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TOUR②

~リデニア国首都クヨトウ南街~

~西街に近い民家~


「オェェェ・・・」

南街と西街の境目の民家。

その洗面所でアキトが吐いていた。

「・・・サ、サイコ野郎が・・・オッ・・」

「オエエェェェ・・・」

アキトの嗚咽が響く中、

その民家の居間では、

ステフがテーブルに座り、

美味しそうに食事をとっていた。

「・・・ったく、うるせー野郎だ事・・お騒がせして申し訳ありませんねぇ」

ステフは4人掛けのテーブルを囲むように座る

別の2人にそう声をかけると、

離れた場所にあるソファーに視線を移し

声をかけた。

「ウルガ、オルガ、お前らは美味しく食えてるか?」

「えぇ、頂いてやすよ、旦那」

ソファーに楽な姿勢で座っていたウルガが、

パンをかじりつつそう言うと、

オルガが続く。

「俺達ぁ慣れやしたが・・はじめて旦那の狂気を目の当たりにした人間は大抵あぁなりやす・・」

「オェェェェ・・・」

アキトの嗚咽が流れる洗面所に

親指を向けながらオルガがそう言うと。

ステフは晴れやかな表情をして答える。

「失礼な、礼儀も知らないとは・・今日からこの家をお借りするんだぞ、住人とは仲良くしなくては争いが起きてしまうだろ・・・ねぇ?おじいさん、おばあさん♪」

ステフはテーブルを囲むように座る

2人にそう声をかけたが、

返答はなかった。

「アァァー・・死んでしまう・・・」

そう言いながら洗面所からアキトが

姿を現した。

それを見たウルガが声をかける。

「そんなんじゃどんどんやつれていきやすぜ」

「ほっといてくれ!」

アキトが苛ついたようにそう言うと、

ステフが笑顔で言う。

「元気出たじゃないかアキト、さぁそこの空いてる席に座って飯でも食え」

「!!」

ステフが4人掛けのテーブルの一つだけ

空いている席を指さし、アキトにそう伝えた。

アキトの目には晴れやかな笑顔を送るステフと、

顔が半壊しこと切れている老夫婦が座らされ

テーブルを囲んでいるのが見える。

「うぷ・・」

アキトは再度吐きそうになるのを我慢していると。

オルガが言う。

「アキトの旦那は本拠地からずっと吐いてやすぜ?そんなんじゃみがもたねぇでやす」

「(本拠地!!)うぷぷ・・」

本拠地でのことを一瞬思い出したアキトに

更なる吐き気が襲う。

ダダダダダ!

