進化②
ミノアは自身の見えている情報を口にする。
「・・状態・・意識喪失、その原因は気力消耗による反動で9時間もあれば自然に目を覚ますみたい・・あと戦闘による負傷だけど・・今見ている間に重度から中度に変化したんだ・・多分今受けてる治癒魔法のおかげで回復していってるんだと思う、あと5分ぐらいで完治するみたい・・」
一同「!?」
「なんじゃそれは!?それほど具体的に見えとるのか!?」
シェンターが驚きの声を上げると、
ミュウとユナが追従する。
「9時間や5分とか・・そこまで詳細に見えるのですか!?」
「そ、それになんだよ完治まで5分って・・あれほどの衝突の負傷なのに・・凄すぎないか治癒パワー・・」
「王将の盾に守られたとはいえなのです・・すでに意識もなく無防備だったと思うのです・・」
「・・さすがサキュリフィー邸といったところでしょうか・・抱えている治癒士が優秀すぎます・・」
フィニクシーが追従するとミノアが語りだす。
「・・治癒士さんも凄い人なんだろうけど、多分アン本人の体質のおかげだと思う・・・負傷と治癒を度々繰り返してきたことで、治癒魔法の効果を受けやすい体質に変化してるみたい・・最後には死亡率2%って表記されていてさっきそれも0%になった・・」
一同「!?」
「ふぉっふぉっふぉ、おそらく本人も気付いておらぬ身体的特徴までも見て取れるか・・素晴らしい鑑定じゃのぉ」
女性陣「(身体的特徴!?)」
「ナトスもミノアもずば抜けた技能の強化じゃ・・どうじゃろうか・・このメジューワにそのような未来があるのかのぉ・・」
シェンターの独り言のような呟きを、
メジューワの人類における進化の話と汲み取ったナトスが
それに答えるように語りだす。
「・・遺伝や変異、選択適応・・種の進化は止まらない・・それが止まるということは種の絶滅を意味します、環境の変化や置かれた状況に適応し、生存率を上げていく・・アンに起きている身体的変化も変異の一種、進化と言えます・・・俺の反響索敵もミノアの鑑定もこの世界の理の中で存在する力・・進化の形だと思いまっ」
「ちょっと待ったー!!」
ミノア「(ドキ!)」
「動いてはダメなのです!!」
不意にみんなのほうに振り返ろうとしたミノアに
ユナとミュウが声を張り上げた。
「ミ、ミノア!こっちを見てはダメよ、そのままそのまま・・」
「え?え?」
ソロルの声掛けに困惑するミノアに
ミュウとユナが言う。
「その目は危険なのです・・私を見てほしくないのです!」
「そうだぜ、なんだよ身体的特徴が見えるって!やばすぎだろ!」
「そうなのです!スケベすぎるのです!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、鑑定だよ!ただの鑑定!変な見え方してるわけじゃなし、それにもう発動していないって」
必死に弁明するミノアに
ソロルが語り掛ける。
「信じてる、ミノアは純粋な子だって・・でも今はダメ!な、なにか目隠し的なものを・・」
「め、目隠しぃ!?ちょっと・・兄さん何とか言ってよ・・」
混乱して自然と両手を上げ降参のポーズをとるミノアが
ナトスに助けを求めてしまった。
「・・はぁ・・・」
ナトスはめんどくさそうにため息をつくと
ソロルたちに視線を向けた。
その顔はどことなくにやけていた。
「ソロちゃんたち・・ミノアも男なんだ・・多少それなりにアレだし・・まぁ少しぐらい我慢してくれないか?」
ミノア「!?」
女性陣「はぁー!!」
「ソロル駄目だ駄目ミノアも信用できない」
「下心があるのです・・男なんてみんな信用できないのです!」
