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使えない力③

~屋内~


犯人A「よっしゃー!またもや総取り♪」

犯人B「マジかよ!」

犯人C「やってらんねーよクソが・・」

ギャンブルに興じる犯人に、

別の犯人が声をかける。

犯人D「なぁ、トイレに行った女遅くねぇか?」

犯人A「そうか?」

犯人B「あれじゃね、野外で楽しんでんじゃね」

犯人C「好きだねーあいつも・・・」

するとリーダー格の男が口を挟む。

リーダー「おい!誰か連れてこい、モーフィスさんが来てもおかしくない時間なんだぞ」

ドッバシャン!!

突然、建物の壁が爆発したように破壊され、

同時に一人の男が飛び込んできた。

犯人E「ぐわぁぁぁ!いてーいてーよ!」

木造とは言え壁を突き破って入って来た犯人Eは

全身を強く打ち付けているにも関わらず、

足の小さな切り傷を異常に痛がっていた。

リーダー「何事だ!何があった!!」

犯人E「切ってくれぇ!足をッ!いらねぇ!切り落としてくれぇ!!」

犯人グループが困惑していると、

破られた壁からナトスが入ってくる。

それに気づいた犯人グループが声を荒げる。

犯人C「てめぇーか!?」

犯人A「何もんだぁ!」

犯人B「ただで済むと思うなよ!」

「黙れ、俺に興味を示すな」

ナトスがそう言うと同時に、

犯人E以外のが犯人が全員、空中で悶えだした。

リーダー「・・が・・・あ・・(なんだこれ・・)」


別室ではロレーヌとアーシャが、

とらわれていた女性のロープを切っていた。

ロレーヌは毛布を掛け言う。

「パティーね、もう大丈夫よ、よく頑張ったわね・・・」

「うぅ・・ぐす・・うぅぅ」

ロレーヌは、頷きうずくまりながら泣く女性の肩に手を置き

アーシャと、リリーに視線を向ける。

リリーのロープを切ったアーシャが

リリーに毛布を掛け声をかける。

「・・リリー、大丈夫?助かったんだよ」

「・・・」

茫然とし反応のないリリーに、

ロレーヌも声をかける。

「今はただ、助かった事だけを考えないさい・・・」

リリーにはロレーヌの言葉が届いていなかった。

生気の無い目でリリーは呟く。

「・・・もう・・殺して・・・」

「(精神の摩耗が酷い・・・)早急に街へ戻りましょう」

ロレーヌがアーシャに促すと、

リリーを無理やり立たせた。

ロレーヌは女性たちから首飾りを回収すると

その部屋から出る。

カチャ。

ロレーヌ達が部屋から出ると、

ナトスがリーダー格の犯人の顔を

覗き込んでいるのが見えた。

ロレーヌ達が部屋から出てくるのを知っていたようにナトスが言う。

「ちょうど今、全員に自殺防止をしたところだ」

ナトスがそう言いリーダー格の男から手を離すと、

他の犯人たちと同じように空中で悶えだした。

犯人E「いてぇ!!もう少しぃぃ!!」

「え!?」

アーシャの目には異様な光景が映った。

5人の男たちが、先ほど外で見た様に

空中で悶えているのもそうだが、

それ以上に、

自分が足を切りつけた犯人の男が

自分自身の足を切り落とそうとしていた。

「さっき言った“面白い物”とはこの事だ、失血死を防ぐためしっかりと止血をし切り始めては居るが、それでも死亡するリスクは高い行為、俺の自殺防止を凌駕する痛みなのだろうが、どちらにせよこいつの精神は瓦解する・・・」

目の前に広がる光景に混乱し、

女性たちはナトスの声を理解できなかった。

しかしリリーだけは、

興味を示すようにナトスに視線を向けた。

「・・・」

何も言わないリリーにナトスは言う。

「リリー・・この男は今自分で足を切り落とそうとしている、その先にある切り傷の痛みに耐えかねずにな」

犯人E「よっしゃ!ヒャハハ切れた!切れたよ!ヘヘヘ解放された!痛くねぇ!!」

シュパ!

