暗躍⑤
「・・勝算・・王将は先ほど“それに賭ける”と表現された・・つまり勝算があったはず・・少なくとも俺とミノアが動く根拠、それに近しい何かを持っているのでは?・・」
「ん?」
「王将は気付いておられぬ・・」
テナクスが頭に?を浮かべると
シェンターが割って入り続ける。
「この会を企てたのはわし・・そしておぬしの言う根拠を持ち得ておる・・」
それを聞いたナトスは薄笑みを浮かべ言う。
「フ・・シェンター殿も人が悪い・・早くお二人に話してあげれば良いものを・・」
「ふぉっふぉっふぉ、お互い様じゃのぉ・・おぬしも敢えて、ミノアの言葉を肯定したじゃろ」
ミノア/フィニクシー「え?」
テナクス「敢えて?」
ナトスが続ける。
「フ・・肯定したのは“戦争とは”についてのみです」
「ふぉっ・・確かにそうじゃ、がしかし・・じゃろて」
「フ・・おっしゃる通り、悪い癖が出てしまいました」
「ふぉっ・・わしもまぁ、あえて言わんかった節はある」
二人のそんなやり取りを見ていた
ミノアが状況を察し割り込む。
「ちょ、ちょっと兄さん・・悪い癖ってまさか・・なんかあるの?あるんだったらちゃんと教えてよ」
「そうですよシェンター!また二人で話を進めて・・敢えて言わなかったとは何のことですか!?わかるように話してください!!」
ソロル「へ?・・フィ・・ニクシー様?・・」
ロレーヌ「(二人は一体どういう・・ボスを怒鳴る?・・・)」
ミノアに続きフィニクシーが
シェンターへ怒鳴るように言ったことに
ソロル達が違和感を覚える中
テナクスが疑問を投げかける。
「・・もしや、力を貸してくれるということなのか?我々側、リデニア国に付いてくれると?・・・」
「そ、そうなの兄さん?・・」
ミノアも重ねて疑問を飛ばした。
「・・それは無い・・」
ナトスが明確にそう返答すると
テナクスとフィニクシーは肩を落とした。
ナトスは暗い表情のテナクスに続ける。
「・・王将も御存知だとは思いますが、俺とミノアが動くのはそれが特異点へとつながる場合のみ・・話は途中でしたが、俺は俺達への繋がりを追うことでそれを探していました・・事件のほうはモーフィスから得られた情報は少なくその時点で足止めでしたが、もう一つ別の足取りを同時に追っていました・・」
「高レベル魔獣・・オラン・アームレッドね」
ロレーヌがそういうと
ナトスは頷き続ける。
「・・ソロちゃんの命を二回も奪いかねなかったその魔獣に少なからず因縁めいたものを感じていた・・その魔獣の発生源・・それを追うことでRKWコロニー跡へたどり着いたわけだが、反響索敵で中を確認したときに、モーフィスとつながった・・つまり事件と・・」
「リベロットの運び屋モーフィス・・リベロットの施設ね・・」
ロレーヌの言葉に
ナトスは頷き続ける。
「・・俺の反響索敵には付加効果があり、索敵範囲に人間がいた場合、その人物の話し声を聞き取ってしまう・・何かしらの儀式めいた行いをしている施設だったが、中にいる人物の話し声からリベロットの隠れ家的なものだと断定・・そしてもう一つ異様なものも把握できた・・」
「・・異様なもの?・・」
フィニクシーがそういうと
ナトスは頷き続ける。
「・・索敵時間は6秒ほどでした、範囲はおそらく40%未満・・しかし、1000体を超える魔獣・・それが地上の廃墟群を闊歩しているのを確認してます・・おそらく全体では3000体近い数・・」
ソロル「さ、さん!?・・・」
ロレーヌ「3000!?・・」
テナクス「(すでにそこまで・・・)」
フィニクシー「(カーリー君主の力は本物・・・)」
シェンター「(・・早すぎる・・・)」
ナトスは、
驚きのあまり絶句する
ソロルとロレーヌ、そして
明らかに二人とは反応の違う
テナクスたちを見渡し、
質問するように続ける。
