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一人飯

作者: 夜空タテハ

ジャンプ小説賞のテーマが「ひとりご飯」だったので書いてみようかと思ったのですが、文字数があまり長く書けなかったのでこちらに上げることにしました。

 自分は食事というものに興味がない。

 いや、それはさすがに言い過ぎた。ただ、一人で食べる食事が億劫で仕方ないのだ。

 友達と一緒に食べる食事は好きだ。

 一人での食事でも、なるべくならおいしいものを食べたいと思ってはいる。しかし、一人でおいしいものを食べても楽しくないと感じてしまう。

 楽しくない、というのは違うかもしれない。味気がない。一人で食べる毎日の食事は、義務と惰性でしていることで、できることならしたくない。

 錠剤や何かで必要な栄養素がすべて得られて空腹感も満たされれば、それが理想だと思っている。だから、完全栄養食と呼ばれるものをよく食している。

 錠剤一つで、なんて楽にはいかないが、完全栄養食というものはなかなか便利だ。なにせ必要な栄養素がまとめて摂取できる。

 温める必要性があるものもあるが、そういった手間もなく開けてそのまま摂取できるものもある。スムージーやパンなどが特に楽でいい。

 自分にとっては、食事という行為が面倒くさくてたまらないのだ。

 献立を考えて、食材を選んで、調理をして、皿に盛り付けて……。あまりにも時間も手間もかかりすぎる。スーパーやコンビニで弁当やお惣菜を買えば済むかもしれないが、それはそれで疲れるのだ。

 なにせ、選択肢が多すぎる。おにぎり一つとっても種類がごまんとあるし、今は本当に様々な料理がスーパーやコンビニで手軽に買えるようになっている。

 それは便利で良いことだと思う人もいるだろう。

 けれど、自分は、それがとても億劫なのだ。それらのたくさんの選択肢の中から、食べたいものを選ぶという行為が面倒で。「なにかを選ぶ」という行為そのものがストレスで仕方がない。

 だから自分は、いつも食事はだいたい同じものを買うと決めている。

 特に、職場での昼はもう何年もずっと同じパンだ。完全栄養食と謳われていて栄養が取れるらしいので食べ続けているが、実際に実感はない。味もイマイチおいしくはない。食べられる程度の味ではあるし、まずいとまでは言わないが、おいしくないのだ。

 最近、完全栄養食のスムージーというものを見かけたので買ってみた。それもまた味はまずくもなくおいしくもなく、という感じだった。栄養が取れるのはいいかもしれないが、カロリーが低くて満足度が低かった。

 自分はカロリー制限をしたいわけではない。楽をしたいのだ。面倒なことをしたくないのだ。

 カロリーはむしろ積極的に取りたいと思っている。カロリーも栄養も取れるのが理想なのだ。

 自分はよく周りから「体が細い」と言われるので、ふっくらとした体に少し憧れがある。かといって無駄に脂肪を増やしたいわけではない。健康的に栄養を取って筋肉を成長させて体重を増やしたいのだ。

 健康的に、が理想ではあるものの、面倒くさいことはしたくないので自炊はできない。カップ麺を用意することすら億劫なのだ。レンジで温めるくらいならしてもいいと思っている。

 そんなわけで、自分の食生活はお世辞にも褒められたものではない、

 しかし、改善したいとは思っているのだ。栄養バランスを考えようと、コンビニでサラダを買った時もある。タンパク質を取るのがいいのかもしれないと思って、スーパーで豚肉とカット白菜を買った時もあった。豚肉と白菜のミルフィーユ鍋なんていうものをインターネットでよく見かけていたからだ。けれど、自分には億劫すぎてそんなオシャレな料理は作れない。なので、レンジで温めるだけにした。豚肉と白菜をレンジで温めただけのものを自炊と言っていいのかわからないが、自分にとっては自炊の第一歩だった。

 とは言え、それも長くは続かなかった。何度か、豚肉と白菜をレンジで温めたものを作ってはみたが、一向にそれ以外のレパートリーが増えない。なぜなら、レシピを調べるのが億劫だからである。

 今は、レンジで温めてすぐ食べられるものにハマっている。少し前はいつも家ではカップ麺だったのだが、遂にお湯を沸かすことすら億劫になってしまった。レンジは楽で便利でとても重宝している。たまにはカップ麺も食べているが。

 友達や誰か大切な人と一緒に食べる食事は好きだ。だが、一人で食べる食事というものは、面倒で仕方がない。

 自分のような人間は、ごまんといるのでないかなと思っている。

 皿洗いすらしたくないからなるべく食器を使わないし、できれば使い捨てのゴミにできる食器ですべてを済ませたいと思っている。

 しかし、一人で食事をすることは嫌いではない。いや、矛盾したことを言っているかもしれないが。

 以前は、家族の食べる時間に合わせて家族で集まって食事をしていた。今は、一人でどこへでも行けて、好きな時間に好きなものを好きなだけ食べられる。

 そういう、自分の好きなものを食べたいように食べる時間は、この上なく幸せだ。

 例えば安いイタリアンでもいい。たまには自分へのご褒美にとお寿司を買ったっていい。

 この前は一人でしゃぶしゃぶを食べに行ったが、自分の好きなだけ肉を食することができるのはとても幸せだった。肉だけではなく充実したメニューが用意されていて、素晴らしかった。