犯人E「がぁぁぁ!いてぇ!何でこん・・・あ・・が・・・」

「五月蠅い・・・」

ナトスは男の右腕を少し切りつけると、

喚き散らす男の口をまた、

何らかの力で閉ざす。

「言ったはずだ、俺のやる事に興味を示すな・・目的も理由も気にせず理解しようともするな・・・俺もお前たちにそうしてる・・・」

ナトスは犯人たちにそう言うと

リリーたちの方へ視線を向けた。

そして“忍刀”を床に突き刺し、

リリーに向けて語り掛ける。

「・・リリー、見ての通り、この刀で切られた者は、例えかすり傷であろうとも耐え難い痛みを感じる・・・この男の様に切断した方が楽だと思うだろう」

「・・・」

リリーたちの目には、凄い形相で犯人Eが自分の腕に

剣を突き立てている光景が映る。

「・・ナトス・・・」

ロレーヌはナトスがまたアーシャにさせた様に

リリーに刀を使わせようとしているのを悟る。

「(・・でも、リリーの精神はもう・・・)」

ロレーヌは無理だと感じていた。

リリーは思考出来ないほど、状況の理解が出来ないほど、

精神が壊れてしまっていると。

リリーは反応しない。

ロレーヌはそう思っていた。

「・・あ、ちょ、リリー?・・」

アーシャの腕からリリーが離れる様に

一歩前出た。

「え!?(リリー?)」

ロレーヌはリリーの顔、その目を見て驚きの声を漏らした。

そんなリリーにナトスは続ける。

「容易に死を受け入れるほどの苦痛だ・・死んで楽になるのを選ぶものが殆どだが、こいつらは、自ら死ぬことを俺が許していない・・・」

リリーはナトスの話を聞きながら、

刀へ歩み寄る。

「・・・私は・・・」

リリーは目から涙をあふれさせていた、

しかしその眼は悲しみの目ではなかった。

「(・・・リリーの目に生気が戻ってる・・・怒り・憎悪・・・感情までもが見える・・・完全に精神を持ち直したの?・・・)」

ロレーヌが困惑している中、

ナトスは続ける。

「どちらにせよだリリー・・・俺はこの犯人たちの内4人は、殺すつもりでいる、生きてつれ帰り、事件の解明とやらに協力させるのは2人で充分、いや3人か・・・まぁ、誰でもいい、選べ」

ナトスの言葉を聞きながら

リリーは自身の受けた苦痛を思い出していた。

精神を閉ざす事でしか耐えられない苦痛。

それでも足りず、最後は死にたいと思っていた。

死を受け入れるほどの苦痛。

ナトスは続ける。

「2人だ・・お前の受けた苦痛と・・・ジョー・テンレス・・・彼の分で2人・・」

リリーはジョーの名を聞いた瞬間感情を爆発させる。

「あああああああぁぁ!!」

涙を床にこぼれるほど溢れさせ、

“忍刀”を握ると、

犯人Aを切りつけた。

犯人A「・・・が・・・ぎゃ・・・」

リリーはそのまま犯人Bに目掛け、

“忍刀”を振り上げると

「わぁぁぁぁぁ!!」

怒り、憎悪、感情を吐き出すように叫び

強い殺意を持って切りつけた。

犯人B「・・ぐぁ・・・あ・・・・」

しかし扱いが難しいのか、

充分な深さの傷を負わせることは出来なかった。

犯人A・Bは激痛に悶え苦悶の表情を浮かべている。

痛む患部を抑え、摩り、痛みを声に出し叫ぶ、

その全てが出来ず、只々痛みにその身をさらけ出している

犯人Aに向けてリリーは切りつけながら叫ぶ。

「お前は!」

シャン!

「私を人質にして!ジョーに首飾りを付けさせた!」

シュパ!

「抵抗できないのを良い事に!」

シャン!

「何度も!」

シュパン!

「何度も!」

シュパ!

「何度も痛めつけた!」

シャン!

「ハァ、ハァ・・こんな風に!」

シュパン!