「・・・因みに所長へは“魔獣の巣窟と化していた”とだけ報告しています・・当然ベネーさんへもそうなっているはず・・・考えられるのはモーフィスの証言・・これに魔獣の件が含まれていたのであれば、この群れが戦争とかかわりがある・・という事ですね?」
「・・わしらの反応から知っていると感じさせたかのぉ・・その通りじゃ、あくまでもベネーは、それなりの魔獣が居る程度の印象しかもっておらんかったじゃろう・・しかし、その直前に捜査課から聞いとったモーフィスの証言は“3000体を超える魔獣の群れ”とあったそうじゃ・・」
シェンターがそう言うと
テナクスが続ける。
「・・この魔獣の群れが、ここクヨトウとオファククへ押し寄せる・・我々はその対応に追われるだろう・・それに乗じる形で侵略を開始する計画・・オファクク側にある国、コパローナから・・」
「コパローナ・・」
ソロルがそう呟くと
ロレーヌが疑問を投げかける。
「・・え?でも、コパローナが侵略をするなら一番近いオファククを最初に落とすはず・・でもそこは魔獣の群れが押し寄せる危険な場所になっているのでは?・・」
「た、確かに・・」
ソロルがそう呟くと
フィニクシーがソロルへ質問する。
「・・ソロル、高レベル高知能の魔獣が自分よりレベルの低い魔獣を従える事があるのを知っていますね?」
「え?・・あっ、はい・・遺跡がその典型だと言われています・・核を持つ最下層の高レベル高知能の魔獣が遺跡内の魔獣を従えていると・・」
ソロルが答えると
フィニクシーは続ける。
「それと同じ原理でしょう・・この押し寄せる魔獣、数百体に一体、リーダーとなる高レベル魔獣が居るそうです・・その魔獣が侵略のタイミング方向を魔獣の群れへ指示するのです・・コパローナがオファククに攻め入る時、魔獣の群れは方向をクヨトウへ変更・・コパローナもその後に続き、クヨトウへ攻め入る・・あくまでも魔獣はリデニアの戦力を削ぐための陽動・・・」
「え?ちょ、ちょっと待ってください、そんに都合よくコパローナ有利に魔獣が動くなんておかしいです!自分が召喚した魔獣じゃあるまい・・し?・・はっ・・」
ソロルが言葉を詰まらせると
フィニクシーは続ける。
「・・やはり、同じ召喚士としてそこへ視点が向きましたね・・いまソロルが感じたまさにそれです・・魔獣の群れを率いるリーダー格の魔獣、これが召喚士と主従関係にある魔獣なら理論上可能・・」
「・・か、可能・・ど、どうだろ・・やっぱり無理なんじゃ・・だって、明らかに私のシャリより力量の劣る魔獣が、シャリを相手に尻尾を巻いて逃げたり戦意を失ったり・・ましてや従おうとした事なんて一度も無い・・たぶん・・そう、レベルの概念がないから・・召喚獣が魔獣を従える事なんて出来ないはず・・」
「・・私の召喚獣も同じです、だから最初にこの話を聞いた時否定的な意見を述べました・・しかしその後に気付いたのです・・ソロル、あなたはレベルの表記があるものを召喚しています」
「!!」
ソロルが言葉を失うと
ロレーヌが代弁する。
「ナトスとミノア・・・」
フィニクシーは頷き続ける。
「・・例えば“デンスティア”に存在する高レベル高知能の魔獣を、主従関係にある自身の召喚獣として召喚する・・そんなことあるはずがないと、あなたの口からは到底言えないのでは?・・」
「・・コパローナの・・た、確か代表のカーリー君主は・・召喚士・・・」
ソロルがそう呟くと
テナクスが思い出したように補足する。
「・・うむ、そうだ・・そして女神の加護ゼイアを持っている・・」
ソロル「え!?」
ロレーヌ「!?」
ナトス/ミノア「・・・」
ソロルとロレーヌは反射的に
ナトスとミノアに視線を向けていた。
何も言わない二人だったが、
その表情は対照的で、
少し怖いと思わせるほど
険しい表情のミノアと
薄笑みを浮かべたナトスだった。
ソロル「(・・加護・・なら、私はカーリー君主を助けないといけないの??・・)」
ロレーヌ「(・・状況的に敵対関係・・矛盾しかねない・・・)」
