特異点①
~トレーニングルーム~
「何だ?こっそりこんな所へ呼び出して・・」
アンプレスとナトスは
トレーニングルームへ来ていた。
「一つ確認したい事がある・・恐らく、俺とミノアにとって極めて重要な事だと思っている・・」
いつになく真面目な表情のナトスに、
アンプレスも真面目に応答する。
「・・・何だ?言ってみろ・・」
「・・アルフィーン・・・過去について・・」
「・・・」
アンプレスは何も言わずナトスを見据えると
おもむろに肩を回し、ストレッチを始める。
「・・・お前かミノアか・・どちらかとは拳を交えたいと思っていた・・」
「・・・」
何も言わないナトスに
アンプレスは続ける。
コキッ・・コキッ・・
「行くぞ・・ナトス!」
~洋服店“舞々”~
社屋に近い洋服店に女性陣に付き沿う形で
来ているミノアは店の前で、
沈みかけの太陽を眺めていた。
そんなミノアにロレーヌは声をかける。
「・・さっきは感情的になって悪かったわね・・」
「え?・・あぁ・・兄さんも酷かったし・・所長が謝る事じゃないよ・・」
それを聞きロレーヌは疑問を投げかける。
「・・ナトスが感情的になってるって・・言ったわよね?」
「・・そうだね、間違いなく兄さんは感情的になってたよ・・」
「・・そう・・私ね、ナトスと言う人物がわからなくなってしまった・・今日は色々起きすぎてる・・私なんかが理解しようとするのがそもそも間違いなのかも・・」
「・・(ロレーヌさん・・・)」
すると店の中から声が響く。
「ロレーヌさん!かわいい服いっぱいありますよ!」
「そうだぜ姉御!時間が無いんだしさっさと服選ばないと!」
「はいはい・・」
ロレーヌは女性陣に連れられて店の中へ入っていく。
ミノア「・・・」
~S&Sトレーニングルーム~
「おら!・・せい!・・は!・・ふん!・・し!・・・・」
ジャブ、ストレート、前蹴り、回し蹴り・・
手刀、突き・・
あらゆる攻撃、虚を突いた攻撃・・
そのすべてが空振りに終わる。
「はぁ・・はぁ・・どうしたナトス!攻撃してこない限り、俺が過去を話す気になんてならないぞ!」
「・・・」
ナトスはアンプレスの攻撃を
只々かわし続けていた。
「おら!」
ヒョン!
「せい!」
シュン!
アンプレスの鋭い攻撃が
空を切るたび、
その音からもかなりの威力と速度を感じ取れる。
しかしそのすべてがナトスには当たらない。
「・・お得意の未来視か!」
グッ・・
ナトスは右こぶしを握ると、
アンプレスの顔を大きく外れた空間を
打ち抜いた。
ズバン!!
「!!!?」
その轟音を聞いたアンプレスの動きが
一瞬硬直すると、
ナトスはアンプレスを地面へねじ伏せる。
「・・こんなことをして何の意味がある・・」
アンプレスは直ぐに力ずくで起き上がると、
ナトスへ言い放つ。
「昔っから男同士は拳で語り合うと相場が決まってんだよ!ここじゃ本気が出せない!屋上へ移動だ!」
「・・フ・・」
ナトスは一瞬笑みを浮かべると、
アンプレスの背後へ瞬時に移動し、
アンプレスの肩に手をかけた。
その瞬間アンプレスの視界は
トレーニングルームから屋上の風景へと変わり、
瞬間移動したのを理解した瞬間、
背後のナトスへ裏拳を飛ばした。
「おらぁ!」
ビュン!
アンプレスの裏拳は空を切ったが、
すぐに技能を発動させた。
ビリ・・ビリビリ・・ビリリリ!
「・・雷属性魔法・・・」
ナトスがそう呟くと
アンプレスは言う。
「・・行くぞナトス・・」
シュパン!
雷属性魔法を全身に張り巡らせたアンプレスは、
シャリさながら“瞬足”でナトスに詰め寄り、
右こぶしを打ち抜いていた。
しかしナトスはその拳をも躱す。
バチチ!
「!?」
しかしその瞬間、
アンプレスの纏う雷が、
ナトスの視界を奪った。
それを見越していたアンプレスは、
左拳に全体重を乗せる様に、
渾身の正拳突きを、
目の眩んだナトスの顔面へ
振りぬいた。
ドゴ!
バチチチチチ。
その攻撃を、もろに受けたナトスは、
全身を電撃が駆け巡りつつも
平然と立っていた。
「・・・」
何も言わず立ち尽くすナトスに
アンプレスは雷撃を解除しつつ言う。
「・・・何でわざと受けた?・・未来視があれば簡単に避けれただろ・・・」
「・・わざと受けたわけじゃない・・俺自身アンの気持に答える方法がわからなかった・・ただ、“先見”を・・未来視を使用することは、アンの気持ちを踏みにじるのではないかと最初から感じていた・・それだけだ・・」
「フン・・最初っから未来視無しで攻撃の全てを躱してたってことだな・・はいはい・・それはそれで納得ですよ」
アンプレスが観念したようにそう言うと
ナトスは言う。
「・・アンの拳を受けて気付いたよ・・アンの過去を知りたいのなら、先に自分の事を話すべきだったと・・」
「ん?」
アンプレスが疑問の声をあげると、
ナトスは続ける。
「・・今から見せる姿は、最初で最後・・言わばこの世界で知るものはアンただ一人・・」
「な・・何の話を・・」
「俺とミノアが“神使”となった時の本当の姿・・・力を解放すると、その姿は現れる・・」
バチン!