 ただ、一人で初めて行くお店に行くのは怖いなという気持ちもある。

 この前に行ったしゃぶしゃぶがいい例だったが、どこまでがセルフで何をどうすればいのか皆目わからないのだ。まあ、いい経験にはなっただろう。一人飯は、事前にどれだけお店のことを調べるかがとても重要だと痛感した。

 例えばメニューはどんなものがあるのか、どこまでがセルフサービスなのか。店員さんに聞いて事なきを得たが……。それにしても、初めての人間に対してわかりやすいように案内が掲示されていればいいのにと思ってしまう。

 まあ、そんなわがままを言っても仕方がない。

 一人で家で食事をするのは億劫だが、一人で外食をすることは好きなのだ。なにせ、面倒くさいことをしなくていい。食材の調理から食器の片付けまで、なにもかもを店員さんがやってくれる。こんなに素晴らしいことがあるだろうか。店員さんは大変そうだなぁと思うことはあるのだが、自分にはとてもありがたいことだ。

 それにしても、自分にはとても理解し難いことがある。「一人飯」を題材にしたフィクションでは、よく、料理と一緒にお酒が紹介されている。

 お酒は、自分は嫌いではないが、一人で積極的には飲まない。自分には一人で飲むお酒の良さが理解できないのだ。

 お酒が料理の味を引き立てるとは思えない。料理にお酒が必要だとは思えない。

 お酒がおいしくないとは言わない。まあおいしいものもある。

 それでも、自分にとって最高の一人飯にはお酒は必要がないなと思う。

 では、自分にとって最高の一人飯とはなんなのか? 考えてみても、うまくまとまらない。

 ジャンクフードが好きだ。特に、安っぽいチーズバーガーとポテト。安っぽいジャンクフードはおいしい。おいしいものは体に悪いなんて言われているのを聞いたことがあるが、本当にそうなのかもしれない。

 その一方で、お寿司なども好きなのだ。まあ、そんなに高級なものは口にできないが。

 スーパーなどで安売りになっていた時に買う程度だ。その中でも、特に好きなのが、ガリである。そう、メインのお寿司ではなく、ガリが好きなのだ。もちろん、メインであるお寿司はおいしい。お寿司の味があってこそ、ガリの味が強まると思っている。それはわかっているものの、ガリだけ大量に食べたいと思う程度にはガリが好きだ。

 ただ、スーパーなどで売られているお寿司パックに付いているガリは量が少ない。

 回転寿司などに行けばガリを大量に食べられるのではないかとも思っているが、回転寿司というものを少し敷居が高く感じてしまう。

 回らないお寿司なんてもってのほかだ。

 なるべく安くておいしいものを食べたい。それは万人の共通の願いなのではないかと思う。自分だってそうだ。

 それでも、食事という行為が面倒くさいと思ってしまうのだ。人間の体はかくも面倒なものなのか……。

 栄養が取れて満腹になれればそれでいいのだが、いかんせんそれがとても難しい。

 食事というのは、生きていく上で欠かせないものだ。それを疎かにしてはいけない。

 なにせ、人間の三大欲求だなんて呼ばれているくらいだ。食事というものは、それだけ人間にとって大事なものなのだろう。

 自分には、そんなに大切なことだとは思えないのだが。なんて、そんな言葉を並べるのはただのかっこつけだと思う人もいるかもれない。世の中の多くの人間にとっては食事はとても大切なものらしいから。

 しかし、自分と同じような人間は案外けっこういるのかもしれないと思っている。主食はレンジで温めるモノかパンかカップ麺。食事にお金をかけたくない。手間も時間もかけたくない。

 まあ、それが悪いことだとは思っていない。自分が満足できているのなら、まあそれでいいのだろう。

 最近は、一人で食事に行くことに対するハードルが下がっているかもしれない。それでも、周りを見てなんとも言えない気分になる時はある。

 寂しいとか、友達が欲しいとか、そういうわけではない。ただ……なんと言えばいいのだろうか。自分はこうしていつまでも孤独に生きていくのだろうかと、不安になる時がある。

 家族連れやカップルが周りではしゃいでいる中で、一人で黙々と食べているのは、なんとも複雑なのだ。けれど、別に、劣等感を抱きはしない。

 ただ、ほんの少しだけ、寂しいのかもしれない。けれど、周りを気にせず一人で黙々と好きなものを食べる時間が、この上なく幸福なのだ。

感想をいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お話のほぼ全てに共感します! 私もあまり食事に興味がありません。 生きるために食べているだけで、食べるために生きてはいないんですよね……。 好きな食べ物などもありますが、基本的には食えれ…
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