表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
87/130

86


 一旦家に戻り、身支度を整え直し、俺は姉の運転する車で心霊スポットにやってきた。

 下道で二時間。

 高速で三十分という距離にあるそこ、キマ地区。

 調査する場所の立ち入りに関しては、ちゃんと依頼主が許可をとってくれていたので、その点において俺達は廃墟マニアと同罪にはならない。

 というのも、こういった廃墟が好きで中に入り込むというのは、厳密には不法侵入にあたるらしい。



 ゴンスケは、初めての夜のドライブに、いつも以上に目が冴えているようだ。

 【白い家】に一番近い道路に車を駐車して、俺は懐中電灯。

 姉は、魔法でふよふよ浮かぶ光の玉を出現させると、目的地へ向かった。

 そして、雑木林のなか廃墟マニアかそれとも心霊スポットを巡るやからの仕業か、一直線に家まで続く道が出来ていた。

 そして、家の前に着くや、姉から導きの女神の紐(アリアドネ)と呼ばれる、魔法道具(マジックアイテム)を渡された。

 見た目はただの毛糸のように見える。


 「異国の神話なんだけど、その昔生贄として迷宮に棲む魔物へ子供たちが捧げられた、その子供たちの中の英雄に女神が恋をして、迷宮攻略のために糸を渡したってのがあって、それを模した、ってのより元ネタにして作られた道具がこれ。

 転移魔法とかが発達、普及する前は炭鉱や洞窟の探索で使われてたらしいよ」


 「あー、なんか聞いた事あるかも」


 姉は、説明しながら右手の中指に紐を括る。

 俺が適当に答えていると、姉は今度は俺の指にも同じように紐を括った。


 「あと、はい、これ。念のために付けときな」


 と、今度は魔よけ用の指輪を渡される。

 付けようとするが、中々嵌らず結局左手の薬指に嵌めた。

 それを見た姉に、


 「…………気持ち悪いことしてんじゃないよ」


 なんて言われて、ペシんっと頭を叩かれてしまう。


 「いやだって、他のとこだとサイズ合わないし」


 「中指も?」


 右手中指、つまりは紐を括った指を示しながら姉は訊いてくる。


 「だから嵌らないんだって」


 「…………じゃあ仕方ないか。ハイ、これゴンスケの分。

 人間用だから、そのままでいっか。サイズ合うかな?」


 渡されたのは、同じデザインの魔よけの指輪だ。

 十歳児姿のゴンスケの手をとって付けてみる。

 どの指にもピッタリはまった。


 「じゃあ、右手中指に」

 

 姉の指示に、ゴンスケがイヤイヤをする。

 俺とお揃いの位置につけろと、尻尾で伝えてくる。


 「ゴンスケ、そういうのは好きなオスが出来たらやってもらうんだぞ」


 俺が言うと、姉がまたペシンと頭を叩いてくる。


 「アンタ、そんなだから女の子にモテないんだよ」


 「いや、俺がモテないのは底辺だからだろ」


 「知らないの?

 本当にいい男ってのは、どんな姿になってもいい女が寄ってくるもんなの」


 「…………」


 ジト目で俺は姉を見る。

 その肩越しに【白い家】が見える。

 姉の明かりの魔法が無ければ、ただ闇が広がるだけの空間にその家は立っている。

 と、


 「あれ?」


 「どしたの?」


 「今、二階の窓になんか明かり?

 ロウソクっぽい明かりと人影っぽいのが見えた気が」


 「へぇ? 面白い。

 テツ、良いことを教えてあげるよ。ここね、全部の窓が鉄の板で塞がってるの。

 明かりもそうだけど、人影も。

 たとえ、人がいたとしても視認できないんだよ」


 姉のからかう様な、楽しげな声とは正反対に、俺の背中に冷たいものが走る。


 「え、じゃあ」


 「アンタとは波長が合うみたいだから、見えちゃったんじゃない?」


 そんなことを言って、いくつか指示を出したあと姉は【白い家】に近づいていく。


 そして、ドアノブに手を触れて回すのが見えた。

 ドアは難なく開き、姉が魔法で出した光の玉とともに家の中に入ってしまう。


 「あ、姉ちゃん、待って!!」


 姉が家に入るため、ドアを開けた時だ。

 白い指が何本も、ドアの上、ちょうど姉の頭のすぐ上にスラスラスラっと、まるでピアノを弾くかのように並べられたのを見た。

 見てしまった。その指、というか爪は異様に赤かった。

 マニキュアだろうか。


 俺の声はしかし間に合わず、いや、そもそも聴こえていなかったのかもしれない。

 姉はこちらを振り返ることなく、家の中に入り、パタンとドアが閉まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