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暗躍①

~異世界メジューワ、コパローナ国オニカ中央街~

~パンクティス邸~


「美味しゅうございましたなぁ」

食事を終えたラーコスが向かい側に座る

アルファドに声をかけた。

果実酒を飲み、同じく食事を終えた

アルファドは答えるように言う。

「ひゃっひゃっひゃ、パンクティス邸の料理はいつ食べても旨いのぉ、うちの調理長と交換したいぐらいじゃ」

「・・・」

ラーコスとアルファドはカーリーに視線を向けたが、

カーリーは無言でパクパク食べ続けている。

ラーコスは気を取り直して、

アルファドに話を振る。

「・・し、しかし、カーリー君主程とは行きませんが、アルファド殿もその年で良くお食べになる」

「ひゃっひゃっひゃ、食は命じゃ・・食が細くなれば命を灯す蠟燭も細くなり、ちょっとしたことで倒れて消える」

「おっしゃる通りでしょうなぁ、残念な事に私はめっきり食べる量が減ってしまいましたなぁ・・・食べますかな?カーリー君主」

ラーコスが手付かずの皿をカーリに差し出すと、

アルファドも皿を差し出しつつ続く。

「カーリー君主は極太じゃのぉ・・・これも良いぞ?」

「・・・」

カーリー君主は食事の手を止め、

口元を拭くと答える。

「・・結構です、ただのやけ食いの様な物・・お気になさらずに・・」

コンコンコンコン。

突然扉をノックする音が響き、

カーリーが続けて言う。

「何ですか?食事中ですよ」

「も、申し訳ありません!只今バルサトレ邸の執事がお見えになり、取り急ぎラーコス様にお伝えしたい事があると・・・」

パンクティス邸の使用人がそう伝えると、

ラーコスが呟く。

「・・何でしょうなぁ・・・」

ラーコスはそのままカーリーとアルファドに視線を向けると、

2人は“どうぞ”とジェスチャーを送った。

「・・伺います」

「承知しました、私はこれで失礼します」

ラーコスが使用人にそう伝えると、

パンクティス邸の使用人はラーコスの執事を残し

そそくさと居なくなってしまう。

ラーコスが扉を開けると、

女執事が一人その場に立っていた。

「お、お食事中申し訳ありませんラーコス様・・」


ラーコスが離籍中、アルファドは

カーリーに質問を飛ばした。

「時にカーリー君主、現在のレベルはどうなったかのぉ?」

「フ・・300です」

薄笑みを浮かべつつカーリーが答えると、

アルファドも上機嫌に語りだす。

「ひゃっひゃっひゃ、300レベルを超える魔獣がカーリー君主に従い、3000体以上の魔獣を引き連れリデニアの首都を蹂躙・・・」

「正確には450レベルです・・それにラーコスは念には念をと5000体の魔獣を準備するようです」


「そんな事をつたえるためにわざわざ?」

ラーコスが女執事にそう言うと、

酷く怯えた様に言う。

「え・・あっ・・も、申し訳ありません!他の冒険者も・・ど、動揺しており、緊急で対策を講じねばと思いまして・・・」

「・・なるほどなるほど・・その様に思って頂いたんですなぁ・・」

ラーコスは手をあげ、バイバイするように

女執事に手のひらを向けた。

「え?ラ・・」

その言葉を残し、女執事は姿を消した。

ラーコスは何もなかった様に扉を閉め、

カーリーたちの元へ歩み寄る。

「・・執事はどちらへ?忽然と消えたようにみえましたが」

「・・捨てました、デンスティアへ」

席に着こうとするラーコスにカーリーがそう質問すると

ラーコスはヤレヤレと言わんばかりに答えた。

「またですか・・・」

「ひゃっひゃっひゃ、おぬし人の命を軽く見過ぎじゃて・・まぁデンスティアは、生ごみを捨てるにはちょうど良いがのぉ」

「・・・アルファド殿・・今回の作戦は、私とカーリー君主の能力を知ったあなたが立てたもの、説得力の欠片もございませぬなぁ・・」

席に座りラーコスはそう言うと果実酒を口にする。

「・・その使えぬ執事は何と?」

カーリーがラーコスに質問を飛ばし、

同じ様に果実酒を口にすると、

ラーコスが答えた。

「・・モーフィスがリデニア国内で行方知れずだそうです」

「!?コホッコホ・・な、何ですって!」

果実酒でむせたカーリーがそう言うと、

アルファドが続く。

「そ奴は確か、作戦の全貌を知る冒険者の一人・・じゃったかのぉ?」

「そうですなぁ、リベロット関連の業務に就かせておりましたが、材料の引き取りに出た切り戻らなくなったと・・時を同じく、何者かがSKWコロニー跡遺跡に近付いた形跡もあり、リデニアの手に落ちたのでしょうなぁ・・」