「あぁ失敗したー!ドレスに合わないからと思って魔道具あずけてきちゃったしぃ!」
「・・もうあれだ・・潰す?・・目・・」
「め、目潰しぃ!?兄さん!火に油!・・勘弁してよ・・」
狼狽えるミノアを見て、
ロレーヌが介入する。
「みんな!もう落ち着いて、たかが鑑定でしょ・・それにそんなに自信がないものなの?もっと自分を磨きなさい」
「へぇ~姉御は平気なんだぁ自分も気付いていない“身体的特徴”を見られても・・」
「え・・し、身体的特徴・・(嫌な響きではあるけど・・)」
「ミノアさん、ロレーヌさんは良いみたいなのです、どうぞ好きなだけ舐めるように見るのです!私たちはダメなのです!」
「え?舐め・・え?」
すると呆れたように両手を下ろし
ミノアが言う。
「はぁ・・もう良いでしょ?鑑定は本当に発動してないし、収集も付きそうにないし・・」
ミノアが振り返ろうとすると
今度はロレーヌが声を上げる。
「ま、待ちなさいミノア!・・振り返ってはダメ!これはそう、所長命令よ」
「えぇーもう本当に勘弁して・・」
うなだれるミノアにロレーヌは自分の肩かけを手に取り続ける。
「と、とりあえず、念のためにこれで目隠しを・・ね?」
女性陣が大きく頷くと、
呆れた顔でシェンターが王将らの元へ歩き出す。
去り際ミノアにシェンターは語り掛ける。
「今の時代、おぬしの鑑定は過ぎた力のようじゃ・・教育という名の瓦礫に埋もれたかのぉ・・遺憾に堪えない思いじゃよ・・」
シェンターはミノアの肩をポンポンと叩くと
そのまま去っていった。
シェンターの後ろを追従していたフィニクシーも
ミノアの横に立つと語り掛ける。
「本来は称賛されるべき技能、戦闘はもちろん治癒や捜査、あらゆる場面で情報の収集能力は有効でしょう・・・あっそうです、今後私に鑑定を使用することを禁じます、もし使ったりしたら両目をくり抜きますよ」
フィニクシーは笑顔でミノアの肩をポンポンと叩くと
そのまま去っていった。
肩を落とすミノアに、
隣に来ていたナトスが言う。
「目隠しは問題ないよな?」
ミノアは小さく頷くと、
大きなため息をついた。
~第109番目世界、「名も無き」異世界~
生まれたばかりの世界。
二人の神が舞い降りるように、
澄んだ海の見える綺麗な砂浜に降り立った。
「ん~良いねぇ!期待できそうな感じ!!」
「えぇ、セオス様!」
まだまだ子供に見える男性の神セオス・アポユートは
年配の女性の神エクセリス・セオスに言う。
「いったいどんな進化を辿るかなぁ?33界みたいな感じだと面白いね!」
それを聞いたエクセリスは少し驚いたように答える。
「33?・・第33番世界“シキ島”ですか?・・てっきり107界“メジューワ”をお気に召して居られると思っていましたが・・」
「それはそうだよ!“メジューワ”が一番のお気に入りさ♪」
セオスは笑顔のまま答えると続ける。
「・・でも、33界は他の世界と違って明らかに異質・・その進化の速度もね♪」
「・・確か“獣人”と呼ばれる存在でしたね・・」
セオスは遠くを見つめまじめな顔で答える。
「どの世界も、僕の姿形に似た“人類”が誕生する・・でも33界は、他の世界で言う所の“動物”と“人間”の混合種のような“人類”が誕生して、その進化の速度も他に類を見ない・・・まっ、他の世界がまだまだなだけかも知れないけどね♪」
セオスはパッと笑顔に戻ると、エクセリスに視線を移し
続ける。
「それはそうとエクセリス♪」
「はい、なんでしょう?」
セオスはどこからともなく水着を取り出し続ける。
「さっそくこの海を一周泳いでみよう!」
「えっ・・」
エクセリスはセオスの手にあるビキニを見て
