五感①
~異世界メジューワ、リデニア国~11月15日~
~クヨトウ南、黒岩野営地~AM8:45~
~大岩頂上~
ミノアとロレーヌが、突如として現れる。
「・・ふぅ・・一瞬ね」
「・・・!?」
瞬間移動で黒岩野営地へ来た瞬間、
ミノアは鑑定を受けていることに気付く。
「・・所長?・・なぜ鑑定を??」
青白く右目が光るロレーヌにミノアがそう言うと
少し慌てたようにロレーヌが言う。
「え・・あっ・・そうだったわね・・ナトスも私が鑑定を使用したのに気づけてたし・・ミノアも感じ取れるのね?」
「・・まぁそんな感じだけど・・」
ロレーヌはミノアの質問に答えるように語る。
「・・あなたたちの使う瞬間移動だけど、どれぐらいの気力消費量なのか気になって・・」
「あぁMPってやつだよね?」
「そうよ・・・っで、今見てたけど全然消費してないわよ・・・際限なく使えるって話は本当みたいね、この世界の転移技能はかなりの消費量なの・・便利過ぎない?」
それを聞いたミノアはナトスの言葉を思い出しながら答える。
「うーん・・兄さんは二つの可能性を口にしてた、一つは僕らの使う超能力がこのメジューワの理の外にあって技能の概念が一切当てはまらないんじゃないかって・・」
「・・理の外・・」
「もう一つは、消費自体はしているって話・・」
「え?」
ロレーヌが疑問の声を上げるとミノアは笑顔で続ける。
「ははっ♪僕も“え?”って言ったよ♪兄さんの説明では、例えば気力10の状態で1消費すると10%消費して見える・・でも気力10,000だったら1消費しても0.01%しか消費してないわけで、消費していないように見えるんじゃないかって」
「はぁ?」
「それに気力って時間で回復するでしょ?回復量が消費量より多ければ事実上際限なく使えるって話だったよ」
「・・・」
呆然とするロレーヌにミノアは笑顔で言う。
「さて、さっそく僕の依頼も終わらせないと」
「え・・あっ、そうね・・ジューリムを探しましょう・・」
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発注書
依頼先:S&S社
依頼元:世界冒険者協会南本店
クヨトウ地区ギルド局
内 容:調査依頼
詳細は下記参照
記
〇クヨトウ南、黒岩野営地周辺安全確認
〇同野営地の治安維持に関する確認調査
(概ね周囲50km範囲の安全確認)
黒岩野営地管理者ジューリムへお声掛けを。
報酬は15万レアリー。
期間は11月25日0:00まで。
※定期依頼案件。
初回の出来により今後の依頼を検討。
担当:黒岩野営地管理者
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ミノアとロレーヌが地上に降りて、
黒岩野営地管理者のジューリムを探していると、
数人の男たちが揉めているのが目に入る。
「だから!いったいどういう了見だって聞いてんだよジューリム!」
「私に聞かれても回答のしようがないと言っているだろ」
苛立つ男に平然と返すジューリム。
すると別の男が淡々と語りだす。
「・・私共を信用していないと見て取れる・・当社は政活者からの絶大な信頼と後ろ盾があるのだがね?・・・」
脅しともとれる男の発言に、
ジューリムはため息をつきつつ答える。
「ふぅむ・・・カイファス所長・・私に圧力をかけても無意味です、世界冒険者協会職員ですよ?・・それに今回の発注はヴィーロ局長によるもの、その動きに関する背景など知る由もなく、回答しようがないのです」
それを聞き苛立つ男がまくしたてる。
「私は関係ないなど通じるかジューリム!ここの周辺調査は本来インベル社の俺たちが受け持つべき案件だろ!それを横流しされたらお前に対する恨みつらみが生まれて当然だろうが!?」
「・・・はぁ・・」
ジューリムがやれやれと言わんばかりに
ため息をつくと、カイファスと呼ばれた男が続く。
「・・ジューリム、自身には責任がないと逃れているつもりだろうが、今回の件での我が社に対する不利益は、管理者であるお前にもとってもらうぞ・・このままでは強い影響力を持つ政活者へクレームを入れさせてもらう・・いいのか?今のうちだぞ!今の発注をキャンセルし、従来通りインベル社へ任せるのだ!」
「・・はぁ・・・」
ジューリムは一段と深いため息をつき、続ける。