アルファドの質問に淡々と答えるラーコスを見て

カーリーが詰め寄る。

「手に落ちた!?・・何をそんなに悠長に・・作戦が筒抜けになってしまうのでは!?」

「ひゃっひゃっひゃ、何か手でも打っとるのかのぉ?さすがに慌てる場面じゃて・・」

アルファドもカーリーに追従すると、

ラーコスは答える。

「・・死人に口なしとはよく言ったものでしょうなぁ・・仮にモーフィスがリデニアで拘束されたとしましょう・・その時モーフィスは既に死んでいる為、一切の情報を得る事は出来ない・・っと言った所でしょうなぁ」

「ん?それはいったいどう言う・・・」

「・・・」

ラーコスは続ける。

「・・一種の洗脳術と言いますか、リベロット関連の手伝いをさせている者は全て暗示をかけておりましてなぁ・・・拷問などを受け自身の知る情報を吐露する恐れがある場合・・自ら死を選ぶように・・拘束などされた場合、奥歯に仕込んだ致死性の毒を飲み、次の瞬間ただの生ごみと化すでしょうなぁ・・」

「ひゃっひゃっひゃ、用意周到じゃのぉ・・通りで落ち着き払っとるわけじゃ・・」

「し、しかし、そんなに都合のいいように行くのかどうか・・死ぬのが恐ろしくなり死ねない者も居るのでは?」

ラーコスはカーリーの疑問に答える様に語りだす。

「・・・この洗脳は丸2日かけて施す物で・・一たびかかればそう簡単には抜け出せず、ほぼ間違いなく死を選んでしまいましょう、洗脳を解こうとしたとて、前述通り次の瞬間死んでおります、カーリー君主の言うような死なない者など居りません・・・もし、もし仮にの話になりますが、この洗脳を解く事が出来たとしましょう、その場合モーフィスは死なずに拘束されている事になるでょうが・・所詮それも意に介すほどの事ではございません・・・」

この話を聞いたアルファドが疑問を投げかける。

「はて?それはどう言った理屈の元かのぉ?さすがに死なずに拘束されて居ったら手を打つべきじゃと思うがのぉ・・」

「・・・」

カーリーもアルファドの意見に同意するかのように

ラーコスの答えを待っていると、

ラーコスはおもむろに語りだす。

「・・・普通、信じられる話ではございませんからなぁ・・今でこそアルファド殿は、私の無尽蔵に使える転送に似た力をご存じ・・実際その眼で見て頂いておりますからなぁ、カーリー君主の“召喚技・森羅万象”・・これもその眼でご確認いただいております・・」

「・・ふむ、なるほどのぉ・・・」

「い、いまいちピンと来ませんが・・」

ラーコスは続ける。

「・・歴史上、私とカーリー君主の力は類を見ない異能・・伝え聞いた程度では簡単に信用できないものでしょうなぁ・・ましてやそれが得体のしれない犯罪者の証言であればなおの事・・・その力で魔獣を操り侵略するなど証明は不可能、故に・・誰も信用しない・・そう言うものです」


~30分前~

~リデニア国首都クヨトウ中央街~

~サキュリフィー邸~


「・・っと言う事の様です・・」

ブロードはモーフィスからの証言を

全て話し終えていた。

コパローナの侵略の手段、リベロットとの繋がり、

そのすべてを黙って聞いていた

テナクスが呟く。

「非現実的過ぎて話にならんな・・信用に値せん・・」

「・・・」

ヴィーロはシェンターが何も言わず

思案しているのを見て語りだす。

「正直俺も信用する事は出来ないと判断しました・・しかし内容がないようなだけに、一存で判断を下してはダメだと思い、話しを持ってきた次第です・・・皆さんの意見を聞いて正直ほっとしております・・」