バチン!バチン!
空間がゆがむように
何もない所から音が響くと、
「(何だ・・はっ!!)」
ズン!!
重くのしかかるような異様な空気に包まれ
アンプレスは目を見開く。
「!!!(な、何だこれ!?く、黒い・・・)」
~洋服店“舞々”~
「はっ!・・に、兄さん!?」
ゾワッ・・
ソロル一同「!?」
パッ・・・
ソロル達が異変、悪寒に似た何かを
感じた瞬間、洋服店の明かりが落ち停電が起きる。
そして、それはソロル達だけではなかった。
トコーナ「ベ、ベネーさん・・何でしょうこの悪寒・・」
ベネー「・・わかりません・・」
停電しているのも洋服店だけではなく、
女性捜査員「停電!?・・珍しいですね・・」
ブロード「・・・」
クヨトウ南街全域に上っていた。
~魔電供給南社~
管理者「な、何事だ!?原因は何だ!」
作業員A「わ、分かりません!魔力変動値に異常が!」
作業員B「電話関係も軒並み停止しています!」
キィィィィン。
甲高い耳鳴りの様な音の中、
ナトス「・・・・・」
アンプレス「・・・(ミ、ミノアに!?・・・)」
アンプレスは息を飲み、
ナトスの話に耳を傾けていた。
~転移サービス統括本部~
管理者「何でSゲート全域止まってるんだ!」
作業員A「魔力変動が不安定に・・原因は不明です!」
作業員B「停電も起きています!魔導関連すべてが止まっているんじゃないでしょうか!」
作業員C「し、しかし何でしょうさっきの気配・・良くない事の前触れじゃ・・」
管理者「無駄話は良い!さっさと復旧を!」
~洋服店“舞々”~
「こ、怖い・・」
停電の中ピューネが不安の声を漏らすと、
外を確認したソロルが、
皆の元へ近づきつつ言う。
「ここだけじゃなく全部が停電みたい・・」
パッ!
「あっ・・ついたね・・・」
~S&S社屋上~
「・・かはっ!・・はぁ・・はぁ・・・(い、息をするのを・・・忘れていた・・・)」
元の姿に戻ったナトスが、
肩で息をするアンプレスに言う。
「・・アンが孤児院に居たのは知っている、質問を変えるが・・そもそもアンが孤児となった理由は何だ?・・詳しく知りたいわけじゃない、俺は確認したいだけなんだ・・」
「・・はぁ・・・はぁ・・・」
徐々に呼吸が戻るアンプレスに
ナトスは続ける。
「・・20年前・・つまり、アンが4歳の時に孤児になったんじゃないか?・・恐らく原因は、遺跡・・」
ナトスの話を静かに聞いていたアンプレスは、
大きく息を吐き、答える様に語りだす。
「・・・ふぅー・・俺はアモリアの北部、ATNコロニーで生まれ育った・・そして4歳の時・・両親と共に・・その平穏は消え去った・・突如現れた魔獣によって・・」
「・・・」
静かに聞き入るナトスに
アンプレスは続ける。
「・・フン・・ナトスの言う通り、遺跡が原因だ、そこに遺跡があるのを知らずにコロニーが出来、ある日魔獣が這い出てきた・・・正直20年も前で4歳の頃だ、記憶何て大して残っていない・・ただ・・その名で呼ぶのはやめてくれ・・大事な人を失った悲しみを思い出してしまう・・・」
「・・わかった・・気安く口にした事を謝るよ・・」
「・・さて・・ナトスの知りたかったことは確認できたのか?」
「まぁ概ね・・」
「んだよ、他に気になる事あるのか?」
「・・・やめとくよ、至極個人的な事だしな」
ナトスがそう言うと
アンプレスはヤレヤレと言わんばかりに
続ける。
「・・この際だ、聞きたい事があるなら聞いて良いぞ・・話すかどうかは別だがな・・」
それを聞いたナトスは一拍置いて
質問を飛ばす。
「・・・アンプレスと言う家名を、自分の名として残した理由が気になっている・・」
アンプレスは少し考え込み
笑みを浮かべ答える。
「・・・さぁな、覚えていない・・真鑑定・極を発現させたのは4歳のその時・・当時の俺の気持ちなんて忘れたよ・・」
「・・フ・・」
「なんだ、含みのある笑いだな」
ナトスは笑みを浮かべたまま
続けて語りだす。
「他意はない・・因みにアンの復讐の対象リベロットだが、俺とミノアの標的である特異点との繋がりを見つけた・・さらに、20年前に発見されたとされる遺跡もな・・・」
「何だって!?」




