TOUR①
ピューネちゃん本人が鑑定を受け入れるかどうかなのです」
ミュウがそう言うとソロルが続く。
「確かに、ピューネちゃんはミノアに好意を持ってるはずだし・・・」
「タイプの異性に鑑定されるってやっぱかなり抵抗あるよな・・・」
ユナも続くとアンプレスが皆を促す。
「まぁ取りあえず、ピューネ本人に事情を説明して見よう、逆にすんなりOKするかもしれないしな・・」
ミノア達が食堂へ向けて歩き出すのを見て、
ピューネは身構える。
「(こ、こっちに来てる・・・)」
「ナトス、ベネーさんには連絡しといたわよ」
執務室から出てきたロレーヌはそう言うと、
テーブルに座りながら続ける。
「後で、時間が欲しいようよ、しかるべきところで話をして欲しいと・・」
「承知した」
食堂へ戻って来たミノアは
ピューネに近付くなり言う。
「お嬢、お願いがあるんだけど、良いかな?」
「?」
ピューネが身構えたまま頭に?を浮かべると、
ソロルが続く。
「鑑定って技能を使わせてもらいたいの・・さっきミノアがナトスに使った様に・・・」
「名前とか年齢とか見える技能?・・・」
そんなの勝手に見ればいいのにと思いつつ
ピューネが質問を返すとアンプレスが答える。
「そうだ、ピューネの記憶喪失・・この原因が解る可能性があるんだ」
「(記憶喪失の原因?・・・)」
ピューネが考え込むのを見て、
ミノアが続ける。
「さっき兄さんが気を失っている時その原因が見えたんだ、本来そんな見え方はしないみたいなんだけど、僕の鑑定ならきっと見える・・・ダメかな?」
「(ミノアのお兄さんはその後すぐに起きた・・・記憶がもどる?)・・・」
ピューネは記憶が戻るのを怖れて、
首を横に振った。
「だよな、やっぱ抵抗あるよな」
「そうなのです、ピューネちゃんは女の子なのです」
ユナとミュウがピューネの気持ちを代弁するように言うと、
ナトスが突然話し出す。
「記憶が戻るわけじゃない」
「え?」
ピューネが不思議そうに顔をあげると、
ナトスは続ける。
「記憶が戻るのが怖いんだろ?」
「・・うん」
「安心していい、ミノアの鑑定で記憶が戻るわけじゃない、むしろその逆だ」
一同「え?」
皆が疑問の声をあげる中、
ナトスは続ける。
「記憶を失った原因や今の状況がわかる事で、記憶が戻る方法がわかるかもしれない、つまり、それを避ければ戻らないともいえる・・・」
「・・・」
ナトスの言葉を聞きピューネが押し黙ると、
ミノアが話しかける。
「そうだね・・ごめんお嬢、フェアじゃなかったよ・・勝手に記憶を戻してあげなきゃって思いこんでた、お嬢が記憶を戻すのに抵抗があるんなら、偶然そうならないようにするためにも知っておきたい、ダメかな?鑑定で確認させて欲しい・・」
「・・・わかった」
ピューネが説得に応じ
鑑定を受けるのを見て、
ミノアは鑑定を発動させる。
「ありがとう・・(鑑定・・)」
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氏名:ピューネ 職業:-(-)
レベル:10 lv 年齢:12 歳
状態:やや緊張
記憶喪失(女神テセラ・セアーによる加護結界が
解かれる時、心的外傷、ストレスを避けるため
健忘状態となっている。本来あるべき記憶と似た
状況を再度体験する事で本人に既視感が生まれ
記憶が回復する。この時に本人が強く記憶回復
を望んでいないと、拒否反応が起き記憶が戻る
事はない。技能全般が記憶と共に失われている。)
HP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
MP■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
技能:〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
肉体強度:43 Rp 精神強度:60 Rp
命力:129 気力:180
体力:76 魔力:145
速力:95 知力:150
「六」「両」「武技」「治癒技」
「女神の加護:テセラ」
魂魄強度:128 Rp
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ミノアはナトスの時と同じように状態の部分を
皆に読み上げる様に伝えた。
「加護結界?・・・」
ロレーヌが疑問の声をあげると、
アンプレスが答える。
「ピューネが眠っている時に、その周りを覆っていた見えない壁・・」
「それをナトスとミノアが解いたことでピューネちゃんは目覚めた・・」
ソロルが補足すると、ユナが疑問を口にする。