「・・・」

ブロードは無言で、少し納得のいかないような

表情を浮かべていた。

それに気づいたシェンターが語りだす。

「・・なんじゃ?おぬし何か思うところがあるのか?」

コンコン。

その時扉をノックする音が響き、

テナクスが応答する。

「何だ?そのまま申せ」

「はい。ノウビシウム家執事のオフィームと申します、至急当家当主シェンター殿にお伝えしたい事がございます」

オフィームの声を聴いた一同がシェンターに

視線を送ると、シェンターはテナクスに視線を返した。

テナクスが頷くのを見たシェンターは

立ち上がりつつ言う。

「・・では失礼して・・大方悪い話の気がするのぉ・・・」

シェンターは扉を開けると

そこにオフィーム以外の人物を確認し、

部屋から退室していった。

カチャン。

「・・ベネー・・・」


シェンターが離籍中、ヴィーロが

フィニクシーへ質問を飛ばす。

「フィニクシーさん、召喚士の歴史は浅く解明されていない事も多いですが・・どうなんでしょうか・・何か思い当たる事は?」

フィニクシーは一拍置いて答える。

「・・・正直、同じ召喚士として想像もつかない話です・・既に存在している魔獣に主従関係を付与し召喚する・・・私を例に話すとあくまでも存在しない魔獣を“創生”している状態です・・・ソロル・ノウビシウム、彼女の召喚獣シャリも同じでしょう・・」

「俺もそう言う認識です・・・」

フィニクシーの話を聞いたヴィーロがそう続いた。

「やはり信じがたい話か・・」

テナクスはそう呟いたが、

彼自身思う所はあった、

それはフィニクシーも同じ。

フィニクシー「(ナトスさん達は異世界とは言え実際存在している人たち・・・)」

テナクス「(・・実際に想像もつかぬことが起きている・・・)」

カチャ。

扉からシェンターが入室してくるのを見て、

テナクスが声をかけた。

「何かあったのか?・・」

「・・・」

シェンターは何も言わずテナクスに歩み寄ると

耳打ちする様にヒソヒソと伝える。

「・・・この後すぐにソロル達と会っていただけるかのぉ?」

「・・・それは願っても無い話・・しかしこの場をどうする?」

テナクスもヒソヒソと返すとシェンターは答える。

「・・ソロルと一緒に当然“彼ら”も同席する・・官邸へ場所を移そうと思うとるが、ヴィーロ達にはまだ伏せておきたい・・・この場はわしが納めてもよろしいか?」

テナクスはその問いに答える様に頷いた。

シェンターは元々座っていた場所へ着席すると、

ブロードへ向けて語りだす。

「・・話の腰を折ってしまって悪かったのぉ・・申し訳ないがこの後急用ができた、王将とフィニクシー、わしの三人は官邸へ移動せねばならん、故に早速この件に関するこの場での結論を伝える」

フィニクシー「(私も?)」

ブロード「結論!?この場での?」

ヴィーロ「否定されて終わったのでは?」

シェンターは一拍置いて語る。

「・・・このメジューワ上の人類はまだまだ発展途上じゃ・・今では考えられぬような事も数年後・数十年後当たり前になって行くものじゃ・・・100年ほど前初めて召喚技術が発見された時も、周囲の殆どは信用せぬものばかりだったと聞く・・・結論じゃが、モーフィスの証言は真実である可能性が高い・・」

ヴィーロ/ブロード「!!?」

フィニクシー「私に出来ないからと言ってカーリー君主も出来ないとは限らない・・・」

シェンターは続ける。

「・・そう思って動いた方が良いが・・3000を超える魔獣の波・・被害は甚大なものになるじゃろう・・被害を最小限に抑えるための手段は幾つかあるがのぉ、正直押し負けて終わりじゃ・・・有効な手段がない以上動かない方が得策じゃと思うとる・・」

