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胸騒ぎ③

ソロルパーティーに歩み寄ったエクードが言う。

「これはこれはソロルパーティー御一行様、お越しいただきありがとうございます、本日はどのような用件で?」

エクードの言葉と態度に違和感を覚えたミュウが突っ込みを入れる。

「腕を組んで仁王立ちで言うセリフじゃないのです、今にも“ガハハ、何の用だ?”とか言い出しそうな振る舞いなのです」

「ガハハ!確かに、っで何の用だ?」

その質問に苦笑いを浮かべつつソロルが答える。

「ちょ、ちょっとややこしいんだけど、解体買取の依頼かな」

「昨日の今日でか?そりゃ凄い・・っで獲物は何だ?」


「サック、ミュウ達も解体買取するみたいだね」

キャディがそう言うと、

ニヤけた顔でザックは言う。

「みたいだな、しょせんその辺の魔獣を2体ってところだろ?」

「冒険者の実力は運でどうにかなるもんじゃない・・何を持ち込んだか見ものだな」

ブレフが追従するとキャディが言う。

「あっ、移動するみたいだ、一体どのスペースに通されるかな」

3人がニヤニヤと見守っていると、

異変に気付く。

ザック一同「え?・・」


解体所の男達もざわつきだす。

男B「・・ちょ、エ、エクードさん?・・・」

男C「そ、そっちのスペースは・・・まさか・・・」


「確認だが、3・4m級が6体だったな?・・」

エクードの問いにソロルが答える。

「そうです、私とミュウで3体づつ持ってます」

「そ、そうか・・じゃぁここのスペースに出してくれ」


ザック一同「はぁー!!」

男A「そ、そのスペースに!?」

男B「今日は軽く流す感じで行こうやって言ってたじゃないっすか!」

男C「ソロルパーティーのお出ましだぁ!」

「うるせぇぞお前ら!よそ見してねーで仕事しろ!!」

エクードが外野に怒鳴りつけると、

ソロルとミュウは魔獣を展開する。

「ははは・・“空間魔法・展開”猿魔獣オランアームレッド」

「“空間魔法・展開”猿魔獣オランアームレッドなのです」

一同「!!!」

折り重なる猿魔獣の死体が、2山現れたのを見て、

ザック達やエクードの部下が絶句する中、

エクードは呟く。

「・・・10時半か・・」

それを聞いたエクードの部下たちが言う。

男A「・・お昼休み有りますよね?・・・」

男B「今日は月一の楽しみ“かぷかぷ”の大盛パスタを食べる日なんすよ!」

男C「今日もだ・・昨日に引き続き、今日もだ・・・」

「だからうるせぇぞお前ら、今考えてんだろうが!手ぇ動かせ!」

エクードは部下に怒鳴ると考え込む。

「(昨日の余波で朝からバタついてる・・・そうこうしてる内に今日の成果を持って冒険者がやって来やがる・・ただでさえ冒険者の出入りが増えてんだ・・・昨日の二の舞になっちまう・・・助っ人が必要か?・・)」

「タイミングバッチリね♪」

すると聞き覚えのある声が、ソロル達に向けて飛んできた。

その声に振り返ったソロルが言う。

「ロレーヌさん?」

「ちょうど良かったのです!」

ミュウも追従すると、

ロレーヌは魔獣の死体に歩み寄りつつ、

ミノアへ向けて言う。

「リーネさんに聞いたわ・・アレがバカナトスの戦利品?」

「バカ・・はははは・・・な、なんかあったんだね・・兄さんが送り付けて来た物で間違いないよ・・・」

苦笑いを浮かべミノアが答えると、

ロレーヌはエクードに向けて言う。

「もう一体追加ね、“空間魔法・展開”猿魔獣オランアームレッド」

7体目の魔獣がその場に横たわると、

ロレーヌは続ける。

「これも一緒にS&S社の口座にお願い♪」

「・・・フィービーに連絡だな」

エクードは諦めた表情を浮かべそう呟いた。



~異世界メジューワ、コパローナ国オニカ中央街~

~パンクティス邸~


モニターの並ぶ一室。

世界冒険者協会緊急役員会議終了直後、

カーリー・パンクティスは荒れに荒れていた。

ガシャン!