「先ほど申し上げた通り今出ている発注はヴィーロ局長によるものです、私にそれをキャンセルする権限はありません、さらに従来通りであれば発注は来週末ごろ・・必要であれば当然インベル社への発注は致しますので今日はお帰りいただけますか?」
一切狼狽えることなく平然としている
ジューリムの態度が面白くないのか、
苛立つ男、インベル社所調査員のパルスは怒りがこみ上げる。
「・・おまえ・・後悔するぞ・・・」
「・・・」
ジューリムが何も言わず立ち去ろうとすると
インベル社所長カイファスが薄笑みを浮かべる。
「お前の覚悟、よくわかったぞジューリム・・しかしこれだけは答えてもらおう・・おまえが知らないはずもないことだ・・一体どこの会社に依頼の横流しをしたんだ?平等中立であるべき世界冒険者協会職員との癒着を暴いてやる!答えろ!ジューリム!!」
カイファスが最後怒鳴るように言うと、
ジューリムは立ち止まる。
「S&S社よ」
しかしその返答はジューリムからではなく
後ろで話を聞いていたロレーヌからだった。
ロレーヌはインベル社の二人を無視しつつ
ジューリムへ近づく。
「おはようジューリムさん、S&S社所長ロレーヌよ」
「え!?」
驚愕の声を上げるジューリムよそに
ロレーヌは続ける。
「そしてこちらがミノア、当社調査員の一人よ」
「あ・・えっと、ミノアです」
「あ・・あぁ・・ジューリムという・・」
ジューリムは反射的にミノアへ挨拶を返したが
直ぐに疑問の声を上げる。
「し、しかし・・君は確か上位ソロ冒険者だったはず・・所長というのは一体・・」
「冒険者は引退したの、今はS&S社の所長・・まっ、一昨日の話だけどね♪」
「・・そ、そうか・・」
ジューリムが困惑した表情を浮かべると
ここまで蚊帳の外へ追いやられていたインベル社のパルスが
声を張り上げる。
「お前らなめてんのか!こっちの話が終わってないだろ!それに一昨日だぁ?そんな新参会社に仕事横取りされたっていうのか!?」
カイファス所長も続く。
「これはますます疑いが深まりましたな、そんな実績も信頼もないような会社が我々よりも優先されるはずはない、どう考えてもこの取引には裏がある・・」
ロレーヌをジロジロと見ながら
パルスが続ける。
「あぁーアレか、お前体を売ったな!?枕営業ってやつか?あぁ!?」
ロレーヌ「(イラッ!)」
「ふん・・どちらにしても繋がりは間違いないようですね・・」
カイファスの発言を聞いて
ジューリムの疑問を抱いていた。
「・・(確かに・・依頼から受注までの流れでS&S社が選ばれたのは不自然だ・・一昨日出来たばかりの会社?・・中立を重んじる世界冒険者協会職員としてストップをかけるべきか・・)」
ロレーヌはめんどくさそうに胸元をちょんちょんと指しながら
ミノアへアピールをした。
ミノアはそのジェスチャーにピンと来たのか、
直ぐに自分の胸元から身分証を取り出す。
ジューリム「!!」
カイファス/パルス「な!?」
「信頼はこれで説明できますか?」
ミノアが世界冒険者協会認定調査員の
身分証を手に笑顔で言うと
ロレーヌが続ける。
「彼は世界冒険者協会認定調査員よ、その能力・信頼性は担保されてる・・それに11月7日8日と立て続けに起きた冒険者失踪事件、それを解決したのも当社、実績も申し分ないでしょ?」
ジューリム「!!(な・・あの事件を・・)」
「・・・(やばい・・)」
カイファスはそこまで聞いて言葉を失っていた。
そして仕事を横取りされた事よりも
別の事に気を割いていた。
「認定調査員だと?・・」
納得のいかないパルスが詰め寄る。
「お前みたいなガキが!?そんなわけないだろっ!」
しかしそんなパルスをカイファスが制す。
「帰るぞパルス・・」
「え!?所長?」
カイファスは踵を返すと足早に立ち去る。
「ちょ、所長!・・」
パルスもそれに続き立ち去って行った。
ロレーヌ/ミノア「・・・」
それを不思議そうに見つめるロレーヌ達へ
ジューリムが声をかける。
「このメジューワに、十数人も居ないと言われる世界冒険者協会認定調査員・・こんなところでお目にかかれるとは光栄です」
丁寧な口調で握手を求めるジューリムに
苦笑いを浮かべつつミノアが答える。
「えっと・・あの・・ははは、こちらこそ・・」
ミノアが握手を交わすと
