神のプラン=女神の啓示
~リデニア国首都クヨトウ中央街~
~サキュリフィー邸:AM5:10~
翌朝。
昨晩はサキュリフィー邸の客室に泊まった一行。
三人部屋真ん中のベットに寝るアンプレスが
目を覚ます。
「・・ん・・?・・・」
「目が覚めたね、アン」
アンプレスが目覚めると同時に
ミノアが声をかけた。
ムク・・・
アンプレスが上半身を起こすと、
上半身裸でタオルを羽織り、パンツ一枚のミノアが映る。
「・・・ここは?・・」
「王様の家にまだ居るよ、昨日みんな泊ったんだ」
「・・俺は・・模擬戦に負けたようだな・・」
少し残念がるアンプレスを励ますように
ミノアは笑顔で答える。
「SSSランクの冒険者相手に良く戦ったってみんな驚いてたよ♪」
「ふん・・そりゃどーも・・そういえばナトスはどうした?」
「ここにいる」
アンプレスの質問に、シャワーから出てきたナトスが
タイミングよく答える。
パンツ姿ではあるものの、Tシャツを着て
髪を拭くナトスを見てアンプレスが言う。
「・・俺もシャワーを借りるか・・」
ユナは一人部屋の客室に居た。
テーブルに向かい座るユナの手には、
例の依頼書らしき封筒が握られている。
「・・考えてもしょうがない・・見よう・・」
ユナは意を決したように呟くと、
封を切った。
コンコン!
「ミュウ~起きてる?」
ソロルはミュウが泊まっている客室の戸を叩き
声をかけた。
カチャ・・
「おきてるのぉです・・」
「はは・・ちゃんと着替えてるのに・・全然眠そうね・・」
「・・・」
「ちょ!ミュウ!立ったまま寝ないでよ・・」
シャー
キュッ!
「ふぅ・・」
シャワーを浴びたアンプレスは
タオルを腰に巻き、
コーヒー牛乳を手に取った。
窓辺に立つミノアの手と、
ベッドに座るナトスの手に、
同じコーヒー牛乳があるのを見て
アンプレスは言う。
「だよなぁ♪やっぱこれだようん!」
アンプレスは嬉しそうに一気飲みすると、
ミノアに言う。
「ぷふぁ・・ミノアのその体・・えらくキャシャに見えるが、お前たちの化け物じみた力はどこから来るんだ?」
上半身裸のミノアに視線を向けるアンプレスを見て
ミノアは自分の体とアンプレスを見比べ言う。
「まぁ体を鍛えたことはないし、普通だよ・・そういうアンは腹筋も割れてるし鍛えてる感じだよね、アンに比べたら華奢かもだね」
「そりゃそーさ!冒険者は身体強度が命!鍛えることで強くないとな♪」
「無駄のない良い筋肉の付き方をしている・・」
ナトスがそう言うと、
アンプレスはナトスに体を向け言う。
「なんだよナトス、人の体をじろじろ見て、お前だけなんでそんな恰好なんだ?」
ナトスのシャツを指さすアンプレスに
ナトスは言う。
「ジロジロ見たわけじゃない、一見して良いバネを持つ筋肉だとわかる、それにいつまでも裸でいるお前らのほうがおかしいと思うが?」
「何を言ってる、昔から男同士裸の付き合いで親睦を深めるってもんだろ?そう相場が決まってる」
「は?」
困惑するナトスにジワジワと近寄るアンプレス。
「な、なんだ・・」
「ミノア手伝ってくれ、俺一人じゃ無理そうだ・・シャツを引っぺがす」
「は?」
更に困惑するナトスを他所に、
ミノアは笑顔で答える。
「良いね♪日頃の恨みもあるし面白そうだ!」
「え?」
「・・・」
依頼書を読み入るユナの部屋。
突然ノックが響く。
コンコン!
「!?わぁぁ」
「ユナ!起きてる??」
バタバタと慌てながらユナは答える。
「え?お、起きてるよ!」
「開けるわね」
カチャ
「ちょ・・な・・」
「?」
依頼書を後ろ手に隠し
立ち上がるユナにソロルは言う。
「・・大丈夫だった?」
「う、うん大丈夫!・・で、どうしたんだ?」
「そろそろアンが目を覚ます時間だし行ってみようかなって・・」
「あ、そ、そんな時間か、一緒に行くよ」
落ち着きのないユナを疑問に思っていると
突然声をかけられる。
「おはよう皆」
「ロレーヌさん」
ベッドの上でミノアに羽交い絞めにされるナトスに
アンプレスがジワジワと詰め寄る。
「は、はなせミノア・・(う・・動けん・・)」
「さぁーナトスゥ裸の付き合いと行こうかぁ」
「じょ、冗談はよせ・・ミノア!悪乗りが過ぎるぞ!」
そーっと近づくアンプレスの手が
ナトスのシャツ触れるや否や、
ミノアは笑顔で返す。
「さぁ~兄さんの腹筋は割れてるかな~♪」
ソロルたちがナトスたちの居る部屋の扉を叩こうとしたとき
中から声が聞こえる。
ナトス「いい加減にしろお前ら!」
アンプレス「ジタバタするんじゃないよナトス!」
ミノア「そうだよ兄さん!往生際が悪いよ!」
「あれ、もう起きてるみたいだね」
ソロルはそういうとノックスをする。
コンコンコン!