「オエ・・オエェェェ・・・」

洗面所へ駆け出し、

また嗚咽を響かせた。

それを見ていたウルガが、呆れた表情を浮かべつつ

ステフに質問を投げかける。

「はぁ・・ったく・・・そんな事よりステフの旦那、その死体どうすんでさぁ?」

「近隣の宿は軒並み満室・・当分はここで寝泊まりするとなると、流石に気持ちのいいもんじゃないでさぁ」

オルガが追従するとステフが答える。

「・・観賞に飽きたら捨てるさ・・・」

ステフはそう言うと平然と血を連想させるような

赤い果実酒を美味しそうに飲む。

それを見ていたウルガとオルガが呆れた表情を

浮かべているとステフが質問をとばす。

「・・そう言えば、さっきのエクード・プランプ・・あいつの言動をどう見た?」

「ん?・・あのおっさんがどうかしたでやすか?」

「?」

ウルガとオルガが質問に意味が解らず困惑していると、

ステフは続ける。

「・・あいつの言動が気に入らない、さっさと殺してしまった方が良いかもしれないと思っている」

それを聞いたオルガが狼狽えつつ言う。

「ちょ、ちょっと待ってくだせぇ、相手は協会職員・・ここの爺さん婆さんとはわけが違いやす」

「エクード自身もかなりの強者・・周囲には警備もあるでさぁ・・気に入らないって理由じゃリスクが高すぎやす・・・」

ウルガもそう追従すると、

ステフは意に介さないように言う。

「気に入らないって言うのは事実だししょうがないだろ・・・まっ、本当は理由があるがな・・・」

ウルガ/オルガ「?」

ウルガたちが頭に?を浮かべていると、

ステフは一拍置いて語る。

「・・・エクードは南街リベロット事件の犯人をアキトだと断定している」

「な、何で・・何でそんな事がわかるでさぁ?」

ウルガがそう言うと

オルガが続ける。

「それにアキトの旦那はあんなだが、エクードの前での話しは完璧でやした・・時間的にも事件発生時クヨトウに居るはずが無いのは解るはずですぜ・・その証拠にあの魔獣も見てるんでさぁ」

狼狽えるウルガたちがそう言うと

ステフは淡々と話す。

「元々懸念はあっただろ?だからアキトの武器は処分している・・エクードは犯行に使われた武器を特定しているんだ・・・そしてアキトの話を一切信じていない・・・覚えているか?アキトは最後“夢々”の名前を出した」

「お、覚えているでさぁ・・事件に関与していたらおいそれと言える名じゃないでさぁ、なかなかやるじゃないかと俺は思ったでやすが・・・」

ウルガがそう言うとオルガも続く。

「そ、そうでさぁ・・そもそも俺たちゃ事件そのものも知らない可能性もある時間軸でさぁ・・アキトの旦那のファインプレイだと思ったでやすが・・」

「・・確かに、ファインプレイか、エクードがこちらの話を一切信用していないのが知れたしな」

ステフがそう言うと、

ウルガが再度質問を飛ばす。

「・・さっきも聞いたでやすが、何でそんな事がわかるでさぁ?」

ステフは一拍置いて答えだす。

「・・・アキトのアリバイを含めた話を信じるとしよう、お前たちが言ったように、俺達は事件そのものを知らなくても不思議じゃない、しかし南街に住む人間は事件を知らないわけがなく、エクードに関してはその鑑識に呼ばれる立場だ・・少なくともエクードは、事件現場の“夢々”が営業しているわけが無い事知っている・・おかしいと思わないか?アキトは何も知らないていでそこへ行くと言ったんだ・・普通なら言うだろ?そこへ行っても無駄足に終わる事を・・・エクードはアキトの何も知らないていを白々しい演技、嘘だと決めつけ信用していない、犯人をアキトと断定しているからこそ知らないはずが無いと言う意識が強く、“夢々”の話をしなかった・・」

それを聞いたオルガが言う。

「・・た、確かにそう言われれば違和感ではありやすが・・そう言い切れるほどの事でも無い気もしやす・・」

「単純にあのおっさんがアキトを嫌っているでも起こりえると思いやすが・・・」

ウルガが追従すると

ステフは口角を上げ晴れやかな

声で言い放つ。

「ウルガの言う通り!それも大いにあり得る、だから言動が気に入らないと言ったのさ、あえて無駄足を踏ませるためアキトに情報を伝えなかったのなら、今やそのリーダーである俺への嫌がらせと言える・・・知らず知らず敵を作ってしまう可哀そうなエクードは殺してしまった方が世の為人の為だろ」