ジューリムは続ける。
「世界冒険者協会職員ジューリムと申します、ご多忙の中、依頼を引き受けていただきありがとうございます、微力ではありますが何でも申し付けてください」
やけに丁寧で腰の低いジューリムの態度に
気持ち悪さを覚えるミノアは素直に答える。
「えっと・・ジューリムさん、僕は明らかにあなたより年下・・そういう態度で接されると気持ち悪いというか・・あの・・普通に・・お願いします・・ははは」
「?」
ミノアの苦笑いを不思議そうに見るジューリムに
ロレーヌが話しかける。
「まっジューリムさん、肩書は気にしなくて良いわ、私も今まで通りの方がやりやすいしミノアの言う通り普通に接してもらえると助かるわ」
「・・そうか・・」
未だ疑問の表情でジューリムは続ける。
「・・では、邪魔者も居なくなったことだし、依頼の内容をすり合わせしたい」
「よろしくお願いします」
笑顔でミノアが答えると
ロレーヌも頷いた。
「所長!カイファス所長!」
足早に歩くカイファスにパルスが声をかける。
「・・何だパルス・・」
足を止めずに答えるカイファスにパルスは続ける。
「一体どうしたんですか?あんな奴らに仕事取られて許せるんですか!?」
「許せるわけないだろ!・・・しかし今は仕事を取られた事よりも、早急に手を打たねばならない事がある・・・」
「手を?」
カイファスはそれに答えず
パルスに指示を出す。
「直ぐに転移を、社屋に戻り対策を練る・・・“奴ら”にも連絡を入れろ」
「や、奴らにですか!?・・・政活者バレフ・ファーガソン様ではなく?・・」
カイファスは立ち止まり、焦ったような表情で答える。
「ファーガソン様にはまだ伝えるな・・・金はかかっても良い、今回は“奴ら”の力を借りる・・・」
~黒岩野営地管理テント~
「つまり、あくまでも調査依頼、魔獣を見つけても手出し無用って事ね?」
依頼内容を聞いたロレーヌがそう言うと
ジューリムは頷き答える。
「そう言う事だ、調査範囲も広く日数もかかるだろう、しかし報酬はさほど高く設定されていない・・あくまでも安全とされるここの周辺調査、それのみで構わない」
それを聞いたミノアが確認する様に疑問を投げかける。
「なるほど、じゃぁこの辺に魔獣が居たよーとか、あの辺に魔獣が居たーって情報を集めるだけだね?」
「そうだ、しかしあくまでも集団でいる魔獣だけで良い、この辺の魔獣は精々50Lvが関の山、単独でいる魔獣は脅威にならない、5匹以上の群れ、それが確認出来たら教えて欲しい・・もし確認できないのであれば異常なしとして報告を」
「5匹以上?・・」
「そうだ、巣を形成している可能性がある、つまり繁殖の恐れが高い」
「繁殖?・・」
いまいちピンと来ていないミノアに
ロレーヌが補足する。
「個々のレベルが低くても、それが大量に襲ってくると上位の冒険者でも後れを取る恐れが高いの、この辺は比較的安全な場所、それは魔獣側にとっても同じなの」
「仮に繁殖力の高い一般魔獣クイックリザドあたりが巣を形成したとしよう、その後4週間もすればその数は10匹を超える、そしてクイックリザドにとっても外敵の居ない場所ならばその2週間後には5倍に膨れ上がるだろう、40Lvに満たない魔獣とは言え50匹もの集団になると人間を襲いだす・・ここ黒岩野営地も安全ではなくなるだろう」
そこまで聞いたミノアもピンと来たのか、
ポンと手を叩き笑顔を向ける。
「なるほど♪繁殖する前にその兆候がある場所の調査って事ですね!」
素直な反応を示すミノアに
ジューリムも調子を合わせる様に続ける。
「簡単に言えばそう言う事だ、しかし勘違いはしないでくれよ、反響索敵などで漠然とその位置、数を報告されても困る、その眼でしっかり視認し鑑定による詳細情報をお願いしたい、まっ、群れが居ればだがね」
「了解♪僕は鑑定も持ってます、この目でしっかり調査させてもらいます!」
ミノアの素直な反応ジューリムの表情も柔らかくなる。
しかし腑に落ちない様な表情のロレーヌに気付き、
直ぐに疑問を投げかける。
「ん?・・どうしたロレーヌ、何か気になる事でも?」
その質問にロレーヌはおもむろに答える。
「・・・さっきのインベル社だけど、ジューリムさんが言ったようにこの案件はさほど報酬がいい訳じゃない・・あそこまでこだわる理由が思い当たらなくて・・」