慌てて言う。
「ちょ・・ちょっと待ってくださいセオス様!私はトゥルチアやアルモニアの様に若い姿ではないのです・・さ、さすがにちょっと・・・」
「なーに言ってんの♪美人でスタイルがいいのは知ってるんだよぉ!」
「いえ・・そういう意味ではなく年相応のぉ・・」
「いーからいーから♪ねっ!一緒に泳ごーよ!」
「ちょ!セオス様!いや・・ちょっ!・・あ~~れ~~・・」
~異世界メジューワ、コパローナ国オニカ中央街~
~モンテイロ邸~
一国の要人であるアルファド・モンテイロ。
彼の邸宅は、他国の要人たちと比べて、
明らかに小さく、こじんまりしていた。
~モンテイロ邸・書斎~
広々とした書斎。
「・・ふむ・・」
そこで報告書に目を通していたアルファド。
その部屋は、小さな外見の建物を優に超えているほどの広さがあり
豪華な装飾も施されていた。
報告書を読み終えたアルファドは
電話を手に取ると、どこかにかける。
トゥル・・トゥル・・
ガチャ・・
「・・・」
無言の相手にアルファドが言う。
「・・Yじゃ」
「・・何かあったか?」
「ひゃひゃ・・Z・・そちらにも情報は行っとると思うがのぉ・・」
「・・・RKW遺跡地下施設・・そこに近づいたものが居るという話か?」
「ふむ・・それに付随する話じゃ・・報告書によると、時を同じくして、リベロットとコパローナの繋がりを知るものがリデニアにて拘束、罪状はリデニアの冒険者に対する拉致監禁暴行殺害・・そして夕刻コパローナに引き渡された・・」
「・・・」
何も言わないZにアルファドことYは続ける。
「リデニア側からは当然、犯行に対する強い非難と、引き渡した犯人に対する厳罰・極刑を求める声・・至極普通の手続きが行われた後・・カーリー君主が即座に斬首刑を宣言・・引き渡しで来ていたリデニアの使者の前で執行されたようじゃ・・」
「・・早まったな・・K・・拷問でもして何を話したか聞きだすべきだった・・」
Zの呆れたようなつぶやきに、
アルファドは不敵に笑う。
「ひゃっひゃっひゃ、わしもそう思ったのですが・・実は、即処刑を提言していたのはわしじゃ・・」
~回想~
バタン!!
「ラーコス!!」
ラーコス/アルファド「?」
カーリーが勢いよく扉を開け、
血相を変えてラーコスに詰め寄る。
それを見たラーコスが飄々と言う。
「・・捜査課はなんと?」
「あなたの想像とは違い!モーフィスを含む3名を拘束しているとリデニアから連絡があったそうです!その引き渡しの連絡でした!」
「・・・」
何も言わないラーコスにカーリーはさらに詰め寄る。
「何をそんなにのんびりと!・・すべての情報が漏洩したと見て間違いないのでは!?」
カーリーの剣幕を他所にアルファドが質問を飛ばす。
「罪状はなんじゃ?」
「え?・・ふぅ・・」
カーリーは落ち着くように息を吐き続ける。
「リデニアの冒険者を拉致監禁、強姦を含む暴行・・そして殺人です・・」
「(・・リベロットの名すら出てこぬか・・)」
黙って聞いていたラーコスが重い口を開ける。
「・・まぁ、考えられるのは一つでしょうなぁ・・」
「・・と言いますと?」
ラーコスの言葉にアルファドが聞き返すと、
答えるように語りだす。
「・・奥歯に仕込んだ毒物・・拘束と同時に口元をも猿轡のようなもので縛ると服毒できず自殺できない可能性は高いでしょうなぁ・・」
「そんな簡単なことで!?・・何を飄々と・・」
絶句するカーリーを他所にアルファドが補足するように言う。
「・・なるほどのぉ・・つまり、情報は漏洩しとらんと?モーフィスに何かを話させようと、せっかくの猿轡を取ってしもうたら、たちまち服毒し死ぬと?・・」