「・・動かない?」

ブロードが疑問の声をあげると

それに答える様にシェンターが言う。

「この場におるものの心にしまっておいてもらえるかのぉ、拘束している犯人も、通常の手順でコパローナへ移送すべきじゃろうな」

「・・・」

ブロードが押し黙るのを見て

ヴィーロがテナクスへ質問を投げかける。

「一つだけお聞きしたい、電話でもそうでしたが、王将はコパローナの名をすぐにお出しなられました・・別のルートでも同様の情報を得ておられたのですか?」

その問いにテナクスは答える。

「そう言うわけではない、ここまで具体的な話は初めて聞いた・・あくまでも気になっていた程度・・ただ、その先に侵略戦争を懸念させるものではあった・・・」

「・・なるほど・・であればモーフィスの話に一定の可能性を感じます・・・了解しました、後日指示があるまでは動かず騒がず・・心に秘めておきます・・・」

ヴィーロがそう言うとシェンターが話し出す。

「ヴィーロ、おぬしは立場上やらねばならない事がある」

「ん?立場上?」

「・・そうじゃ、おぬしはクヨトウ地区ギルド局長じゃ、外にベネーを待たせとる、この後話を聞き然るべき対処を検討せねばならん・・・」

「外に?・・」

ブロード「(・・ベネー様?)」

シェンターは続ける。

「・・モーフィスの証言にあるRKWコロニーのリベロット拠点、これはほぼ確定じゃ、現地へ行けば裏も取れるじゃろう・・・質問じゃが、2年前に管理が一本化されず現在もおぬしの管理が続いていた場合、そんなもの作れたと思うか?」

「はっ!・・・ガ、ガイン・・トラフォール・・・」

ヴィーロが気付いたように声をあげると、

ブロードが狼狽えつつ言う。

「ま、まさか・・いやでもそう考えた方が自然・・現在の管理はオファクク地区ギルド組合・・そこの局長はガイン・トラフォール・・・はっ!・・南街のリベロット事件・・その時もシェンター殿はその名を・・・」

ブロードの言葉を聞いたシェンターが言う。

「・・その事件の主犯はアキト・トラフォール・・・良いか、それとこれとはわけが違う」

「・・と言いますと?」

ヴィーロが疑問を投げかけると、

シェンターは語る。

「その事件は仮にアキトの犯行を立証しても当主ガインまでは届かぬ・・実の息子とは言え切り捨てるぐらいやるじゃろう・・しかしリベトッロ拠点の件はそうはいかぬ、仮にガインの関与を立証できなくともその責任は問われるじゃろ・・逃げられぬよう手を打っておくべきじゃ・・」

「逃げる?逃がす訳無かろう・・」

表情の険しいテナクスがそう呟くと、

シェンターは続ける。

「・・今までリベロットとの繋がりを懸念させるものはあったが、それを決定付けるような証拠はなかった・・それほど慎重で用心深いガインにしてはかなり大きく動き過ぎじゃ・・・おそらく後ろ盾の存在が影響しとる・・・考えられるのは一つ、ガインはコパローナのリデニア侵略を知っておる・・コパローナの侵略が成功すれば、自身を糾弾するものは居なくなるからのぉ・・」

「・・だ、だとしたらガインは直ぐにでも姿をくらますのでは?このままオファククに留まっては巻き込まれてしまいます・・それに逃げる先はコパローナ国内・・」

「・・そうなっては流石に手が出せぬ・・・」

フィニクシーがそう言うと、テナクスが呟いた。

シェンターはそれらに頷きヴィーロへ続ける。

「・・・コパローナの件とは無関係に、ガインには制裁が必要じゃ・・地区が違えど同じギルド組合、その局長としておぬしが決着を付けよ・・くれぐれも気を付けてのぉ」

ヴィーロは自分を見据えるシェンターの顔が

少し微笑んだように見えた。

「・・冒険者ギルド全体の落ち度、局長として必ず俺が責務を果たします」

シェンターに“お前に任せたぞ”と言われた気がした

ヴィーロが力強くそう言うと、

突然笑い声が響く。

「はっはっは!久しく見たぞこの感じ」

テナクスが盛大に笑い嬉しそうにそう言うと

一同はキョトンとした顔でテナクスを見た。

テナクスは続ける。

「親父の代の時、影の支配者の様に暗躍する教授が好きだった、またそれが見れるとは♪」

未だキョトンとする一同をしり目に、

それを聞いたフィニクシーが

面白くなさそうに言う。

「買いかぶり過ぎですよ王将、この人は只々、自分の知的欲求を抑えきれず何にでも首を突っ込んでしまうだけです」

「ふぉっふぉっふぉ、フィニクシーが正しいのぉ、不謹慎かもしれんが最近は色々起きて楽しいとすら感じる始末じゃ」

シェンターが笑いながらそう言うと、

それを聞いたフィニクシーが面白くなさそうに

そっぽを向いた。

それを見ていたブロードが

独り言のようにヴィーロに質問を飛ばす。

「・・お二人の関係はいったい?・・・」

「・・俺にもわからん、昔からの知り合いではあるらしいが・・・」

フィニクシー「ふん・・・」

シェンター「ふぉっふぉっふぉ」

テナクス「はっはっはっはっは!」


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