「はぁ・・はぁ・・」

カーリーは近くの座席を、

それに座る人影ごと蹴り倒した。

ゴロン。

そこにはマネキンが転がっていた、

あたかも人が座っているようにマネキンが置かれていたのだ。

「先を越されましたなぁ、しかも王将が見つけてしまうとは・・今朝からの胸騒ぎの正体はこの事でしょうなぁ・・・」

そう声は発したのは、カーリーと共に暗躍するラーコス・バルサトレ。

何体も座るマネキンの中には本物の人間も混ざっていた。

「何なのですか!テナクスのあの態度は!!」

未だ激高するカーリーがそう怒鳴ると、

別の人物が声を発する。

「ひゃっひゃっひゃ、もしかしたらと思っておったのに、トラフォールもこういう場面じゃ使えぬ奴じゃて」

90歳を超えるであろう老人がそう言うと、

カーリーは怒りの矛先をその老人へ向ける。

「何を人ごとの様に!リデニア側の内通者としてトラフォールを選んだのはあなたです!この失態の責はあなたにもあると思いますが!?アルファド・モンテイロ!」

この老人の名はアルファド・モンテイロ。

人間はカーリー、ラーコス、アルファドの3人で、

後は全てマネキンだった。

あたかもそれだけの有識者が居るかのように。

「ご指摘はごもっともじゃ、リデニア国内で発見された以上、それを任せておったトラフォールの力不足・・・しかしまぁのぉ・・実はあまり期待しとらんじゃったからのぉ、ひゃっひゃっひゃ」

アルファドが笑いながらそう言うと、

カーリは別のマネキンを蹴飛ばし喚く。

ガシャン!

「事の重大さが理解できないのですか!?テナクスが平和維持の啓示で女神の加護ヘンアを欲していたのです!それが叶ってしまった・・・我々がやろうとしている事は侵略、平和を壊す行為!平和維持が強固になればなるほど、我々の弊害になる可能性があるのですよ!」

「ひゃっひゃっひゃ、そんなもの百も承知、そもそもおつむの弱いカーリー君主へ提唱しヘンア捜索を邪魔するよう進言したのはわしじゃ、しかしそれはあくまでも可能性の話じゃて、女神の加護リーオ相手には結局競り負けると思っておったわ」

「い・・今何と・・・」

怒りに震えるカーリーを他所にラーコスが言う。

「なるほど、アルファド殿の中では女神の加護ヘンアの件は想定内だったと・・ならば、この胸騒ぎは別の何かという事になりましょうなぁ」

「ひゃっひゃっひゃ、その通りじゃ何かの弊害になるとまでは思うとらんよ、そもそも人の力では抗いようのない強力な波が押し寄せるのじゃ、ちょっとやそっとの事では失敗せぬと思うとる」

それを聞いたラーコスが素朴な疑問を投げかける。

「ふむふむ、では今回、急ぎ可決した武闘大会の件もやり過ぎでしたかな?」

アルファドはその問いに答える様に語りだす。

「昨夜ラーコス殿から話を聞いた時は、正直面倒じゃとは思うたかのぉ、しかし、先ほどから言われておる“胸騒ぎ”・・それが何なのか分からぬが、引っかかる部分があるのなら盤面は作っておくに越したことはないとも思うた・・・因みにじゃが、今回可決までの流れで根回しに尽力したのは他でもないガイン・トラフォールじゃ」

「ほぅ、そう言う場面じゃ使える奴だと言うことですかな」

アルファドは笑いながら続ける。

「ひゃっひゃっひゃ、そう言う事じゃのぉ・・それにこの盤面を盤石なものにする為には例のCランク冒険者3名をリデニア国外へ追い出す必要がある・・それもまたガイン・トラフォールに期待しとるよ」

「・・・」

何も言わず聞き入っているカーリーは

怒りの矛を収めていた。

君主、国の代表。

しかしこの場では一番立場が低い事を知っていた。

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