「・・既視感って、アレだよな?・・デジャヴってやつ・・」
「・・本来あるべき記憶・・やはりピューネは見ている・・(あの惨劇・・心的外傷になりかねない・・)」
アンプレスがそう呟くとミノアがユナの
疑問にも答える様に言う。
「・・オーバーザリミットで僕がユートさんにやろうとした事・・デジャヴが起きたのかもしれない・・あの時、お嬢は激しい頭痛で気を失った・・それが拒否反応・・」
するとピューネが疑問の声をあげる。
「・・技能・・失われてるって・・わたし何か持ってたの?」
その疑問にソロルが答える。
「治癒技能よ・・ミノアとナトスの傷を癒して見せたわ・・暖かく優しい力・・・」
「(目覚める直前・・その瞬間までは記憶があったという事か・・自己防衛・・)」
「・・治癒・・」
ナトスが思案しているとピューネが呟いた。
それを聞いたナトスが言う。
「良かったじゃないか、君が望まぬ限り記憶が戻る事はないようだ」
「え?・・そっか・・」
ピューネがそう呟くと、
皆やりきれない表情を浮かべた。
するとナトスが突然話題を切り替える。
「という事でミノアの用件も方がついた、予定通りイカ焼きを買いに行こう」
一同「え?」
「・・う、うん・・」
ピューネがそう返事をすると、
ミュウが質問を飛ばす。
「イカ焼きって、袋いっぱいに買ってた“焼きっこイカ丸”なのですか?」
「あぁアレ♪美味しかったよね」
ミノアがそう言うとミュウは続ける。
「さっき知り合いの冒険者に聞いたのですが、変な噂話のせいで売り切れてるのです・・」
「何だと!?いったいどんな理由で!?」
ナトスがミュウに詰め寄ると、
困惑するミュウの代わりにソロルが補足する。
「魔獣退治の伝説の武器じゃないかって噂?その話で売り切れてるの?」
「はははは・・マジ?・・」
ミノアが思い当たる節があるのかそう言うと、
ミュウが語りだす。
「その噂は流石に信じられてないのです、でもお守りがてら購入する冒険者が後を絶たず、この時間に行っても売り切れているのです・・・」
「な・・何という事だ・・」
「あの一瞬でお昼はイカ焼きってなってたのに・・・」
ナトスとミノアが本気で残念がるのを見た
ピューネが何故か罪悪感にかられ言う。
「・・あの・・ごめんなさい・・・」
「いや、ピューちゃんは悪くない・・俺の方こそ約束を果たせず申し訳ない・・・」
ナトスが弱々しくそう言うと、
苦笑いを浮かべたソロルが提案する。
「そ、そうね・・お昼も過ぎてるし、私もお腹すいちゃった!ねぇロレーヌさん」
「え・・そ、そうね確かに・・何か食べに行こうか!・・ね?・・」
「“ぷかぷか”のパスタが美味しいのです!」
ミュウが便乗するように提案すると
ぼそりとミノアが呟く。
「・・・所長のせいだ」
「・・確かに、そうとも取れる・・」
ナトスが追従するとロレーヌが言う。
「はぁ?何でよ、意味わかんないわ」
するとミノアが答える。
「昨日所長が魔獣を回収しなきゃこうはならなかったかも・・・」
「・・た、たしかに・・その論は正しい気がしてきた・・・」
ナトスが追従するとロレーヌは反論する。
「何よ“正しい気がするって”・・・あなた達アレね?自分たちのせいだって理解してるのね?」
ミノア/ナトス「ギクッ!!」
「甘いわよ、認めなさい、イカ丸を有名にしたのは他ならぬあなた達よ!!」
ビシッ!
正論をぶつけられ、ナトスとミノアは崩れ落ちた。
ナトス/ミノア「・・・」
勝ち誇ったロレーヌが2人を見下ろしていると、
懲りずにミノアが呟く。
「・・・ベネーさんのせいだ」
「・・確かに、そうとも取れる・・」
ナトスが追従するとロレーヌが言う。
「はいはい、わかったわかった、お昼行くわよ」
するとミノアが呟く。
「ベネーさんが遺跡なんかに誘わなければ・・・」
「・・た、たしかに・・その論は正しい気がしてきた・・・」
ナトスが追従するとソロルが言う。
「“かぷかぷ”で良いか、近いし、ピューネちゃんもパスタ好き?」
「うん♪」
するとミノアが呟く。
「ベネーさんに苦言の一つも言わないと・・でもその前に・・」
「・・文句の一つや二つ言わないとな・・しかしその前に・・」
ナトスが追従すると他のメンバーは
既に階段を降りようとしていた。
「おいて行くわよ」
ロレーヌが振り返りそう言うと、
ナトスとミノアは立ち上がり言う。
ナトス/ミノア「お昼にしよう♪」
~南クヨトウ冒険者協会本店~
~魔獣解体買取部署~
慌ただしく働くエクード。
また中央から数人の助っ人が来ていた。
額にうっすら汗をにじませた
フィービーの姿も見える。
そんな作業場にリーネの声が響く。
「あんたぁ!・・・」
「ん?」
エクードがその声に振り返ると、
リーネの後ろから入ってくる人物を確認した。
