暗躍③
官邸内のある扉の前に来たオフィームは
立ち止まり、ソロル達へ視線を送った。
「こちらになります・・・ふー・・」
オフィームは視線を扉に戻すと、
大きく息を吐き戸を叩いた。
コンコンコンコン。
「・・オフィームです。お連れしました」
「・・入れ」
中から応答があると
オフィームは扉を開く。
ガチャ。
「失礼します。」
オフィームはそのまま一歩前に出ると立ち止まり続ける。
「ソロル嬢並びにS&S社所長ロレーヌ様と、ナトス様ミノア様の御兄弟をお連れ致しました」
「うむ、ご苦労じゃったなオフィーム」
中に居たシェンターがそう言うと、
聞き覚えのある声を聴いたソロルが
恐る恐る入室する。
その後をロレーヌ達も続く。
「失礼します・・・あっ!」
ソロルは中に居るフィニクシーの姿に気付き
思わず声をあげ、そのまま嬉しそうに
手を振った。
「(あらあら・・)うふふふ」
フィニクシーは笑顔でそれに答える様に
手を振り返した。
「ソロル様、王将の前です。お控えください。」
「あっ・・ごめんなさい・・・」
オフィームにそう言われたソロルが
シュンとすると、迎え側に座るシェンターと
目が合ったフィニクシーもシュッと座りなおした。
それを見ていたテナクスが言う。
「・・まぁ良い・・」
テナクスは立ち上がると続ける。
「リデニア国王将、テナクス・サキュリフィーだ、堅苦しいのは俺も好きではない、自然体で構わぬ」
「あっ、えっと・・ソロル・ノウビシウムです・・」
「S&S社所長のロレーヌと申します」
「・・その部下、ナトスです」
「お、同じく・・ミノアと言います」
四人が名乗るのを見て
オフィームが言う。
「では、わたくしは失礼いたします」
シェンターが頷くと
オフィームはそのまま後ずさり、
扉を閉め退室していった。
パタン。
「急に呼び出して申し訳なかった、空いてる椅子へ座ってくれ」
テナクスがそう言いながら席に座ると、
ソロル達も近くの椅子に座る。
それを受けテナクスはシェンターへ視線を送った。
それに答える様に頷いたシェンターが、
ソロル達へ視線を向け話し出す。
「まず最初に伝えておくことがある、以前わしの屋敷でナトスと話した時、わしの信用できるものには話しても構わないと了承を得取ったが・・」
「テナクス王将とフィニクシーさんが俺達が何者か知っているという事なら、状況的に理解しています、問題ありません、話しを進めてください」
シェンターの意図を汲み取ったナトスが
そう言うと、シェンターは言う。
「ふぉっふぉっふぉ、話しが早いのぉ・・故に如何なる突拍子の無い話でも信じる事が可能じゃ、遠慮なく話してくれて構わぬぞ」
「ベネーさんからお聞きになられたんですね?」
「うむ」
シェンターが頷くのを見て
ナトスは一瞬ソロルへ視線を向け、
そのままロレーヌの顔を見た。
それを見たシェンターも
ロレーヌへ向けて言う。
「やはりソロルには話しておらんのか?」
「え!?」
突然話しかけられ、
ナトスとシェンターの視線を受けた
ロレーヌは理解できないでいた。
「所長の判断で、ソロちゃん達には話していないはずだが」
「え・・(ソロルに話していない?・・あっ、そうか、タイミング的にその話・・二人はこの場でその話になっても問題ないのかすり合わせしている・・)」
テナクス「(こ、この男・・シェンターとかみあい過ぎだ・・)」
フィニクシー「(ふふふ・・本当に似た者同士ね・・)」
遅れて状況の理解が出来たロレーヌは
シュッと座りなおすと、シェンターへ向けて
自身の考えを話し出した。
