見据える。

「・・こちらも切羽詰まっている・・金にいとめは付けないつもりだったが・・・」

「・・・」

バーゲルはカイファスの目を見据え、

しばし考え込む。

そしておもむろに語りだす。

「・・決行は今夜・・条件は三つ・・」

「・・き、聞こう・・」

「家族の安全のためにも多くの魔道具を使用する、それを実費で請求する・・」

「・・わかった・・残り二つは?・・」

「現場に対象の三人以外の人物が居た場合・・例えば、客や友人・・そいつらの口も閉ざさせてもらう・・」

「・・なるほど、成功報酬に加算しろという事だな?・・承知した・・」

「最後の一つは、その報酬に関して・・対象の三人は一人当たり3000万レアリー、そして外野を一人当たり1000万レアリー・・・」

「!!・・(あ、足元を見おって!・・)」

カイファスが即答で条件を飲もうとしない事に

バーゲルは苦言をならべる。

「・・カイファス所長さんよ、俺達“死人”が失うもの無いとでも思ってんのか?さっきも言ったように一人一人家族なんだよ、その命張ってんだよ・・」

「ぐ・・ぐぅぅ・・」

「確かによ、楽しんでるよ殺しをさ、頼まれなくても殺しちゃう事いっぱいあるよ、うん、でもそれとこれは別なんだよ、気持ちよく条件飲んでくれねぇーとモチベーション下がっちまうぜぇ?」

「ぐ・・くっ、しょ、承知した、すべての条件を飲もう・・」

顔を伏せ絞りだすように答えたカイファスを見て、

バーゲルは満面の笑みを浮かべる。

「まぁ安心しろカイファス・・決行は今夜、そして・・俺達はこの手の依頼を失敗した事は無い・・・」

バーゲルは懐から魔道具を取り出すと続ける。

「そうそう、この転移の魔道具もしっかり請求に乗せさせてもらうぜ・・・」

バーゲルは座った状態のまま

赤い魔法陣に吸い込まれる様に消え去った。

ガシャン!

「!?・・」

「はぁ・・はぁ・・」

カイファスは目の前の葉巻ケースを

突然薙ぎ払った。

苛立つカイファスにパルスが怯えるなか

カイファスは怒鳴り散らす。

「何なのだ!!死人共が!アウトローの分際で私をコケにしおって!!」

「・・しょ、所長・・」

「はぁ・・はぁ・・ふぅ・・・」

カイファスは落ち着く様に息を吐くと

自分のデスクへ歩き出す。

「だ、大丈夫ですか所長・・」

「あぁ・・大丈夫だ・・」

「所長・・本当にここまでやる必要があるんでしょうか・・異常がないって事もっ」

「考えが甘いぞ!パルス!」

カイファスはパルスの発言を遮るように怒鳴ると

椅子に腰かけ続ける。

「・・・過去のデータと照らし合わせてもほぼ間違いなく異常はある・・今回は何の不正も無く堂々と荒稼ぎする予定だったんだ・・それを・・認定調査員だと!ふざけやがって!」

「・・・“ピスキー”の奴らもかなり吹っ掛けてきましたね・・・」

「もういい・・S&S社を潰さねばならん・・今日は下調べと準備、仮に調査に出られたとしても範囲は狭く気付かれる可能性は低い、しかし明日以降本格的に調査されては認定調査員が居る以上バレルと考えて動くべきだ!先手を打つ・・これは必要経費、希望的観測はやめろ!備えておくんだ、最悪の事態に!」

トゥル、トゥル。

カイファスが自分に言い聞かせる様に

怒鳴り散らすと電話が鳴る。

パルスが電話に駆け寄り応答した。

それを他所にカイファスは頭を抱える。

「・・(そもそも一体何があってS&S社なぞに依頼を・・いつも通り、来週うちが調査に入れば・・・いつも通りの流れで・・それもこれもジューリム・・この件が落ち着いたら糾弾してやるぞ!・・)」