「・・・」
一瞬険しい表情を見せたエクードだが、
作業の手を止め、その人物に歩み寄る。
「・・・何の用だ・・アキト」
エクードにそう言われたアキトは
少しやつれた顔でいつもの様に言う。
「んだよ、忙しくてピリピリしてんのかぁ旦那・・」
「はぁ・・・」
エクードは自身を落ち着かせるように
大きなため息を付き、アキトの腰に目をやった。
「(・・今までの武器じゃねぇ・・・)」
エクードは確信していた。
アキトがソロルを殺害するために“夢々”へ押し入り、
マスターを殺した犯人だと。
今アキトとともに現れた後ろの男達。
それを含めたこの4人は“リベロット”の構成員、
許す事の出来ない犯罪者。
エクードはアキトの首根っこと掴み、
地面に叩きつけたくなるのをグッと堪え、
いつもの調子で話し出す。
「・・見ての通りだ、中央からも助っ人呼んでんだ、さっさと要件を言え」
「か、解体、買取何だが・・」
エクードの圧に少しびくつきながらアキトが言うと、
エクードは続ける。
「・・獲物は?」
「3mが一体・・」
「じゃぁ・・あそこにするか・・」
エクードは空いてるスペースに視線を移し、
アキト達を連れて歩き出した。
「・・最近見なかったが、元気そうで何よりだな・・」
明らかにやつれた様に元気のないアキトに
エクードがそう言うとアキトは返答する。
「一昨日黒岩で目が覚めたら武器が盗まれるはパーティーは解散するはで踏んだり蹴ったりでよ・・金もねぇしオファククの兄貴の所に工面してもらおうと行ってたんだが、兄貴もスパルタでよ・・自分で稼げと、このステフさんを紹介されたんだ・・」
すると、ステフと呼ばれたRが話し出す。
「どうも初めまして、ステフ・ロックランと言います・・エクード・プランプの名はオファククでも有名・・お目にかかれて光栄です」
「(・・ステフ・ロックランだと・・・)」
エクードが何も言わないで居ると、ステフことRは続ける。
「因みに、そのスペースに獲物を出しても?」
「・・あぁ」
エクードが返答するとステフことRは空間魔法を発動させた。
「“空間魔法・展開”猿魔獣リーアスアームブラック」
「リ、リーアス!?」
「え?・・」
エクードの声に作業していたフィービーも反応した。
エクードの目の前に魔獣の死体が横たわると、
アキトが自慢げに話し出す。
「どーよ旦那!俺だってこれぐらいやれんだぜ」
「お、おまえ・・こいつは・・・」
エクードが言葉を詰まらせると、
近くに来ていたフィービーが言う。
「パジャードックと並ぶ危険な高知能魔獣・・RKWコロニー跡遺跡でしか発見の報告がない猿魔獣リーアスアームブラック・・」
「詳しいじゃんかねーちゃん、14日朝一からRKW遺跡に潜って、こいつが出没する階層まで大変な思いしてさ、こいつを倒すのに死ぬ思いしてさ、帰りで死んだよ・・おかげでやつれちまった・・」
U/O「(それは別の理由でさぁ・・・)」
ステフことRが続く
「アキトの筋は悪くはないが、まだまだって感じかねぇ・・俺が一緒だったとは言えかなり骨が折れた・・多分魔石も壊れてる・・・」
側頭部の傷口を指すステフことRに、
エクードが語り掛ける。
「・・ステフ・ロックラン・・歴代最年少でSSランクへたどり着いた冒険者・・・」
「おっと、こりゃまた光栄な事で・・俺を御存知とは」
ステフが調子よくそう言うと、
目をキラ付かせたフィービーがエクードに言う。
「こ、これ私に!せっかく来てるんだし良いでしょ?師匠・・」
「・・はぁ・・わかったわかった、こいつの解体査定はお前に任せる・・今のが終わり次第頼んだぞ」
「よし!そうと決まれば善は急げ!!」
フィービーが大急ぎで持ち場に戻るのを見届けると、
エクードは続ける。
「こいつの金は何処に?」
「もち、俺の口座に!これで金も出来て、装備の補充もできるぜ♪」
「・・明細はどうする?」
「そうだなぁ、今戻って来たばかりで拠点にする宿も決めてないし・・近いうちに取りに来るよ」
「拠点?・・オファククに戻らないのか?」
エクードはステフに視線を向け質問を飛ばした。
「首都クヨトウに興味があってねぇ、ステフパーティーは拠点を移す事にした」
「近くの宿泊施設だと“夢々”あたりが便利が良いし、今から行ってみるよ」
アキトがそう付け加えると、
エクードは答える。
「(・・“夢々”だと!白々しい奴め!!)そうか、じゃぁまたな、俺も仕事に戻る・・・」
エクードすぐに踵を返し、
作業場へ向かう、その表情は怒りに満ちていた。
「(・・また・・近いうちに)おじゃました・・」
ステフ達も振り返り作業場を後にしようとする。
振り返ったステフの顔は凶悪な笑みで歪んでいた。




