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魂魄③

「ッつぅ・・」

シールド迄吹き飛ばされていたアンプレスは

立ち上がりつつテナクスへ視線を向ける。

しかしその眼は力量差で悲観した目ではなかった。

「(・・惜しかった・・もっと・・もっと速く・・)ふぅ・・・」

アンプレスの目には膠着状態の三者が

にらみ合うのが見える。

「(待ってろ・・今すぐ俺が突破口を開いてやる・・・)」

アンプレスは脚力強化の“駿足”を発動すると、

槍斧をテナクス目掛けて投げた。

地面と水平に真っすぐ飛んでいく槍斧に

テナクスは気付き盾を構える。

その動きを察知したフィニクシーとソロルも

チャンスを見逃さぬよう身構える。

フィニクシー「(ライス!)」

ソロル「(シャリ!)」

アンプレス「(瞬足!)」

駿足を発動しているアンプレスが、

更に瞬足を発動させると。

自信の投げた槍斧に追いつき、

その軌道を上空へと変化させた。

テナクス「(ふむ・・)」

次の瞬間、落雷が起きる。

それはテナクスへではなく、

上空を飛び去ろうとしていた、

アンプレスの槍斧に直撃。

瞬間槍斧の軌道は変化し、

テナクスへ向けて雷鳴の如く落ちた。

ドゴォォン!

しかしテナクスはアンプレスの虚を突いた

トリッキーな上空からの攻撃を、

盾で防いでいた。

「(ふむ・・重・・な!!?)」

テナクスが気付いた時には、

アンプレスが懐で左拳を握りしめていた。

刹那、テナクスは嬉しくなっていた。

「(ここ数十年、ここまで侵入してきたものは居なかった・・)」

「(防いでくれると信じてましたよ!)」

アンプレスは握りしめた左拳をテナクス目掛けて

打ち抜いた。

しかしテナクスは身体をねじり、

その拳を躱す。

そして先ほどと同じ様に、

盾でアンプレスを弾き飛ばした。

それと同時に技能を発動させる。

「(“武術・剛”)」

テナクスは覚悟を決める。

もし仮に自分が襲い掛かる槍斧を防がなければ

アンプレス自身に降りかかりかねない、

その位置への侵入。

その諸刃の剣を振るったアンプレスにより

不落の要塞は崩された。

盾術に回避の型は存在しない。

今この瞬間、本来の型から逸脱している。

アンプレスに合わせ、2匹の召喚獣も動いていた。

その角に十分な魔力を充電しているシャリは

次の瞬間にも突進してくる。

背後に回りこんでいたライスは、

その鋭い前足をまさに振り上げていた。

「(・・被弾する・・)フン!」

テナクスはアンプレスを薙ぎ払うため

振り抜いていた盾を持つ左腕に力をこめると

背後に居るライスからの攻撃に盾を備える。

同時に体中に雷属性魔法を展開し、

シャリの攻撃に備えた。

再びシールドまで飛ばされていたアンプレスも

起き上がりつつその光景を見つめる。

「(頼んだぞ二人とも・・)」

バギィィン!!

「(ぐ・・重い・・)」

ライスの攻撃を、テナクスは辛うじて盾で防いだ。

しかし無理を強いた腕は限界に近く

体が硬直してしまう。

“武術・剛”

技能の発動で自身の身体強度を最大限高め、

物理的な攻撃への防御力も高めていた。

まさにその身そのものを盾とすべく。

シャリはライスの攻撃に合わせ“瞬足”を

発動させていた。

対象にその角を突き立てるために。

ドス!!