ソロルとロレーヌが困惑していると
それに気づいたナトスが口を開く。
「(・・確定的だな・・)・・シェンター殿があえて言わないでいた“根拠”はこの事ですね?」
「・・ふむ・・まぁそうじゃな・・この状況でそれを言ってしまう事に抵抗があった・・何と言うか・・こちらの都合でおぬしらを利用するような・・そう言う状況を作る様でのぉ・・・」
「フ・・シェンター殿の“美学”・・ですか・・」
「ふぉっふぉっふぉ、なるほどのぉ、そうか“美学”か・・なんとまぁしっくり言葉じゃて・・・その美学故、おぬしの洞察力にこれ以上甘える訳にはいかんと思うとる、おぬしの持ち得ている情報ではもしかしたら確定的と判断して居るやもしれん、しかし待ってはくれぬか?協力者としての責務・・それを果たしたい・・」
「・・と、言いますと?」
観念したように語るシェンターの言葉に
ナトスがそう質問を飛ばすと、
シェンターは一拍置いて答える。
「・・・この世界の特異点、それが誰なのか特定しよう」
それを聞いたナトスも一拍置いて答える。
「・・・なるほど・・だとしたら急がれた方が良い、モーフィスの証言に3000体と具体的な数字があったのならそれが作戦内の具体的な数値・・もともとあの場所にそれだけの魔獣が居たとは思えない、恐らく戦争の為準備されたもの・・つまり、すでに完了している可能性がある・・」
「・・ふむ、明日にでも開戦・・そうなる事も有ると言う話じゃな?しかしそこは安心して良い、開戦は12月11日以降じゃ・・まぁ作戦自体に変更があった可能性は極めて高いがのぉ、日時がそれより前倒しされる事は無い・・」
「・・なるほど・・だとしたら準備が早すぎる・・そして日時ではない何かの変更があった可能性が高いのなら・・」
「・・そうじゃのぉ、わしも早すぎるとは思ったが、作戦の変更があったのが・・」
ナトス/シェンター「3000体の方・・」
「とするなら、まだまだ準備段階・・といえるかのぉ・・」
フィニクシー「はぁ・・」
テナクス「び、美学?・・・」
ミノア/ソロル/ロレーヌ「??」
何度言っても二人で話を進めてしまう
シェンターとナトスに、
一同が頭を抱える中、
ナトスがシェンターへ答える。
「・・・お言葉に甘え待たせてもらいますが、一つお願いしたい事が」
「・・ふぉっふぉっふぉ(やはり一枚も二枚も上手じゃのぉ・・)」
ナトスの言葉を聞いたシェンターは
テナクスへ視線を向けた。
その視線に気づいたテナクスが続ける。
「ん?お・・そ、そうか・・・聞かせてくれるか」
一瞬困惑したテナクスが、
気を取り直しそう言うと、
ナトスは答える。
「俺の中で一つ確認したい事が出来ました・・それを確認する時間が欲しい・・例えば数時間後またみんなで顔を合わせ、話をする時間を設けてもらえないでしょうか?」
「・・それは一向にかまわぬが・・」
テナクスはそう答えつつ、
フィニクシーの顔を見た。
「・・私も構いません、場所はどちらにしますか?」
フィニクシーがそう言うと
ナトスが言う。
「・・肉料理・・俺は肉料理が食べたい気がする」
一同「・・?・・・」
ソロル「はぁ?」
ロレーヌ「ちょ・・あんた・・まさか」
一瞬の静寂の後、
ソロルとロレーヌが反応した。
「そうだ、俺は肉料理を要求する・・」
ナトスがそう返答すると、
ロレーヌは頭を抱える。
「・・あんたね・・王将に晩御飯たかるつもり!?」
ソロルが慌ててテナクスに言う。
「テナクス王将!申し訳ありません!私がちゃんと教育してれば・・人様に迷惑かけるなんて・・ホント世間知らずなんです!バカなんです!バカナトスです!」
「上司として私からもお詫び申し上げます・・」
ナトスの言動にシェンターを含め
困惑する表情を浮かべるテナクス達に
ソロルとロレーヌが慌てて弁明する中、
ミノアの声が響き渡る。
「僕も肉料理を要求する!」
一同「・・・・」
ナトス「・・・フ」