ジューリム「・・・」
ミノア「?」
ジューリムがそれに即答しない事に
一瞬疑問に感じたミノアがジューリムに視線を向けると、
おもむろにジューリムが答える。
「・・・ふぅむ、この案件は派生任務がある・・異常なしであればそれで終わりとなるが、異常があった場合当然新たな依頼が発生する・・魔獣の巣殲滅任務だ」
ミノア「殲滅任務・・」
「調査依頼から討伐依頼に変わるのね?」
ロレーヌの質問に答える様にジューリムが続ける。
「本来ならば調査内容から新たに討伐任務として依頼書を公示、ギルドなどにも提供され冒険者パーティーが受ける事もあった、大量繁殖にならないようにするためにも迅速な対応が求められるため、数パーティーがこれにあたる事もあった・・」
「確かにそうね・・範囲が広い分魔獣の巣が点在していた場合それぞれの場所へ一度に向かわせた方が迅速と言える・・」
「・・実はこの討伐任務、かなり割のいい報酬内容となっている・・巣の殲滅、つまり群れのリーダー討伐で50万レアリー、他の魔獣討伐で一匹当たり10万レアリー・・・」
それを聞いたロレーヌが驚いた表情で呟く。
「・・仮に6匹の群れで100万レアリー!?・・・」
「ここ黒岩野営地と首都クヨトウへの影響を考慮し、安全確保任務としてそれだけの報酬内容の任務・・・それが今や調査した会社が独占する事になっている・・」
ミノア「?」
ロレーヌ「・・・」
ジューリムは疑問の表情を浮かべるミノアを見て
答える様に続ける。
「政活者の介入があり、調査と討伐が一体化する流れが出来てしまった・・調査後迅速な対応が求められる討伐任務において、その調査を完了した会社こそ相応しいと言う理屈だ・・まっ言いたいことは分かる、調査した会社だからこそ現場の地形や魔獣状態、正確な場所を知っている・・理屈も通っては居るだろう・・」
「・・インベル社はその利権を手放したくなかったのね・・」
「・・・・まぁそう言う事だろうな・・」
「?」
ミノアは再度、ジューリムがロレーヌの言葉を
肯定するまでの“間”に疑問を覚えたが、
深く考えるのを嫌うミノアは直ぐに切り替えて、
立ち上がる。
「よし!じゃぁ早速調査に出ますか所長」
「そうね・・」
ロレーヌはミノアに返答し、
続けてジューリムへ質問を飛ばす。
「完了報告は何処へ?」
「私に直接お願いしたい、基本的に毎日この時間はここに居るが10時前には南本店へ戻っている、15時以降は、またここで管理業務をしている、明日も明後日も変わらぬ動きだ」
「わかったわ、完了した時間帯であなたを探し直接報告させてもらうわね」
~大岩頂上~
「じゃぁ早速調査を始めましょう」
「了解!」
ロレーヌの言葉にミノアが元気に答えると、
ロレーヌは段取りの説明を開始する。
「ここから周囲50kmの範囲を調査する事になるけど、あなた達の化物じみた“反響索敵”なら簡単よ」
「反響索敵??」
疑問の表情を浮かべるミノアを見て、
ロレーヌは補足する。
「あぁ・・ジューリムさんはああ言ったけど、この初動調査においては“反響索敵”は有用よ、特に80kmも先まで感知できるならなおさら」
「う・・うん?・・」
ロレーヌは今一ピンと来ていないミノアに
更に詳しく説明をする。
「ジューリムさんが直接視認って言ったから疑問を感じてるのね?それは最終的にすればいい事よ、ここから周囲を確認し複数体密集している魔獣の気配がなければ“異常なし”それで今回の任務は終了、仮に感知したのならあなた達の瞬間移動で近くまで飛び鑑定で確認するだけよ、簡単でしょ?」
「あぁ!そっか」
ミノアはロレーヌが大きな誤解を
していることに気付き声をあげた。
しかしロレーヌは“早速反響索敵で確認して欲しい”と言う
自分の思いがやっとミノアに話が伝わったと誤解し、
笑顔で続けた。
「じゃぁお願い、確認してもらえる」
「ロレーヌ所長・・僕は反響索敵を持っていないよ」
「・・・え?」
ロレーヌの反応から
やっぱり勘違いしていたと感じたミノアは
笑顔で続ける。
「僕は反響索敵を使えるようにはなっていないんだ、今ここで所長が僕に向けて技能を使えば使えるようにはなると思うけど、多分兄さんみたいな長距離は無理だと思う、兄さんは“聴覚”関係の技能は得意分野、反響索敵と言う名称からも“聴覚”関係の技能でしょ?同じ効果って事にはならない気がするよ」