ソロル「起きてたんだね・・」
アンプレス達「!?」
「入るわよ」
カチャ・・
アンプレス達「え?」
ソロル「・・はぁ?」
ソロルたち一同の目に
ベッドの上で裸で揉み合う男たちが映る。
ユナ「へ・・?」
ミュウ「な・・」
ピューネ「え?」
ロレーヌ「あらあら・・」
突如現れた女性たちの反応と視線に、
一瞬思考が止まったアンプレスだったが、
自分たちを客観的に見た時の異常性に気付き
狼狽える。
「・・えっと・・・これは、その・・」
「・・・」
アンプレスは絶句するソロルを見て
慌てて弁明する。
「ちょっと待てソロル!これは違う!・・」
ナトス「天罰だな・・」
ミノア「ははは・・・」
そしてアンプレスは慌ててベッドから飛び降り続ける。
「ご、誤解だソロル!コレはアレだ!男同士の・・」
パラ・・
その瞬間アンプレスの腰に巻かれていたタオルが
はだけ落ちた。
ソロル「な!!?」※顔を真っ赤にしギュッと目を閉じる。
ユナ「はわーー!!」※両手で顔を覆い指の隙間からバチコリ見ている。
ミュウ「はぁ・・・」※呆れた表情で俯き、ため息をつく。
ピューネ「え?え??」※ミュウの手によって目隠し状態で見えない。
ロレーヌ「あらあら」※普通に見ている。
ナトス「哀れなやつだ・・」※少し笑っている。
ミノア「はは・・ははは・・・」※いつもの苦笑い。
自分の一糸まとわぬ姿に気付いたアンプレスは
「へバーン!!」
よくわからない雄たけびにも似た悲鳴を上げ
足を閉じ両手で前を隠した。
ドカドカドカドカ!
ソロルは赤面したままアンプレスに近づく。
そして棚に置いてある黒い布を右手で掴むと、
それをギュッと拳で握り、
アンプレスの顔面を打ち抜いた。
ドガン!!
アンプレスは勢いよくベッドのシーツを巻き込みながら
皆の視界から消える。
「はぁーッはぁーッ・・」
息を切らしたソロルは、
その拳をミノアの前に突きつけ言い放つ。
「あんたは直ぐにコレ!」
「は、ハイ・・直ちに・・」
怯えたミノアは黒い布を受け取ると
直ぐに自分の目を隠した。
「お・・OK・・」
~サキュリフィー邸:食堂~
何とも言えない空気間の中、
もくもくと朝食をとるソロルたち女性陣。
目隠しの影響がないようにいつものように
ガツガツ食べるミノアとナトス。
そして顔の腫れたアンプレスがトボトボ食事をとる。
「(なんじゃこ奴ら・・)」
「(いったいどんなことが起きればこんな空気になるのかしら・・)」
シェンターとフィニクシーがそんなことを
考えているとこの空気を嫌ったテナクスが口を開く。
「・・ある・・アンプレス君、模擬戦の負傷は完治したと聞いていたが・・まだそのような大きな傷が?・・」
「え・・いやこれは・・」
「お気になさらずに大丈夫です王将、あの顔は先ほど起きた事故によるもの、なんで生きてるんだろうって感じです」
アンプレスの言葉を遮るようにソロルが言うと
ミュウが追従する。
「更にその事故も自業自得なのです、アレぐらいですんで、むしろ運がいいのです、なんで生きていられるんだろうって感じなのです」
女性陣「・・・」
辛辣な言葉を聞いたアンプレスが肩を落とすと
更に微妙な空気間にテナクスは困惑した。
「(・・ふ、触れぬ方が良かったか・・・)」
するとシェンターが口を開いた。
「まぁ何があったか知らぬが、話題を変えるかのぉ・・ピューネの件じゃ」
一同「?」
テナクス/ナトス/ミノア「・・・」
「ピューネちゃんの件?」
ソロルがそう言うと、
シェンターは続ける。
「昨夜、王将とわし、そしてナトスとミノア4人で話し合い、情報の共有を行った・・まぁ概ねこちらからの質問に答えてもろうた形じゃったが・・」
「ちょ、ちょっと待ってよおじいちゃん、いつの間にそんな事に・・それに、何でピューネちゃんが?・・」
ソロルが疑問の声をあげると
シェンターはナトスに視線を向けた。
それを受けナトスが口を開く。
「・・ピューちゃんの保護を要求したからだ」
ソロル/アンプレス「!?」
その反応を見たミノアが、追従する。
「お姉達も言ってたけど、冒険者である以上お嬢を連れまわすのは難しいよね、兄さんは王様に保護を依頼したんだ」
アンプレス「王将に!?」
ソロル「ちょっと!図々しいわよあんた!」
「ピューちゃんは女神の加護を持っている」
ナトスがアンプレスとソロルを制するように言うと、
ピューネが呟く。
「加護?・・・女神の?・・」
ロレーヌ「・・・」
ロレーヌは無言のまま、ナトスへ怪訝な目を向けた。
