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使えない力⑦

~S&S社~


ナトスは食堂の椅子に腰かけ、

目の前のコーヒーをすまし顔で飲んでいた。

「それ、僕の何だけど」

「・・・」

ミノアがそう愚痴を言うと

すまし顔でスルーするナトスに、

ソロルが質問を投げかける。

「ねぇ、本当に未来が見えるの?・・それって凄い事なんじゃ・・・」

「・・・」

ナトスは無言のまま手を出すと、

ヒョイっと指をさした。

その指の先にはうつ伏せに寝ているミュウがいる。

皆が指につられミュウを見ていると、

おもむろに起き上がり出した。

ソロル/アンプレス「!?」

ミュウはまるで自分が起き上がるのを知って居たように

視線を送る皆に気付き、驚いたように言う。

「え?・・な、なんなのですか?・・・」

「い、いや・・ミュウ起きてたの?」

ソロルが質問するとミュウは答える。

「ずっと起きては居たのです、話しは聞かせてもらったのです」

ミュウはテーブルまで歩み寄ると、

ナトスに質問しようとする。

その瞬間ナトスが声を発する。

「そうだ、見たのはその時より前だがな」

「・・・ヒョェ・・」

ミュウは質問しようと開けた口から、間抜けな声をもらした。

「証明は以上だ・・・まったくもって使える能力に思えんのだが・・・」

ナトスのその発言を聞いたミュウが気付いたように言う。

「そ、そう言う事なのですか・・・ミュウがしようとした質問に、前もって答えた・・」

「ミュウが起き上がる事を前もって俺達に示唆し、ミュウの質問に前もって答えた・・・因みにミュウはどんな質問をしようとしたんだ?」

アンプレスが補足するように言いつつ、ミュウへ質問を投げかけた。

「ミュ、ミュウは“シャリの雷属性を知っていたのもその能力なのですか?”と聞こうとしたのです・・・」

ソロルはミュウの言葉を聞き、零一遺跡での出来事を思い出した。

「あ、あの時・・ナトスは私すら知らないシャリの技能を言い当てた・・あたかも見たことがあるように・・・未来視で見たのね、その後にシャリが雷属性魔法を使うのを・・・」

それを聞いたナトスが言う。

「そう言うわけではない、ミノアが言ったように俺の“先見”は5秒が限界、実際シャリ蔵が魔獣に雷属性魔法で攻撃したのは、俺の発言から5秒以上は経過している、ミュウの質問に答えた様に、それを見たのはその時じゃない、遺跡に行くよりも前だ」

それを聞いたソロルが疑問を投げかける。

「え!?いつ見たのよ、シャリは殆ど街中でしか一緒に居なかったはず・・属性魔法を発動させる状況何てなかったわよ?」

「あるとすればあの時かな・・」

ミノアはそう言うと、ソロルの疑問に答える様に続ける。

「シャリちゃんが兄さんに“瞬足”で突進した時・・」

するとミノアの言葉を肯定しつつナトスが続ける。

「正解だ・・樹海で猿魔獣を回収し解体換金に行く前だ、KS2番ゲートを出てソロちゃんはシャリ蔵を召喚しただろ・・あの時、俺がシャリ蔵の角を掴み突刺を止めた後、雷属性魔法を放つ未来を見た、俺は追撃が来るのを感じ取りその場から退避していた為直撃はしなかったが、シャリ蔵は角から放電していた・・」

「街中で属性魔法!?・・」

青ざめた表情でソロルがそう呟くのを聞き、

ナトスは続ける。

「直ぐにソロちゃんがシャリ蔵を止めた為・・被害は最小限に抑えられていたように思うが、周囲の建物の窓が割れる被害は出ていたぞ」

「そ、それでも、かなりの責任問題になっていたのです・・」

ミュウがそう言うとソロルは頭を抱える。

「そ、そうなってたら罰金レベルじゃなかったわね・・」

するとミノアが嫌味っぽく言う。

「なるほどねぇ、その未来の兄さん自身が罪悪感があったんだねぇ、だからシャリちゃんに跨り、属性魔法を放つ未来を変えた、そもそもお姉がシャリちゃんを召喚する流れも兄さんの行いのせいだったしねぇ」

「さぁ、どうだったかな、覚えてないが・・」

少しムッとしたようにナトスが言うと、

ミノアはさらに嫌味っぽく言う。

「おかしいなぁ、未来の自分をリアルに感じとって記憶に残せるからこそ、その未来を回避できるって言ってたようなぁ気がするけどなぁ」

「チッ、煩い奴だなおまえは・・」

「お待たせしました教官!準備万端いつでも行けます!!」

突然、忘れ去られたユナの声が響いた。

一同「え?」

「な、何だよ“え?”って・・教官・・まさかまた・・・」

ユナがそう言うとナトスは答える。

「・・お前の存在を失念していた・・・」

「存在!?カウントじゃなくて、存在そのもの!?」

ユナが噛みつくとナトスはめんどくさそうに言う。

「いや、セーフだったよ、余裕でセーフ、よくやったな」

「よっしゃー!」

一同「(余裕で2分以上たってた・・・)」

「休憩は終わり、俺は仕事に戻るよ」

ナトスがそう言い立ち上がると、

ソロルが引き留める様に言う。

「ちょっと待ってよ、何でその能力が“使えない”力なのよ」

「俺もそれは疑問だ、不利益な未来を回避できるなんて例え5秒でも有効だと思うが、日常生活や戦闘においても」

アンプレスが追従するとナトスは

ユナに歩み寄りつつ言う。

「当初言ったように、使える使えないについてはミノアが回収するべきだ」

ガシ!