「・・長・・」

「所長!・・」

「ん?」

カイファスは自分を呼ぶパルスの声で顔をあげる。

そこには困惑したパルスの顔があった。

「何だ?・・電話か?」

「は、はい・・あの・・デーセルからです・・」

カイファスは受話器を受け取ると

電話口のデーセルへ続ける。

「何だ?」

「所長!く、黒岩野営地の調査任務が派生し討伐任務が出されてます!」

「?・・・な!?何だと!」

「S&S社と言う会社が調査を完了、その後討伐任務の権利を放棄し・・今各ギルドの掲示板にも討伐任務が掲示されています!」

「どういう事だ!調査が完了しているわけないだろ!!」

「し、しかし・・実際に・・ど、どうしましょう、今回は数が多くなるのを見越していくつかの冒険者パーティーに声をかけていたんですが・・」

「・・(どういう事だ・・裏があるのか!?・・い、意味がわからんぞ・・・数時間そこらで調査可能な範囲じゃない、だとしたらすでに調査が進行していた?・・そうか、初対面の様な挨拶は演技、あの時調査はほぼ終わっていたんだ・・あのタイミングが完了報告だったとしたら今討伐任務が掲示されたのも納得がいく・・)」

カイファスの様子を見ていたパルスが呟く。

「な、なんで当社へ連絡が無いんですかね・・直ぐにでも確認のための連絡がりそうなもの・・・」

「・・(確かに!・・まさか気付かれていない!?・・)討伐任務の詳細を教えろ!」

カイファスがデーセルに怒鳴るように言うと、

手元の依頼書を見ながらデーセルは伝える。

「えっと・・全部で6か所に魔獣の巣が・・それぞれ黒岩野営地から37.45km、51.85km、43.69km、45.36km、50.79km、33.26km付近で・・」

「待て!その50km以上離れた位置のは関係ない!そんなものどうでも良い!」

「た、確かに、我々の調査範囲は50km以内・・この二つに関しては無関係です・・」

「そう言う事だ・・他のポイントで一番数が多い魔獣は何だ!?」

「え・・と、37.45km付近のロールオータトル・・32匹です・・」

「!!・・(す・・少ない!?・・・こ、これなら・・)」

「所長、声をかけていた冒険者に何と・・」

「そんなもの放っておけ!」

ガチャン!

カイファスは荒々しく電話を切った。

そして笑みを浮かべる。

「・・ギリギリ運が味方したようだ・・先手を打つ・・バレフ・ファーガソン様に連絡を・・・」



~サキュリフィー邸~


「具合はどうだ?・・」

テナクス王将は目の前の男に質問を飛ばした。

男は王将の大楯を入念に調べつつ

答える様に語りだす。

「・・・ナトゥラ師匠の設計通り“魂の雫”である長剣を媒介し王将の魔力が流れ込んでいます・・半日もすれば元通りになるかと・・」

「ふぅ・・そうか・・」

「・・・」

王将が心を撫で下ろすと、男は丁寧に大楯を机に置いた。

「・・?」

王将がどことなく暗い表情の男に疑問を感じていると

男は語りだす。

「・・・連絡を受けた時、まさかとは思いました・・この大楯はナトゥラ師匠の最高傑作・・自動修復のペースを考えても、崩壊の危機にあったのは間違いないでしょう・・」

男は大楯の中心、魔石の部分に触れると続ける。

「・・・王将、この大楯・・少し私が手を加えてもよろしいでしょうか?」

「・・なにか気になる事があったか?」

男の質問に王将が質問で返すと、

男は答える様に語りだす。

「・・媒介である“魂の雫”と大楯の間に歪な流れを感じていました・・恐らく大楯の魔石に問題があるかと・・魂の雫は魂魄強度と密接なつながりがある魔導具、であればこの大楯の魔石も魂魄強度と繋がりやすい“カラーリング”が良いと思います」

「カラーリング?」

「あっ・・失礼いたしました、魔石を魔導具の核とする為の工程“カッティング”の事です・・楕円形でツルツルとした魔石はカッティングする角度・深さ等の要因で本来の赤黒い色から変化致します、私はこれを“カラーリング”と呼んでおります・・」