「わ、わざわざ俺が話すことじゃないだろ・・なぜ俺を見る・・」
ロレーヌの視線にナトスが苦言を言うと、
ロレーヌはプイっとそっぽを向いた。
ナトスは気を取り直し話を続ける。
「・・もともとピューちゃんのことは手を打つべき事として考えていた・・王将が受けたリーオ・セアーの啓示、それを聞いた時適任だと考えただけだ」
ソロル/アンプレス「適任!?」
ミノアが補足するように続ける。
「“女神の加護ヘンアを探し助けよ、それが己と世界を救う”・・つまりお姉を助けることが王様にとっての啓示・・そしてお姉の啓示は“女神の加護を持つ者を助け、救いの手を”だよね?」
「この二つの啓示は似ている、本質的な部分はほぼ一致していると見て良い・・ソロちゃんの啓示は王将の助けを必要としている、そして王将自身もソロちゃんの手助けが必要」
ナトスがそう言うとシェンターが語りだす。
「古来より、女神の啓示は繋がる事は無く、別々の意思があるように補完しあうようなものではなかった、しかし今回は明らかに違う・・20年前、前王将が受けた啓示から繋がっておる、まるで一枚岩の様に・・」
ナトスは言い知れぬ胸騒ぎを覚えていた。
何故なら王将こそ“適任”と結論付けていたからだ。
シェンターは続ける。
「ソロルはピューネを救い助けねばならぬ・・王将はそれを助ける為ピューネの保護を・・わしもそれは適任じゃと思う正直のぉ・・しかし、」
“美学”。
ナトスは自身の譲れぬ“美学”を持っている。
それ故に、シェンターの“美学”を尊重したいと感じてしまった。
シェンターは続ける。
「・・今回はわしがピューネの保護を提案させてもらった、ピューネは今後ノウビシウム邸へ住まわせ、わしが保護者となる」
アンプレス「え!?」
ソロル「おじいちゃんが!?」
ピューネ「・・・?」
ナトスは一度自身で結論付けた考えを押し殺し、
シェンターがピューネを保護するという提案を飲んでいた。
ミノアがシェンターの言葉を補足するように
語り掛ける。
「お嬢は孤児院に居たって聞いたよ、孤児院は子供の保護はもちろんだけど、もう一つ大きな仕事があるよね?多分お嬢だったらとっくの昔に現れていたかもしれない・・養子にしてくれる里親が」
ピューネ「・・親・・」
ソロル「ま、まさかおじいちゃん・・」
アンプレス「ピューネを養子に!?」
シェンターは優しい笑みを浮かべ続ける。
「そうじゃ・・ピューネは現在12歳、来年には学校へ通う年じゃ、当然学校へも通えるのぉ、ピューネ・ノウビシウムとして」
「すごい!ピューネちゃんの事、妹みたいに大事にしようって思ってたけど、本当に家族に・・妹が出来ちゃった!!」
ソロルが嬉しそうにピューネに向かって言うと、
ピューネも理解したように照れながら言う。
「・・家族・・お姉ちゃん・・・」
まんざらでもないピューネを見て
ソロルがあることに疑問を覚える。
「あれ?・・でも確か、養子をとれるのって片親じゃ要件を満たしてないはず・・お母さんは死んでるし、お父さんは養子をとれないんじゃ・・」
ソロルは自身の父リテータ・ノウビシウムが
戸籍上ピューネの養父となったと考え、
そう疑問を口にしたがシェンターが答える。
「ピューネの養父はリテータではない、わしじゃ・・つまりリテータの妹、ソロルの叔母さん、と言うことになるかのぉ・・」
ソロル「えー!?叔母さん!」
ピューネ「・・お、おんばさん・・」
ソロルは一瞬驚いたが、すぐに同じ疑問を抱く。
「で・・でもちょっと待ってよ、状況は同じじゃない?お父さんもおじいちゃんも片親でしょ!?」
シェンター/フィニクシー「(ドッキ!!)」
「ふ・・不思議なこともあるもんですねぇ・・」
「よ、余計なことばかり気付きおって・・」
明らかに様子のおかしいフィニクシーとシェンターを
見てテナクスが助け舟を出す。
「今回は特別だ、女神の加護を保護するうえでノウビシウム家は俺も目が届きやすい・・俺が王将権限で許可したのだ、それだけだ」
{歯車は噛み合い、回りだす。
ナトスには何が正しかったのかわからない。
ただ、自身の考えを捨て、他者の思いを汲み取ってしまった。
その事実だけはナトスを不安にさせる。
ミノアはもっとも収まりの良い結果だったと感じている。
その結果何がどう転びいかなる事態を招こうとも、
それに対処すればいい。
根拠のないただの勘。
今はただ、心から喜ぶソロルとピューネ。
その笑顔だけがナトスの不安をやわらげ、
ミノアに笑顔をもたらしていた。}




