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ある旅の記録1

作者: ましゅ

男は、旅の末にある都市にたどり着いた。



…都市、と言ってもそれはかつての姿。

今男の目の前にあるのは、「ここは昔、国の中枢として機能していました」という文言を刻んだ石碑が一つ、ポツリ、と鬱蒼と生い茂る樹々の中に肩身を狭そうにして存在している光景。


かつての人は、この石碑を残すことで何を言いたかったのだろう?

石碑は半永久的に残る。もしかしたら誰も見なくなる可能性が大いにあり得るその石碑を、創造する、運搬する、設置する、それだけのことをするのにどれだけの時間と労力を割いたのだろうかと考えると、恐ろしいほどの人間のエゴを感じる。


そこまでのことをしてなお、当時の人は栄華を極めたことを宣言して悦に浸りたかったのだろう。



でも、こんな光景は今までに何度も見てきたものだ。



「ここは昔商人の町でした」

「ここは○○が存在していました」

「ベストオブ○○」



そんな、今となってはどうでもいい文言を刻んだ石碑や鉄製の看板が、どれだけ多く存在していたか。

どうしてそこまでしても人は良き思い出を他人に押し付けようとするのか。



そして、その果てに今、誰にも気づかれずにひっそりと存在する”叫び”を、どう思うのだろうか。



隣町に行くために丸3日歩き続けていた男は、疲れ果てて棒のようになった脚を労わろうと、石碑の隣にある腰掛けるにはちょうどいい高さの石に座って空を仰ぐ。



「のどか」だ。



大昔、まだ高度な文明が発展していたという時代に書かれた文献には、草木が生い茂り、鳥の声が聞こえ、自然の音が溢れかえっている光景をそう表現すると書いてあった。自分にとってはそれが当たり前で、それ以外を知らないのだが、ふと思い出したので表してみた。



かつて人が躍起になって建てた「ビル」も「道路」も、今ではただの残骸だ。

400年程前に起こった世界規模の戦争で地球上の人口が壊滅的に減少し、更には戦争によって人々の間には他者への疑心暗鬼の心が芽生え、「国境のボーダレス化」は終わりを告げた。人々は「原始的生活」、つまるところのムラ社会制を復活させ、閉じこもった。それによって高度な文明社会は崩壊したそうだ。



男が以前訪れた村では、空を裂くように存在する巨大な塔があった。

それはかつて「でんぱ」というものを経由するために建てられたもので、でんぱは当時の人々にとって必要不可欠だったためそのようなものがいくつも存在したそうだが、その村にあったものだけは特別で、「とうきょうタワー」と名付けられ、崇められていたそうだ。



時代は変わるものだ。


もしかしたらあと400年後、また世界は高度な文明を迎えるかもしれない。


でも、そんなのは自分には関係のないことだ。



気づけば日は傾き始めている。

石碑の影が、さっきは直線上に伸びていたのが、大分斜めにずれてきている。

この石碑のおかげで時間がわかるので役に立った。


さて、野営の準備をするか。

男は重い腰をあげた。



初めて投稿しました。


昔中学生のころよく小説を書いていたのですが、大人となった今書くとなかなか難しいものですね。あの頃の想像力の塊だった頃が羨ましい…


これからも機会があればつらつらと駄文を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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[良い点] かのうせい。
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