一同「!!!」

ソロル「・・・」

シャリの角は、

ライスの横腹に突き刺さる。

そしてパジャードックを葬った時以上の

放電がライスを突き抜け、

反対側のシールドに到達していた。

ライスは放電した側の半身が吹き飛び、

ドシン・・

白目をむきが力なく地面に倒れた。

力尽きたライスを他所に、

シャリはゆっくりとテナクスを見据える。

「!!・・・その目・・(攻撃対象を間違えたわけではないようだな・・)」

アンプレスも遅れて思考が追いつく。

「ま・・まさか・・シャリお前・・・」


「なかなかの“たぬき”だな・・」

フィニクシー「・・・」

一部始終を見ていたナトスが呟くと、

嫌味を言われたと感じたソロルがすまし顔を浮かべる。

「へんな言い方やめてくれる、“したたか”って言ってよね」

「お姉は気づいてたの?このシャリちゃんのプラン」

「まぁ、意思は伝わるからね」


シャリには自信があった。

ソロルパーティー最強の矛である自分の攻撃なら

この男、テナクスの防御を突破できると。

ピキキッ・・

シャリの雷撃が直撃したシールドにヒビが入る。

テナクス「(お、おいおい・・それは俺でも防ぎきれんぞ・・・)」

アンプレス「(食らったらひとたまりもない!!)」

それを見たテナクスとアンプレスが狼狽える。


シャリは自信がなかった。

面と向かった状態で攻撃を当てることが困難だと。

この中で一番速度が遅いのはテナクスだが、

次点では自分自身。

ライスとアンプレスには攻撃を当てるどころか、

防御力にも自信がない自分が圧倒的に不利だと、

そう考えていた。

テナクスの防御力を目の当たりにした瞬間、

おそらく3対1の構図になる。

テナクスを先に処理すべきだと

みんながそう動くはず。

シャリ自身も一瞬そう考えた。

だからこそそれを逆手に取った。

人数が多い状態で、

自分へ意識を割くのが困難な時に、

ライスとアンプレスを先に処理したいと。

最初の標的はライス。

そしてシャリの“したたかな”作戦は実を結んだ。

しかしここから、

シャリも予想しなかった状態を生んでしまう。

いや、起きてしまえば至極当然。

テナクスの圧倒的な防御力を目の当たりにし、

結果それが起きたのだから。

テナクス「(ふ・・うむ・・・あの出力での攻撃・・厄介だ・・)」

アンプレス「(不意の横やりですべてひっくり返される・・危険だ・・・)」

シャリの圧倒的な攻撃力を目の当たりにした二人は、

図らずも思惑が一致する。


「なかなか聡明ですね、シャリは」

フィニクシーがシャリを褒めるように

笑顔でソロルに語り掛ける。

「フィニクシー様・・」

ソロルは勝負とはいえ尊敬するフィニクシーの

二番獣ライスをシャリが倒したことに

複雑な表情を返した。

フィニクシーはすぐにまじめな表情で続ける。

「しかしここが正念場ですよ」

「え?・・」


「“槍術”!」

アンプレスが槍斧を持ち

テナクスへ襲い掛かる。

「“盾術・極”」

カン!カン!カン!

キン!キン!キン!

アンプレスの無数の突きを

テナクスは盾で防いでいく。

シャリはチャンスを伺うように、

雷撃をテナクスへ向けて放つ。

シャリは次の標的を決めていた。

度々ダメージを追っているアンプレスより、

テナクス王将。

彼の体力を大きく削っておきたい。

アンプレスがテナクスへ向かって乱撃を放つのは

好都合だった。

シャリは一定の距離を保ったまま

アンプレスのサポートをするように

雷撃の横やりを繰り返す。

バキン!

テナクスがシャリの雷撃を防いだ瞬間に合わせ、

アンプレスは大きく沈み込み、

槍斧に力と体重を乗せ突き出した。

テナクスは気づいていた。

アンプレスのすべての突きが本気ではないと。

当然この強攻撃も。

むしろこれは合図。

テナクスは盾の遠心力で

アンプレスの槍斧を跳ね上げる。

バゴォ!

アンプレスの槍斧は

シャリへ向けて飛んでいく。

「“駿足”!」

アンプレスは飛び上がると、

自身の武器を追う。

シャリはそれを見上げるように

目で追っていた。

何かがおかしい。

シャリは疑問に思う。

この男、アンプレスはこの中でも飛びぬけて速い。

冒頭、自身が駿足でテナクスへ駆け寄るとき、

後から追従したはずのアンプレスは、

余裕で自身に追いつき、

果ては、その背中をけって飛翔して見せたのだ。

遅すぎる。

武器を追うアンプレスの速度が、

遅すぎる。

ドゴォォン!

次の瞬間、アンプレスの槍斧に落雷が起きる。

槍斧は空中で急激に進行スペードと角度を変え、

シャリの頭上に降り注いでいた。

ソロル「シャリ!!」

しかしシャリは間一髪、

その身を翻し、ギリギリで躱し、

槍斧は地面に突き刺さる。

違和感に気付けたシャリは、

アンプレスの虚を突いた攻撃を回避できていた。

「どこを見ている!」

バゴォ!!

しかしシャリは強烈な一撃を顔面に受けてしまう。

アンプレスに気を取られたシャリはテナクスの接近に

気付けなかった。

シャリはテナクスの盾で

顔面をかちあげられる。

シャリは強制的に天を仰いでいた。

視界に移る上空の影。

アンプレスを見たとき気付く。

二人は共闘して自分を狩りに来たのだと。

ドゴォォン!

上空の影に落雷が起きる。

次の瞬間アンプレスは、

地面に突き刺さる槍斧の隣にしゃがみ込んで居た。

アンプレスは槍斧を握ると技能を発動させる。

「“斧術・斬”!!」

アンプレスは槍斧を抜きつつ遠心力で加速していく。

テナクスは、かちあげた盾の裏に右手を差し込んでいた。

そしてそこから長剣を引き抜く。

「“剣術・極”!!」

シャリはその場で踏ん張り、

バランスをとるのがやっとの状態だった。

左前方からテナクスの斬撃、

右後方からのアンプレスの斬撃。

シャリは悟る。回避できない。

ソロル「シャリ!」

シャギィィィィン!!

テナクスの剣とアンプレスの槍斧が

シャリの同体で交差し、

けたたましい音と衝撃波を発生させ、

同時にシャリは消滅する。

マーク「召喚獣シャリ消滅!リタイア!」

審判のコールが響く中、

ミノアが異変に気付く。

「(ん?・・・あの位置って・・・)」

ミノアは、中庭の一角を指さし、

ナトスに声をかける。

「兄さん、あれ」

「ん?」

ナトスが確認すると、

こんもりと土が盛られた場所に

一匹の子犬が座っていた。

「・・あぁ・・あれは“たぬき”だな・・」

「え!?チワワにしか見えないよ」

フィニクシー「・・・」


キィィン・・・

テナクスは、痺れる右腕を見つめていた。

「(・・・その武器・・・)」

テナクスは、槍斧に体重をあずけ、

肩で息をするアンプレスに視線を向ける。

テナクスにはプランがあった。

そのプランでは、今この瞬間、

アンプレスは武器を失い、戦闘不能状態、

つまりリタイア、決着となるはずだった。

「(・・俺の愛刀“リーオ”・・交差し折れなかった武器はチチウス以来か・・・確か24歳と言っていたが・・その歳で・・・)」

テナクスは笑みを浮かべる。

「(チチウスよ・・お前の一番弟子アル・・・彼の息子はかなりの武人だぞ!・・・)」

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