「な!?へ?・・」

ナトスがユナの頭を掴むと、

ミノアが泣きつく。

「何だよ兄さん、説明とか苦手だから僕じゃ収集付かないよ・・」

「知らん、厭味ったらしいミノアが頑張るしかない、じゃぁな」

「あっ、ちょっと!」

スッ。

ナトスとユナがその場から消える。

「(・・こりゃまた、えらく遠くまで・・・)んだよ、兄さん・・」

ミノアはそう呟き振り返ると、

ソロルとアンプレスの視線が刺さる。

「う・・」

ミノアがしり込みすると、

アンプレスが言う。

「まぁ、時間はゆっくりあるし、話を聞こうか」

「新しいコーヒー淹れてあげるね、ミュウも飲む?」

「頂くのです」

ソロルがキッチンへ向かう中ミノアは思う。

「(ふ・・不安だ・・・)」


~南の樹海、S&S社屋から300km付近~


ユナの目の前に、外壁に大きな穴の開いた建物が映る。

「ここは・・・」

ユナが周囲を見渡すと、

樹海にポツンと4軒の建物がならん場所だとわかる。

「放棄されたコロニー郡の一つ・・・」

「ん?来たことがあるのか?」

ユナの言葉を聞いたナトスがそう言うと、

ユナは説明する。

「う、うん・・冒険者の中じゃ有名な心霊スポットとして一時期ブームが・・・今じゃ誰も近付かなくなってる・・・私が来たのも2年以上前だし」

「コロニー郡と言ったが、こういった場所が他にもあるのか?」

「ここを含めて全部で5か所あるって聞いたことが・・“オファクク”側の樹海の切れ目にコロニーと呼ばれる小規模の町があって、そこから樹海側には避難所の意味も込めて宿泊施設が点在してたみたい、コロニーが放棄された事で廃墟になったらしいけど・・」

「コロニーが放棄されたのは、遺跡の出現が原因か?」

ナトスがベネーから得ていた情報と照らし合わせ、

そうユナに聞くと、ユナは答える。

「出現って言うか、気付かづに遺跡の上に街を作ったって聞いたけど・・・結構な被害も出て死者も多かったみたい・・家や家族を失った孤児も大勢いた・・・他の国もだけどね」

それを聞いたナトスは質問を投げかける。

「ん?他の?・・・ちょっとまて、同じような状況が他の場所でも起きているのか?」

「え?同じような状況って?」

ナトスの質問の意図が理解できずユナが聞き返すと、

ナトスはかみ砕いて再度質問を繰り返す。

「同じように遺跡の上だと気づかずに街を作り、結果被害が出てしまったコロニーが他にもあるのかと聞いているんだ、そんなの偶然では無く意図的なものだと言う意味を込めて聞いている」

「え?あぁ・・」

ユナは意図を理解し続ける。

「教官の言う通り、同じような被害は4カ国で起きてる、特にひどかったのはチャチェー国だって話だよ、それに当時は偶発的に起きるはずないって意見も多くかなり調査もされたみたい、女神至上主義教団の“アンディア”も女神様の怒りだーって騒いでたし」

「(・・アンディア・・)」

「結局どんなに調べても結論は出なかったて歴史の授業で習った、ってい言うか、そんな事を人の力で意図的にやるなんて無理じゃない?“アンディア”見たいな話になりそうだし、偶然の事故だったみたい」

「・・・」

ナトスが沈黙しているとユナが質問を投げかける。

「因みに何でこの場所に?教官の仕事と関係があるのか?」

「ん?あぁ、この場所でユナ達が捜索していた失踪者全員を発見した」

それを聞いたユナは驚きつつ質問する。

「え!?捜さ・・失踪者って冒険者の?ソロルが教官たちを召喚したあの日の任務!?」

「そうだ、生きていたのは3名・・・4名は死亡していた・・・中の血痕はまさに血の海・・・それはそこでの惨劇を物語るには有り余る光景だ・・・」

ゾーッ。

ユナは背筋が凍る感覚を受けつつ

引きつった顔でナトスに言う。

「や、やめろよ教官・・なんでそんな言い方なんだよ・・・ただでさえ心霊スポットなのに・・・」

ユナが怯えた様にあたりをキョロキョロするのを見て

ナトスは言う。

「ユナ、俺とミノアが居た世界でその心霊的な物はすでに解明されているが、この世界ではどうなんだ?ロレーヌもお前の様に怯えていたが」

「嘘?・・か、解明!?だったらやっぱり居るんじゃん!いや・・私も何となく見たことがあるような気はしてたんだ・・やっぱりアレ幽霊だったんだ・・・はっ!ね、ねぇ、何なの?幽霊って何なの?この世界じゃ見たことがあるって人は居るけど解明なんてされてない・・・このままじゃ怖くて寝れないかも!」

答えを求め懇願するユナを見て、

ナトスは面倒になり話を切り替える。

「機会があればな、お前が何となく見たことがあると言うのはわからんでも無いとだけ言っておこう、寝れないなら寝なくていい、お前はお寝坊だしな、では魔獣の調査を始めよう」

「おいぃ!機会ってなんだよ!いつだよそれ!今教えてよ今!」

「因みにこの付近でも猿魔獣を見かけている、お前たちが襲われた場所から離れているが同じ種類だった」

「ちょっと!魔獣の話じゃない!幽霊よ幽霊!はっ!ヤバ!声に出すと寄ってくるんだった・・・」

「その事から考えても、更に南西側・・その遺跡が怪しいと俺は思っている・・」

「ちょ・・・(駄目だこれ・・・)」

一切聞く耳を持たないナトスの態度を見て、

ユナが肩を落とし諦めるとナトスは続ける。

「ここから出来る範囲を調査し、必要なら魔獣の殲滅、遺跡を目指す・・始めるぞ?」

「・・はい」

力なくユナが答えると、

ナトスは調査の為動き出した。


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