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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 ここで時間は、テツとタカラが家に足を踏み入れた所まで戻る。



 「姉ちゃん、待って!」


 俺が勢いで家の中に入ると、姉が驚いた顔でこちらを振り向くのが見えた。


 「あ、馬鹿っ!!」


 姉が振り向きざま俺を罵るのと、パタン、と扉が閉まるのは同時だった。


 「え」


 戸惑う俺へ、姉が近寄りぺしんっ、と頭を小突く。

 そして、ドアノブを回す。


 「ちっ。お約束すぎる」


 毒を吐き出した後、姉は俺を見てまた頭を小突いた。


 「馬鹿になるから叩くのやめろっ!」


 さすがに抗議するが、姉はニコニコ笑顔でしかし目は笑っていない表情を張り付かせている。


 「あ ん た ね ぇ ! ?

 待て、もできないの?!」


 「いや、だって、変な手がドアのとこにあったし。

 危ないかなって、思って」


 「それ100ぱー幽霊でしょ!

 だから、あんた達を外で待たせたんでしょうが!

 なに、男女関係なく手招きされるとあんたはひっかかるの??

 尻軽か、そこまで尻軽になったか!!」


 「それは、そうだけど。

 あと、尻軽言うな、このゴリラ女」


 「誰がゴリラじゃ。

 って、あれ?

 ゴンスケは??」


 「へ?」


 言われて、そこで初めてゴンスケがいないことに気づく。

 どうやら、外に置き去りにしてしまったようだ。


 「やっべ」


 俺はドアが開かなくなっていることを忘れてドアノブを回す。

 ベギゴンっ。

 ドアノブを勢い余って壊してしまった。


 「誰がゴリラじゃ」


 それを見ていた姉に、半眼で責められる。


 「もう一度言う。

 誰が、なんだって?」


 「ご、ごめんなさい」


 姉は大きく息を吐き出すと、仕方ないとばかりに通路の先を見る。

 光の玉で照らされるそこは、普通の廊下だった。

 玄関のすぐ脇には板が打ち付けられている小部屋。

 たぶん、トイレ。

 廊下の途中には、風呂。

 そのさらに先には階段が見えた。


 「ここから出られないなら、他の出口を探すしかないか」


 姉がやれやれと歩みだし、その足を止めて俺を振り返る。


 「と、その前に」


 姉が片手で銃の形を作ると、俺に向ける。

 かと思いきや。


 「バンッ!」


 子供の遊びのように、撃つ真似事を始めた。

 すると、フワッと肩が軽くなる。

 うわ、マジか。

 これ乗っかってた系か。


 「ほれ、感謝は?」


 姉が言ってくる。

 

 「あ、ありがとうございます、お姉様」


 「よろしい」


 「…………姉ちゃん、神職系のスキルとか会得してたの?」


 満足気に、先を行こうとする姉へ俺は訊ねる。

 大学で取得したんだろうか?


 「ん? あー、大学で知り合った人に教えてもらった。

 『お前なら、気合いで祓うことできるかもだから』って、指鉄砲よりエアガン使ったほうが確実だけど」


 なにスキルアップしてんだ、この姉。


 「エアガン?」


 「そ、ほら、おもちゃの」


 それは知ってる。


 「でも、アレって人に向けられないじゃん?

 だから、指鉄砲でも出来ないかなぁってやってたら出来るようになった」


 エアガンはたしかに、それなりの装備をしてでないと人に向けて遊ぶことができない。

 いや、よく知らないけど。

 ゴーグルとかああいうのを装備して、野外で遊んでる人達がいるのは知っている。

 動画で見た。


 「あれ? でも姉ちゃんって視えるひとだったっけ?」


 「うん? 見えないよ。

 見えないけど、感じることはできるから。

 気配感知するのと同じ」


 誰でもいいから、このチート無双する姉を止めてくれないだろうか。

 いろいろ完璧すぎて、どこから突っ込んで良いのかわからなくなる。


 「ほい、バンッ!」


 言ってる側から、天井へ指鉄砲を放つ。

 わぉ、視線が消えた。


 「これ、スキルとかいらないから。アンタにも出来ると思うよって、ん?」


 「どしたの?」


 「チコの気配がする」


 「え」


 チコは、うちの初代ネコだ。

 父が貰ってきた黒猫で、こっそり人間の食べ物を盗み食いしていたため早死したオス猫である。


 「なんで?」


 「さぁ?」


 「隣村の神官さん呼んで、祈ってもらって墓まで作ったのに。化けて出た?」


 「うーん? でも、これ気配が外だ」


 「外?」


 「ゴンスケに憑いてる?」


 「マジか」


 「もしかしたら、後輩が心配で出てきたのかな?」


 あいつ、そんな面倒見良かったのか。


 「父さんのモフモフハーレムの最初の一匹だったしね」


 姉の言葉に、俺は目が点になる。


 「なにそれ?」


 「あれ、知らない?

 チコ飼ってから、うち猫増えたでしょ?

 あれ、父さんが猫ハーレム作ろうとした結果だったんだよ。

 餌代嵩むからって、母さんに途中で止められたけど。

 あたしらの学費もあったしたねぇ。

 ほら、父さん動物にはモテるから。わりと本気だったみたい」


 ラノベのように美少女を囲うことはできないが、猫なら懐かせることができたら、自らすり寄ってくるもんな。

 さえないオッサンでも猫にはモテるもんな。

 ははは。

 なんとも言えない塩っぱい気分になってしまった。


 俺は不意に魔よけの指輪を見る。

 黒ずんでいた。


 「あちゃー。負けたか」


 姉が難しそうな顔をする。


 「ゴンスケも危ない、よな?」


 「うーん、どうだろ。少なくとも中よりはマシだと思う」


 それでも、早くここを出るに越したことはないだろう。

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