話について行けないウルガとオルガは、

顔を見合わせ、諦めた様にため息を付く。

ウルガ/オルガ「・・はぁ・・・」

ステフは果実酒を飲み干し

続ける。

「・・安心しろ、あいつは俺の獲物・・やるなら俺一人でやる・・・」

ウルガたちの目には、

歪な笑みを浮かべるステフが映った。

ウルガ「(な、なんでそこまでの殺意を・・・)」

ステフは立ち上がると、

いつもの黒い手袋を着用した。

それを見たオルガが言う。

「お出かけやすか?」

「初めての土地だしな、少し辺りを散策してくる・・アキトの面倒はまかせた」

「あっ、ちょっと旦那・・」

パタン。

ウルガたちを無視し、

外へ出たステフは、

滞在している民家へ続く路地を少し進む。

すぐに曲がり角があり、

そこを通過しようとした時に

同じくその角を曲がろうとする

若い女性とぶつかりそうになる。

「わ!すみません!」

若い女性がぶつかりそうになったのを

詫びると、ステフも感じよく答える。

「・・こちらこそ」

去り際若い女性は思う。

「(・・あれ?この路地はおじいちゃんの家に続く道だよね?・・・)」

「(ん?・・この路地を曲がるとなると・・・)」

ステフも同じことを考えていた。

そして立ち止まり女性に話しかける。

「もしかして、あの家の関係者の方ですか?」

突然の質問だったが、

感じよく言うステフに少し警戒しつつも

女性は笑顔で答える。

「えっと・・もしかしておじいちゃんとおばあちゃんの知り合いですか?私は孫のテレサと言います」

この路地を来た以上祖父の家から来たと考えた

テレサがそう言うと、

ステフは答える。

「あぁ、あなたがテレサさん、お話は何度か伺った事ありますよ、もしかしておじいさんの家に?」

テレサは手に持っている袋を胸元まで上げると

ステフの問いに答える。

「試作品が出来たのでおじいちゃんに持って来たんです」

「(試作品?)・・残念ですが不在の様でしたよ、私も今出直そうと帰るところでした」

ステフがそう言うとテレサは残念そうに言う。

「え・・どこ行ったんだろおじいちゃん・・腰が痛いって言ってたのに・・・」

「・・今試作品と言われましたが、その袋、何ですか?」

ステフがテレサの持つ袋に興味を示すと、

少し恥ずかしそうに答える。

「えへへ、これは私が試作した魔道具です、腰痛持ちのおじいちゃんに試してもらおうと思って・・これ、痛みを和らげる効果があるコルセットなんです」

「あぁ、確かに魔導士をされていると話されていました・・しかし凄いものですね、その歳で癒しの魔道具とはなかなか優秀でおられる」

ステフが話を合わせると、

テレサは面白くなさそうに言う。

「・・もう・・おじいちゃんまだ勘違いしてる・・」

「・・・っと言いますと?」

「私、魔石加工士の元に弟子入りしてて、魔導士じゃなくて魔石加工士を目指してるんです」

「あぁなるほど、確かにおじいさんの年代だと勘違いしがちですよね、まだまだ世間一般に広まって間もない技術ですし」

「うふふ、ですよね」

終始感じよく話すステフに

テレサは警戒心を失くし笑みを浮かべた。

それを見たステフは続ける。

「しかし魔石加工士ですかぁ、これから楽しみな分野ですよね・・魔石を利用した魔道具は今でも数多く存在しますが、あまりにもコストが高い・・魔石加工の技術が進歩すればさらに多くの魔道具が生み出され一般にも流通しやすい時代が来ると私は思っています、頑張ってくださいね」

ステフの言葉を聞いたテレサは

明るい表情で言う。

「はい!私もそう思ってます!」

「では私はこれで・・・」

ステフが立ち去ろうとすると、

テレサも思い出したように言う。

「あっ、私も師匠の工房に帰ります、でもこれは玄関先に置いておこうかな・・おじいちゃんなら中見たらわかると思うし・・」

「・・そうですか・・お気をつけて」

笑顔で手を振るステフに

軽く会釈をしたテレサは、

玄関先まで足早に近づくと、

手荷物の袋をそっと置いた。

ダダダダダ、“オエェェ・・”

「(え!?物音?・・人の声!?)」

家の中から不審な音を聞いたテレサは

疑問に思う。

「(・・おじいちゃんたち留守なんじゃ・・・)」

「そうそう言い忘れました」

テレサの背後から突然声が響き

硬直していると、その声は続ける。

「私ステフ・ロックランと言います・・それとあなたの頑張る場所は師匠の工房ではない・・」

テレサは恐る恐る後ろを振り返った。

そこのは先ほどの感じの良い男ではなく、

歪な笑顔を浮かべるステフが立っていた。

「リベロットの本拠地へご招待しよう・・・」


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