「・・そういうことになりましょうなぁ・・生きて引き渡しがある以上、服毒のタイミングがなかった・・つまり、拘束されてから一度もしゃべれなかったと言うことになりましょうなぁ」
「はぁ?・・」
「ふむ・・(あまりにも都合の良い解釈じゃ・・・)」
ラーコスは落ち着いて続ける。
「まぁ、そんなに心配なのであれば、引き渡し後拷問でもして何を話したか聞いてみてはいかがですかな?カーリー君主・・」
「う・・」
ラーコスの冷たい視線を見たカーリーが
尻込みをすると、アルファドが言う。
「・・いや・・通例通り即処刑したほうがよかろう・・」
ラーコス/カーリー「?」
アルファドは続ける。
「・・もし、もし仮にじゃ、モーフィスから情報が漏洩しとったとする・・その場合、犯罪組織リベロットに繋がる重要参考人じゃ・・しかし通常の手順で引き渡しに来るとなると裏があると感じる・・」
「裏?」
カーリーの疑問に答えるように
アルファドは続ける。
「・・こちら側の反応をみとるのじゃ、この手の凶悪事件の場合、国家間の問題に発展せぬよう即審判を下すのが通例・・それをせず一度こちらが犯人たちを連れ去ると不自然じゃ・・“コパローナにとって犯人達は特別なのか?”と勘繰られるやもしれぬ・・完全に興味がないと示しておいたほうが無難じゃ・・」
「・・考えすぎのような気もしますなぁ・・まぁ大方モーフィスたちは口元を拘束されしゃべる事も出来ぬ状態で引き渡されるでしょうなぁ、であれば、リデニアで逮捕された時からその状態で、一度も外されていないとみて間違いないでしょう・・生きているのが何よりの証拠、生ごみとして即処分も良いでしょうなぁ」
~回想終~
~リデニア国首都クヨトウ中央街~
~クヨトウ公営ギルドS型事業局~
~マスター室~
モーフィスらの引き渡しに同席した
捜査課ブロードが、報告のためヴィーロ局長の元へ
訪れていた。
「・・・即処刑を執行したか・・俺の想定とは違った形だが・・」
そのヴィーロの言葉を聞いて、
ブロードも同意する。
「そうです・・私も一旦連行されると考えていました・・モーフィスの証言が事実であれば、カーリー君主目線、何が何でも知りたかったはず・・話したのかどうかを」
「うぅむ・・・」
ヴィーロは一考して、ブロードに確認する。
「・・・引き渡してから処刑までの間に会話する間や時間は、本当になかったのか?」
「・・ありません、両手両足の枷と共に猿轡で口を塞いでいました・・“魔導欠滅牢”から引っ張り出されたモーフィスたちは、その瞬間斬首・・そもそも接近すらしていません・・」
「・・通例通りか・・他の犯罪者たちと何ら変わらぬ手順・・」
「カーリー君主は全く興味がないように見えました・・」
「・・・」
ヴィーロは更に一考して、呟く。
「・・教授は・・シェンター殿はあのように言われたが・・カーリー君主との繋がりは無いのかもしれぬ・・」
それにブロードも追従する。
「正直私もそう感じています・・リベロットとの関係はあるにせよ、コパローナの侵略戦争は嘘・・・だとしたらリベロット事件の重要参考人でしかなかった・・」
「犯罪組織リベロット関連なら国家間引き渡しの必要性はなく、世界冒険者協会主体の元捜査協力を依頼するだけでよかった・・」
「みすみす参考人を処刑させることになってしまいました・・」
「・・まぁいい・・地下施設の件はほぼ確定的と言っていた、それはモーフィスの証言とは別口からも情報を得ている・・裏取りも含め準備は進める・・ブロード、明日にでも王将らに現状の報告を頼みたい」
「承知しました・・」