「・・ナトスが言った通り、業務上知り得た情報として社外秘としています、国家の安全、平和を脅かすものと判断し、情報漏洩から余計な混乱を招かぬよう依頼主のベネー様への報告のみに留めるべきと考えております・・それは今この場でも変わりません・・不安や心配事の種をわざわざ与える必要は無いと考えます・・」
それを聞いたシェンターが
笑みを浮かべ語る。
「ふむ・・おぬし目線その判断は正しい」
シェンターはそう言うと、
テナクスに視線を向けた。
ここまでの流れを唖然とした表情で見ていた
テナクスはシェンターの視線に気づき、
我に帰るように話し出す。
「・・あっ・・そ、そうだな」
テナクスは姿勢を正し続ける。
「・・ここまでシェンターの言った通りの展開になるとは正直驚いている・・ロレーヌよ、この場であってもお前が難色を示すほど有能な人間だとは聞いている・・故に俺から先に話しておきたい事がある」
テナクスはソロルを見据え続ける。
「・・知っての通り、俺は女神の加護リーオを持っている、そしてソロル・・お前は女神の加護ヘンアを持っているな」
「・・はい・・・」
「え!?」
ソロルが返事をすると、
ロレーヌは驚きの声を漏らす。
そしてそのままナトスに怪訝な目を向けた。
「・・わざわざ俺達が言う話でもないだろ」
ナトスがそう言うと、
ロレーヌは面白くなさそうな表情で
テナクスへ視線を戻す。
テナクスは続ける。
「・・ソロル、俺は・・お前とこうして出会うのを心から待ち望んでいた・・」
ソロル「え!?」
一同「!?」
「・・これは運命の出会い・・共に手を取り合い助け合わねばならない・・」
ソロル「ちょ・・ちょっと・・へ?」
ロレーヌ「はぁ?」
ミノア「(お姉を口説いてるんだよね?)」
ナトス「フ・・」
シェンター「(・・はぁ・・・)」
「・・ん?」
皆の反応から違和感を覚えたテナクスが
疑問の声をあげると、
フィニクシーが笑みを浮かべ
テナクスに諭すように言う。
「ふふ・・王将・・70手前とは言え、男性から女性にその様な言い方をしては誤解されますよ・・王将は今や独身でもあるのですから」
「ん?何の話・・あっ!ち、違うぞ!誤解だ!断じてそのような意味で言ったわけではないぞ!!本当だ!」
テナクスが気付いたように狼狽え、
アタフタと弁明する。
ソロル「(・・だ、だよね・・よかった・・)」
ロレーヌ「(・・天然)」
ナトス「フフ・・」
シェンター「(・・はぁ・・・)」
頭を抱えるシェンターを見たミノアは、
皆の反応から何かを感じ、
突然手をあげ言う。
「あのぉ・・良いですか?」
「はっ!・・な、何?ミノア・・何か言いたいの?」
ロビーでのやり取りから、
ミノアが何かを言おうとするのに
ロレーヌが身構えると、
ソロルも続く。
「や、やめといた方が良いんじゃない?ね?嫌な予感しかしないんだけど・・」
「大丈夫だって♪全然変な事じゃないから!」
ミノアは笑顔でそう言うと、
テナクスに視線を向け言い放った。
「お姉は美人だし、王様の感情は男としておかしくないと僕は思います!」
ソロル/ロレーヌ「はぁ?」
フィニクシー「あらあら・・うふふふ」
テナクス「・・・」
ナトス/シェンター「・・・」
ナトスとシェンターが顔を伏せ、
必死に笑いをこらえていると
真顔で何も言わないテナクスを見た
ロレーヌが慌てて言う。
「ミ、ミノア・・違うから!そう言う意図じゃないって話だったから!」
「え?」
ミノアがポカンとしていると、
ソロルも続く。
「ミノア!あんた喋っちゃダメ!恐ろしい限り、怖すぎる!」
「な、何だよお姉まで兄さんみたいなこと言って!」
すると、黙っていたテナクスが口を開く。
「・・ミノアと言ったな・・・」
ロレーヌ「(・・ヤバイ・・)」
ソロル「(・・お、怒られる・・)」
ソロル達が身構えると、
テナクスは一拍置いて言い放った。