男は大楯の魔石へ視線を移し続ける。

「現在どことなく青みがかった白い魔石が核として使用されています・・ナトゥラ師匠は自身の経験、知識、感覚を頼りにこの“カッティング”へ落ち着いたのでしょう、これ以上手を加えると、盾としての機能自体崩れかねないぎりぎりのライン・・しかしここから後二回のカッティングで“純白”になる手順を知っております・・」

「純白?・・」

「・・はい、魂魄強度と最も繋がりやすいカラーリングは純白だと考えています・・」

「ふむ・・」

テナクスは男の話を聞くと

納得したように頷き、続ける。

「この大楯の核である魔石から今の青みを取る事で、さらなる高みへ・・魔導武具としての性能が向上する・・その可能性があると・・」

「間違いなく今よりも輝きを放つでしょう・・」

「・・師ナトゥラを超えたか・・ハレル・ローリード・・」

テナクスは笑みを浮かべ、

目の前の男、ハレル・ローリードの名をたたえた。

「・・私などまだまだです・・」

「・・・」

テナクスはどことなく暗いハレルに違和感を抱いていた。

「・・私はただ、その手順を知っているだけです・・そしてその手順を見つけたのも私ではありません・・私はただ、その発見された手順を・・知っていただけ・・」

「・・・何かあったのか?」

「え・・」

テナクスは一貫して暗いハレルに疑問を飛ばした。

「ここへ来てから表情が暗い、悩みでもあるのか?」

「い・・いえ、たいしたことでは・・」

「話してみよ、力になれるやもしれぬ」

「・・・」

王将から強く押されたハレルは、

重い口を開ける。


~リデニア国首都クヨトウ、南街・中央~

~転移サービスKS2番ゲート


私の名はバレフ・ファーガソン。

ここリデニア国で民の生活を豊かにするため、

心血をささげる決意をした政活者だ。

「・・(まさか、こんな形で会う事になろうとは・・・)」

私は今南街のとある場所へ向かっている所だ。

誠心誠意、謝罪をする為に。


~回想~


「はい、世界冒険者協会ジューリムです・・」

「政活者、バレフ・ファーガソンだ、インベル社のカイファス所長より連絡を受け、私からも謝罪をせねばと思い連絡したところだ・・」

バレフからの電話を受けたジューリムは、

神妙な表情を浮かべ呟く。

「・・謝罪ですか・・」

「カイファス所長から重大なミスがあったと連絡があった、ジューリム殿が管理する黒岩野営地と、ここ首都への影響が出かねないミスだったと聞いている・・カイファス所長も責任者として反省し焦燥しているのを感じた・・私自身、インベル社の信頼性を押していた自覚がある、私はその事を有耶無耶にはしない、今回の彼らのミスは私にも責任があると思っている・・申し訳なかった・・」

「ファーガソン様・・・」

ジューリムは一泊置いて続ける。

「・・・インベル社のカイファス所長よりどのような話しを聞かれたかはわかりませんが・・ファーガソン様を信頼し、一緒に来ていただきたいところがあります」

「ん?一緒に?・・わかった、今回の件であれば何処にでも出向くつもりだ」

「今回の件が発覚したのはある調査会社のおかげです、そこで詳細な話を詰めれればと思っていたところでした」

「おぉそうか、おそらく有能な会社なのだろう、私自身も知っておきたいところ、それに今回のインベル社のミスは重大なものだと認識している、たった一度のミスで一切の取引が出来なくなるものではないと思うが、場所が場所なだけに、今後のインベル社の業務における信頼性を担保するものとして誓約書の一つでも書かせねばとは思っていた、その為にも事の詳細は知っておきたい」

「場所は南街にあるS&S社という場所です」

「!!?」


~回想終~


「(昨日の今日・・当然覚えて居るだろう・・・)」

私は誠心誠意謝罪しなければならない。

カイファス所長はミスを認め罰則を受ける覚悟もあった。

二年以上も安全のために業務を遂行してきた会社だ、

一度のミスでその功績までもなかった事には出来ない。

政活者である私が頭を下げ、

インベル社を助けたい、

そう思っている。


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