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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 「ふんふん、なるほどなるほど」


 「きゅうい、きゅきゅうい」


 ゴンスケの尻尾で出来た檻の中で黒竜種(ナイトドラゴン)の子供は、必死に先程合流したばかりのエステルへなにかを訴えていた。


 「なんで、エステルは怖がられないんだ?」


 俺は不思議に思ってポツリと漏らす。

 すると、起こした焚き火でナメクジの串焼きを焼いていた、レイが教えてくれた。


 「そりゃ、エステルもほとんど魔法使えないから。魔力が無いわけじゃないらしいんだけど。使える魔法が限られてるんだと」


 「ふぅん、あ、魔力の絶対量が少ないとか?」


 「まぁ、そんな感じらしい。あと、アイツ脳筋だから基本」


 「脳筋、ねぇ」


 「無人島にアイツが持ってきた土産、覚えてるだろ」


 「あー、まぁ、一応」


 「それに、こういうことは分担するのが一番なんだよ」


 「分担?」


 「そ、役割分担。

 ドラゴンも、人間のオスメスくらいは見分けがつく。

 テツでも、良かったけど。

 でもどうせなら、見た目だけでも優しそうな、んで見た目のいいやつに話を聞いてもらった方が、嘘でも本当でも話しやすいだろ?」


 そういうものだろうか?

 わからない。


 「どうせ、種族関係なくほとんど見た目しか見てないんだ。

 中身にまで興味をもつ存在の方が少ないくらいだしな」


 まぁ、初対面の場合、見た目、つまり視覚情報で第一印象が固定されると言うし、そういうものか。


 「よし、わかったぞ」


 エステルが焚き火まで戻ってきた。

 

 「ドラゴン、なんだって?」


 「人間殺して、その首を持って来るように言われたらしい。

そしたら、家族にしてやるって、さ」


 は?

 一瞬、本当に一瞬。

 俺は、自分の内臓が冷えたような感覚になった。

 体の中が一気に冷却されたような、そんな冷たさを感じたのだ。


 「黒竜種(ナイトドラゴン)版、はじめてのおつかいってところだな」


 レイとエステルの会話が遠くに聞こえる。

 種族が違うから、考えや生き方が人間のそれと違って当たり前だ。

 だから、気にするほどでもない。

 俺は、ちらり、と檻の中でやはり怯えている黒竜種(ナイトドラゴン)の子供を見る。

 ゴンスケは興味津々のようだ。

 しかし、その尻尾の檻の中にいる黒竜種(ナイトドラゴン)の子供はただただビクビクしている。


 「? どうした?」


 エステルが声を掛けてきたが、俺はそれには応えず、ゴンスケに近づく。

 正確には、ゴンスケの尻尾。その檻の中にいる黒竜種(ナイトドラゴン)に。


 黒竜種(ナイトドラゴン)の子供は、不思議そうに俺を見上げてくる。

 俺は、しゃかんで、檻の中にいるドラゴンを見た。


 「きゅうい?」


 黒竜種(ナイトドラゴン)の子供はこてんと首を傾げる。

 檻の中から見上げる景色を、俺は知っている。

 あの頃の俺は、こんな澄んだ目をしていただろうか?


 わからない。自分のことは、見えないから。


 「なぁ、お前から俺はどう見えてる?」


 そんな意味の無い呟きが漏れるくらいには、俺はきっと動揺していたのだと思う。

 

 「ぎゃう?」


 ゴンスケには、この呟きが聞こえていたようだ。

 スリスリと頭を擦りつけてくる。


 ――出来損ないでも、夢を見れるくらいにはお前の家族は優しいらしいな。夢をみて希望を抱く程度には、まだまだお花畑なんて、幸せで羨ましい限りだ――


 夢を見るのは、罪なのだろうか?

 子供の頃、檻の中から見上げた先にいたあの職員の声が木霊する。

 忘れていた声が。

 思い出したくもなかった、声と記憶が頭の中で鳴り響く。

 

 「なぁ、お前から、俺はどう見えてる?」


 もう一度、呟いてみる。


 俺は、幸せらしい。幸せなほうらしい。

 出来損ないな悪い子だけど、それでも、家族(人間扱い)にしてもらっているだけ、まだ幸せな人間らしい。

 そんなことをあの職員の男は言っていた。


 変わらず黒竜種(ナイトドラゴン)の子供は俺の事を不思議そうに見返している。

 というか、そもそも本当に見えているのだろうか?

 魔力の有無で存在が決まるなら、きっと俺はこのドラゴンからすればいない存在だ。


 まっすぐな、そして、やはり不思議そうな色を宿した瞳が俺を映す。

 と、


 「ぎゃうっ!!」


 ゴンスケが俺を押し倒して、じゃれ着いてきた。

 檻が揺れて、黒竜種(ナイトドラゴン)の子供が驚きの鳴き声をあげる。


 「ほらよ」


 そんな倒れた俺に、レイがナメクジの串焼きを手に近づいて、それを口の中に押し込んできた。

 サクサク、ごくん。

 砂を噛んでいるみたいだ。

 レイが俺を覗き込んでくる。


 「…………」


 それは、無表情だった。

 真剣な顔でも、真顔でも、そして神妙な顔でもない。


 全くの無表情。


 「なに?」


 俺は訊ねた。


 「いや、腹減ってるかなと思って」


 レイはそう答える。

 でもやっぱり、その表情にはなにも無かった。


 「で、テツ、何考えてた?」


 「ん? 幸せについて考えてた」


 「急にどうした」


 声だけは茶化すように、でもその表情は無のままレイに重ねて訊ねられる。


 「いや、ほら、ふとした時に昔の嫌なこと思い出すことってない?」


 「あー、あるな。

 あるある。

 そういう時って、運動不足なんだよな。

 血の巡りが悪くなってるんだよ」


 言って、もう一本持っていた串焼きを、レイは食べた。

 その串を放り投げて、今度はちょっと悪い笑みを浮かべると言った。


 「丁度いいから、体動かすか。

 ゴンスケも」


 「ぎゃう?」

 

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