リリーは息を切らしながら、

全力で切り付けているように見えたが、

全ての傷は浅く、致命傷に至らない。

犯人Aは痛みの渦に飲み込まれ、

すでに死を受け入れていた。

犯人A「・・こ・・・ころ・・・・・し・・・」

リリーは呼吸を整える間もなく、

犯人Bを睨みつけると、

その首筋を切りつけた。

シャン!

犯人B「ぐぅ・・・・が・・・」

しかしやはり傷は浅く、

致命傷に至らない。

リリーは思い通りに行かない事に苛立ち、

怒りの感情を再度爆発させる。

「わぁぁぁぁ!」

ズシュ!

リリーは犯人Bの腹部に“忍刀”を突き刺し叫ぶ。

「お前は死ね!今すぐ殺す!!」

リリーは“忍刀”を抜くと、

すぐさま切りつけた。

「わぁぁぁぁ!」

シュパン!

しかし殺せない。

無抵抗の人間を切りつけているのに、

致命傷に至らない。

犯人B「・・ひ・・が・・ぐ・・・あぁ・・・」

リリーは、酷く悶え苦しむ犯人Bに、

静かに言う。

「・・・お前は、死にそうなジョーに・・・ジョーの目の前で・・・見せつける様に私を犯した・・・」

「・・リリー・・・」

アーシャもそれを知っていた、その先も。

リリーは続ける。

「・・・そして今度は・・・私に見せつける様に・・・私の目の前で・・・ジョーの首を切り落とした・・・」

ナトス/ロレーヌ「・・・」

ナトス達はこの惨劇をアーシャから聞いていた。

ジョーが殺された時、

4つ目の首飾りは壊れ使えなくなったことも。

犯人B「が・・・こ・・ころ・・・し・・・・て・・・・」

犯人Bも既に耐えがたい苦痛で死を願っていた。

それほどの痛みを感じているのだと、

表情からも理解したリリーは、

薄っすらと笑みを浮かべ言い放つ。

「・・は・・・さっきまでの私みたい・・ね!」

シュパ!

犯人B「・・ひ・・ひ・・・い・・」

リリーは手に持つ“忍刀”を見つつ思う。

「(・・これでは多分人を殺せない・・・そう言う武器・・・)」

リリーはナトスに視線を向けるとナトスと目が合った。

リリーは諦めたような表情を浮かべナトスに歩み寄る。

ナトスが手を差し出すと、

リリーは“忍刀”をナトスに返した。

「正直心は晴れてない・・・出来れば本当に殺したかった・・・」

「・・・わかっている」

リリーは振り返り、アーシャの元へ歩き出した。

その顔は悲しみに満ち、涙であふれていた。

「・・リリー・・・」

アーシャがかける言葉を見つけられずに居ると、

リリーは大丈夫と言わんばかりに笑顔を作り、

消え入るような声で言う。

「・・ジョー・・が・・死んじゃった・・・」

「・・・」

リリーは涙を浮かべ、何も言わないアーシャの腕にうずくまると、

そのまま声を殺し、泣き崩れた。

ロレーヌは精神が正常に戻りつつあるリリーを見て、

一連の流れからある結論を導き出していた。

「(・・あの武器の殺傷能力は限りなく低い・・・ナトスは4人殺すと言っていたけど、恐らく嘘・・・リリーに強烈な殺意を持たせ、憎悪の感情で逆に精神を安定させた・・・死ぬことを望んでいたリリーはもういない・・・)」

ナトスが犯人A・Bの拘束を解くと、

床に転げ落ちた彼らは痛みにのたうち回る。

そしてナトスはまた、“忍刀”を床に突き立てた。

「パティー、浮いてる奴から1人選べ・・・4人目だ」

「え・・」

一連の流れから、ナトスの言葉の意味が理解できたパティーは、

だからこそ動けずにいた。

「(・・ナトス、もうみんな気付いてるわ・・・その武器じゃ殺せない・・・)」

ロレーヌがそう思っていると、

パティーも同じような事を口にする。

「そ、その武器じゃ殺せないんじゃ・・・首飾りのせいで魔力も十分に回復しきれてないし・・・」

それを聞いたナトスは、ある行動に出る。

そしてロレーヌは、

如何ともしがたい自分の認識の低さを痛感する。

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