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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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***


 「で、押し切られた、と」


 ツカサが呆れている。


 「でも、珍しいなぁ。お前のペース崩すって」


 リーチもそんな感想を述べる。


 「あの店、前から顔面偏差値高かったけど、そのレイって人も、まぁ、うん顔は良かった」


 「顔だけ?」


 「体つきは?」


 ツカサとリーチがそれぞれ言ってくる。

 言っては悪いが、レイさんの肉付きは良くない方だ。

 ぶっちゃければ、ペッタンコである。


 「そっか」


 「ペッタンコか」


 まぁ、うん言いたいことはわかる。


 「でも、細かった」


 と、そんな会話をしていると。


 「ね、テツ君、訊いてもいい?」


 やけに、ニコニコ顔のアストリアさんが現れた。

 ニコニコしながら、ずいっと携帯端末の画面を見せてくる。

 そこに映しだされているのは、彼女に俺がいつものように送ったゴンスケの画像の一つだ。


 「この子、誰?」


 「あれ? メールに書かなかったっけ? ゴン」


 ゴンスケ人間バージョンだ、と言おうとした俺の言葉が遮られてしまう。

 

 「ゴンスケちゃんじゃ、ない方。

 この茶髪の子と、エプロンを着けた銀髪の子のことだよ。

 誰?」


 なんだろ、姉ちゃんみたいに威圧感あるな、今日のアストリアさん。


 「あぁ、レイさ、レイと、リオさんか。

 レイのことはよく知らんけど、リオさんは父さんがよく行く喫茶店の従業員さんだよ」


 「へぇ、レイさんのことは呼び捨てなんだ。よく知らないのに?」


 「本人がそうしろって言うから」


 「よく知らないわりに、随分仲良さそうだね?」


 「そうか?」


 俺は、悪友二人に振り返りながら聞いてみる。

 おい、なんで二人共目を逸らすんだ。


 「ね、本当はどんな関係なの?」


 「うん? うーん? 夏休み入ったらすぐ旅行? に行こうって誘われて、押し切られた関係?」


 口にだしてみて、これどんな関係なんだろ、ほんと、と思わなくも無かった。


 「え、旅行? 二人で?」


 「いや、もう一人いるらしいんだけど、その人とは現地集合らしい」

 

 「へぇー、そんなに仲良いんだ」


 初対面だったんだけどなぁ。

 

 「あと、ゴンスケも連れてくし」


 なので、三人と一匹だ。


 「まぁ、よく知らない人ではあるけど、喫茶店の店長が身元保証してくれたし。

 それに」


 「それに?」


 「姉ちゃんが帰ってくるから」


 俺の返しに、アストリアさんもそうだがツカサとリーチも意味を図りかねて疑問符を浮かべている。

 ゴンスケの安全その他諸々保証してくれる上、あの姉から逃げられる口実はそうそう無いだろうし。


 「お姉さん」


 「姉ちゃん、帰ってくるのか」


 「テツ、お姉ちゃんいたんだ」


 順に、アストリアさん、リーチ、ツカサである。

 そうだよ、居るんだよ。そして帰って来るんだよ。

 怖い、姉が。


 アストリアさんは、この前のホテルのことを思い出したのか、あの電話の人かなぁという表情を浮かべている。

 

 「テツ君、一応確認だけどさ」


 「んあ?」


 「そのレイさんって人とは交際してないんだよね?」


 付き合うとかではなく、交際ときたか。

 こういうところ、育ちの良さがあるよなあ。


 「してないしてない」


 俺は手をパタパタふってそう答えた。


 「そのリオさんって人は?」


 俺は、ちょっと驚いて、そうだったなら良かったのになぁと思いながら、返した。


 「あー、リオさん好きな人いるから無理無理」


 俺は、もう一度手をパタパタ振った。


 「…………そうなんだ」


 なんだ、その微妙な間は。

 アストリアさんは、満足したのかそこでこの会話は終わり、人に変身出来るようになったゴンスケのことに移る。

 と、アストリアさんが携帯端末を操作し始める。


 「やっぱり家だとずっと変身したままなの?」


 ツカサの疑問はもっともだろう。


 「時と場合による。

 爺ちゃんの晩酌に付き合う時は元の姿(ドラゴン)。散歩の時も元の姿(ドラゴン)

 婆ちゃんと山や畑に行く時も元の姿(ドラゴン)

 ポンと昼寝する時は人だったり、元の姿(ドラゴン)だったりランダム。

 俺と風呂入る時は、人だな。三、四歳くらいの」


 「なんだ、ほとんどドラゴンなんじゃん」


 リーチは、少し残念そうだ。


 「え、一緒にお風呂入ってるの?!」


 大きい声で言ったのは、ツカサだった。


 「ポンが入れてやれって感じで連れてきたんだよ」


 携帯端末の操作を終えたのか、アストリアさんが興味津々だ。


 「最初は母さんや父さんと一緒に入ってた。

 体の洗い方と頭の洗い方教えるために。

 で、初日で覚えたら今度は俺と入るようになった。

 言葉覚えてないから、ゴンスケが風呂入ってて、俺が頭洗ってるあいだは数かぞえさせる代わりに、鳴いてもらってる」


 ちなみに、この話を以前立てた掲示板で報告したら、犯罪者のレッテルを貼られたんだが、まぁこれは言わなくて良いか。


 「なんで、そんなことするんだ?」

 

 リーチが首を傾げる。


 「いや、目を離すと人間の子供の場合沈んだりすることがあるらしいから、それも含めて数数えさせるんだと」


 「そうなんだ」


 アストリアさんも、意外そうに呟いた。


 「アレって事故防止も兼ねてたんだ」


 ツカサもアストリアさんに続く形でそう言った。

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