「そ、そうだったの・・・」
少し落胆したように見えるロレーヌに
ミノアは続ける。
「でも反響索敵無しで、同じ様に簡単に終わらせることは出来ると思うよ♪」
「え!?」
「ジューリムさんにも言った通り、僕がこの目でしっかり確認する・・」
ミノアは上の方を指さし続ける。
「あの辺からね」
「・・・」
話しが飲み込めないロレーヌがポカンとしていると
ミノアは笑顔で続ける。
「ははは♪簡単に言うと、僕は目が良いんだ」
「え?め、目が?・・」
「そう」
ミノアは真南の方角を指さし続ける。
「所長はあの地平線・・ここからどれぐらいの距離だと思う?」
ミノアに促されたロレーヌの視界には
地平線が広がる。
「・・・」
「ここは地上から15mぐらいの大岩の天辺・・あの地平線は約14km・・」
ミノアは何も言わないロレーヌに続ける。
「僕にはそこに居るワニみたいな魔獣が見えるよ」
「・・・!!?」
ミノアの両目が青白く光り
鑑定を発動させた。
「・・ハードクロコディ、レベル37」
「!?」
絶句するロレーヌを他所に
ミノアは続ける。
「昨日シェンターおじいちゃんの言葉で気づいたんだ、鑑定って近くに居ないと効果ないかって思ってたけど、しっかり視認できていればステータス見えるみたい・・僕は元々30km位だったらしっかり視認できるんだ、今回の範囲50kmも見えないことないけどはっきりと視認できるとは言えない見え方・・人や魔獣が居たとしても、まぁ何かあるなー程度で多分鑑定の効果は期待できない距離」
「ちょ・・へ??」
困惑するロレーヌを他所にミノアは続ける。
「っで、もう一つ気付いたことがある、僕の鑑定は視力その物を強化するんだ」
「はは・・な、何それ・・」
衝撃的なミノアの発言に
思考が追い付かず引きつった表情で
なぜか笑ってしまうロレーヌ。
それを見たミノアは笑いながら続ける。
「ははは♪だよね、視力が有効な範囲でしか効果がない鑑定が、視力その物を強化するって、なんか笑っちゃうよね♪」
「・・・????」
ミノアの思考回路も意味が解らず、
ロレーヌは引きつったまま絶句してしまう。
ミノアはお構いなしに続ける。
「まぁそれは一旦置いといて話しを戻すけど、さっき見えてたハードクロコディは地平線に沈むように見えなくなった、ただ単に少し遠くへ行っただけなんだけど、どんなに遠くまで見える僕でも見通し距離以上は視認しようがない」
「見通し距離?」
ミノアはその質問に答える為、
何かを探すように懐に手を入れた。
そして何かを手に取ると
ロレーヌの前に出した。
「これは・・ガラス球?」
「そう、少し小さいけど説明できるものがこれしか思いつかなくて・・」
ミノアはガラス球を手のひらに載せると
続ける。
「僕らの居た地球はこんな丸い形をしてた、そしてここメジューワも間違いなく球体・・」
「え、えぇ・・それは知ってるけど・・」
「なら話は早いや、恐らくここメジューワは地球とほぼ同じ大きさだと思う」
ミノアはガラス球の頂上を指さし続ける。
「ここに立ってたとして」
ミノアは90度指をずらしガラス球の真横を指さす。
「ここ真横付近って見えると思う?」
「?・・」
「絶対に見えないんだ、どんなに遠くまで見える視力を持っててもね」
ミノアはガラス球の頂上から真横まで直線をなぞるように
指を動かし続ける。
「こんな風に地面を貫通する事になるから見えないんだ、今ここから見えるあの地平線は精々この辺」
ミノアはガラス球の頂上からほんの少し
ずらした場所を指さし続ける。
「ここの地面が地平線として見えてる、じゃぁどうやってその先を見ればいいのか」
ミノアはガラス球の頂上から上へ指を動かし、
そこから直線を描く様にガラス球の真横へ
指を動かした。
「見下ろすように角度を付ければいいんだ、こんな風にね」
「・・なるほど」
ロレーヌはミノアが上空を指さし
“あの辺から”と言ったのを思い出した。
そして自然と真上へ視線を向けた。
それを見たミノアが続ける。
「地球と同じ規模だとしたら多分200mも上に行けば見通し距離は50kmを超えると思う、さっそくそこから見下ろしてみるよ」
パシュン!!
「いぃっ!!」
上を見上げていたロレーヌの視界には
一瞬で小さくなったミノアが浮かんでいた。