「・・・いくつになろうと男は男・・俺もそう思う・・」
静寂の中ナトスとシェンターが
顔をあげる。
一同「は?」
「ですよね!」
ミノアが笑顔でそう言うと、
テナクスは続ける。
「俺は今年で69になった、周囲は俺が衰えたと、そう言う目で見る者ばかり!俺はまだまだ現役だ!冒険者としても!男としても!俺は常々そう思っている」
「そうですよ!男の僕から見ても王様の漲るバイタリティーは魅力的に見えます!仕事だって恋だってまだまだやれます!」
ミノアの素直な意見を聞いたテナクスは
笑みを浮かべ言う。
「・・そうだ、きっとそうだ・・俺にはまだまだ先がある、そうに違いない・・・」
ミノアがそれを肯定する様に笑顔を返すと
テナクスは続ける。
「・・俺がもう少し若ければ、ミノアと良い友人関係を築けたやもしれんな・・・」
それを聞いたミノアは
笑顔のまま返答する。
「それこそ関係ありません、年齢も立場も、それが友達です」
「あはっはっはっは!ミノアの言う通りだ!はっはっはっは」
嬉しそうに笑うテナクスを見て、
シェンターはため息を付く。
「・・はぁ・・(しかし、ミノアと王将がここまでかみ合うとはのぉ・・・)」
シェンターは困惑するソロルとロレーヌ、
笑いをこらえるナトスと、
苦笑いを浮かべるフィニクシーを見て、
テナクスへ語り掛ける。
「・・王将、話しが脱線してしもうたのぉ・・」
「はっ、そうであった・・すまぬ・・して、何処まで話したか・・」
テナクスが思い出したように言うと、
それにロレーヌが反応する。
「テナクス王将、シェンター様、ソロルがヘンアの加護を持っていると聞いた時点で私目線も問題無いと言う考えに至っております・・」
「・・・そうか、そうであったな・・お前は元、世界冒険者協会役員付の諜報員」
「え・・(諜報員!?・・ロレーヌさんが!?)」
ソロルが驚きの声をあげる中、
ロレーヌがテナクスに答える様に言う。
「はい、王将がヘンアを探しておられた事、その理由も知っています・・・今回の件が平和を脅かすものと考えるのであれば、ソロルも知っておく必要があると考えます」
「(言ってることが180度変わった?・・どういう事?・・)」
ソロルが困惑する中、
テナクスが語りだす。
「(流石は元シェンターの部下・・思考更新が早いな)・・俺もそう思い、あえてこの場のメンバーにソロルを含ませてもらった」
困惑するソロルへ向けて
テナクスは続ける。
「ソロル、俺達女神の加護を持つ者は、世界平和維持の啓示を女神より授かる・・俺の受けた啓示は女神の加護ヘンアに繋がるものだった・・」
「ヘンアに?・・わ、私にって事ですか?」
ソロルが質問すると
テナクスは頷き続ける。
「うむ・・・あれは三年前・・その日は異常なほどの寝苦しさを覚える日であった・・」
~3年前~
~サキュリフィー邸~
「・・うぅ・・うぅ・・・」
寝室で眠るテナクスは、
苦悶の表情を浮かべ苦しんでいた。
「・・うぅぅ・・重いぃ・・・」
寝言でそう訴えるテナクスを
女神リーオが見下ろしていた。
「失礼なおっちゃんだなぁ・・私はそんなに重くない・・」
仰向けに眠るテナクスの胸の上に立つリーオは、
しゃがみ込みテナクスの顔を覗き込んだ。
「・・・うぅぅ・・息が・・・」
「・・いつも思うけど、胸元に立ち啓示を授けるってこれであってんのかな?」
枕元に立つを胸元に立つと勘違いしている
リーオは苦しむテナクスに向けて
啓示を伝える。
『2番女神リーオ・セアー、啓示を伝えに来た』
「・・うぅ・・け、けい・・うぅぅ・・」
『女神の加護ヘンアを探し助けよ、それが己と世界を救う』
「・・うぅ・・ヘ、ヘンア・・・」
「じゃなね、おっちゃん・・」




